2018年10月03日

自分が置かれた状況を客観視する事が、老後破産の防止につながる

平成30年(2018年)9月8日のプレジデントオンラインを読んでいたら、年収300万円でも「リッチ」な人の考え方と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『人は事故や天災を目の当たりにすると、「リスクに備えよう」と考える。しかし、本当に正しく備えることができているだろうか。

「確率や被害額など、計算によって導き出されるのが本来のリスクです。たとえば年間の交通事故数から自分が事故に遭う確率を求めることができる。

しかし、そうやって算出した『客観確率』でリスクを考える人は少数派で、実際には直感や感情によって判断しています」(同)

自分の知り合いが事故に遭ったり、悲惨な事故の報道を見たりすると、それだけでリスクを強く感じるようになる。多くの人は、その「主観確率」に従って行動している、ということだ…(中略)…

しかし、一方で、一刻も早く避難すべき非常事態にありながら、正常だと思いこんでしまう「正常性バイアス」が働くことがある。

たとえば、建物のなかが煙っぽくて、嫌な臭いもする。「もしかして火事じゃないか」と一瞬考えても、周りの人々はごく普通の様子なので、「大丈夫なんだな」と誤解してしまう、というもの。

そこには同調圧力も働いているため、周りが逃げ始めれば自分も逃げ出すのだが。

さらに、危機的な状況でも「自分だけは助かるはずだ」と考えてしまう「楽観バイアス」も存在する。

さまざまなバイアスに惑わされず適切な行動を取れるかどうかは、感情や直感頼りにせず、自分が置かれた状況を客観視できるかにかかっている』

以上のようになりますが、週刊誌やテレビのワイドショー番組などを見ていると、若くして亡くなった芸能人やスポーツ選手などの、特集をやっている場合があります。

先日はがんとの闘病の末に、41歳の若さで惜しまれながら亡くなった、ある格闘家の特集をやっておりました。

こういったものを見た時に、がんに対する恐怖感を覚え、がん保険に加入した方が良いのかな?と悩んでしまう方は、意外に多いと思います。

この格闘家の方と同世代の40代については、特に悩んでしまうのではないかと思います。

そこでがんで死亡する確率を、インターネットで検索して調べてみると、現在40歳の男性が、60歳までにがんで死亡する確率は2%、70歳までにがんで死亡する確率は7%という、国立がん研究センターが発表した、平成26年(2014年)のデータが見つかりました。

なお現在40歳の女性が、60歳までにがんで死亡する確率は2%、70歳までにがんで死亡する確率は4%になるため、男性より死亡率は低いのです。

そうなると現在40代の方が、がんで死亡する確率は、70歳まで範囲を広げても、10人に1人以下に過ぎないのです。

こういったデータを集めて、自分が置かれた状況を客観視すると、がんに対する恐怖感が、少しは和らぐのではないかと思います。

また70歳まで範囲を広げても、がんで死亡率する確率はこれだけ低いのですから、老後資金をしっかりと準備して、「長生きするリスク」(死亡する前に預貯金などが尽きてしまうリスク)に備える事が、大切だとわかります。

しかし内閣府の調査によると、7月7日のブログに記載しましたように、日本人の約4割は老後の経済的な備えを、特に何もしていないのです。

年金の支給額の減額や、支給開始年齢の引き上げが話題になる中で、約4割の方が特に何もしていないのは、危険な状態だと思うのです。

この理由について考えてみると、冒頭で紹介した記事の中に掲載されているように、二つのバイアスが関係しているような気がします。

つまり周囲にいる方も自分と同じように、老後資金を準備していないため、「大丈夫なんだな」と誤解してしまう、「正常性バイアス」が働いているのかもしれません。

また老後破産を迎える可能性がある、危険な状況にいるのはわかっていても、「自分だけは助かるはずだ」と考えてしまう、「楽観バイアス」が働いているのかもしれません。

冒頭で紹介した記事を読むと、「さまざまなバイアスに惑わされず適切な行動を取れるかどうかは、感情や直感頼りにせず、自分が置かれた状況を客観視できるかにかかっている」と記載されております。

日本人の死因の1位であるがんでも、上記のように死亡率は意外に低いため、「長生きするリスク」に備える事が大切なのに、老後資金の準備を特に何もしておらず、老後破産を迎える可能性があるというのが、多くの方にとっての、「自分が置かれた状況」ではないかと思います。

この状況を客観視して、二つのバイアスに惑わされない事が、老後破産の防止につながるはずです。
posted by FPきむ at 20:31 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月21日

年金の繰り下げ受給の拡大は、政府の「一挙両得」、国民の「一挙両損」

平成30年(2018年)9月14日の朝日新聞を読んでいたら、首相、年金開始70歳超「3年で」 金融緩和出口も言及と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『安倍晋三首相は14日、東京都内の日本記者クラブであった自民党総裁選の討論会で、年金の受給開始年齢について70歳を超える選択もできる制度改正を検討し、「3年で断行したい」と述べた。

日本銀行の金融緩和策については「ずっとやっていいとは全く思っていない」と述べ、3選後の任期中をメドとする「出口」に言及した。

年金の受給開始年齢は原則65歳。現行では、繰り下げ受給すると毎回の受給額は増え、70歳まで遅らせることができる。

今年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」は、これを70歳を超えても選択できるよう検討を求めており、首相は「生涯現役であれば、70歳を超えても受給開始年齢を選択可能にしていく。そういう仕組みづくりを3年で断行したい」と述べた。

選択制を広げる理由について首相は「高齢者がいくつになっても生きがいを持って活躍できる生涯現役社会を実現する」と強調した。

高齢者になるべく長く働き続けてもらい少子高齢化を乗り切るのが狙いだが、現行制度でも66歳以降に遅らせているのは1%ほど。どこまでニーズがあるかは不透明だ』

以上のようになりますが、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの「老齢年金」を受給できるのは、原則として65歳になってからです。

この受給開始年齢を1ヶ月繰り下げる(遅くする)と、「繰り下げ受給」の制度により、0.7%の割合で老齢年金が増額していきます。

その結果として繰り下げ受給の上限である70歳まで繰り下げすると、42%(5年×12ヶ月×0.7%)も、老齢年金が増額するのです。

今回の記事は繰り下げ受給の上限を70歳超、おそらく75歳程度まで、拡大するというものです。

仮に増額率が現在と変わらなかった場合、84%(5年×12ヶ月×0.7%)も老齢年金が増額するため、かなりお得なように見えます。

しかし現在のところ、繰り下げ受給の利用者は、上記のように1%程度しかいないため、お得感が増したとしても、利用者が増えるのかはわかりません。

繰り下げ受給の利用者が少ない理由としては、「将来的に年金額が少なくなるかもしれない、または年金制度が破綻するかもしれないので、早くもった方が良い」という、年金制度に対する不信感に起因するものがあると思います。

また「長生きする自信がないので、早くもらった方が良い」という、健康状態に起因する理由もあると思います。

例えば70歳まで受給開始年齢を繰り下げした場合、65歳から受給を開始した方よりも、受給総額が多くなるのは、現在は81歳程度になります。

ですからこれより早く死亡した場合には、70歳まで受給開始年齢を繰り下げしないで、65歳から受給した方が良かったという結果になるのです。

なお65歳から受給を開始した方よりも、受給総額が上回る年齢は、「損益分岐点」と呼ばれております。

厚生労働省の発表によると、平成29年(2017年)の日本人の平均寿命は、男性は「81.09歳」、女性は「87.26歳」だったそうです。

これを見るとわかるように、男性の平均寿命は損益分岐点とほぼ同じですから、平均寿命より少しでも長生きすれば、65歳から受給した場合よりお得になるのです。

ただ繰り下げ受給の上限が70歳超になった場合には、損益分岐点は更に高くなるのですから、65歳から受給した方が良かったと、後悔する結果になるかもしれません。

繰り下げ受給の上限の拡大には、このようなデメリットがあるのですが、ある週刊誌を読んでいたら、別のデメリットを指摘しておりました。

それは繰り下げ受給によって年金額が増えると、所得税や住民税、国民健康保険や後期高齢者医療の保険料など、収入に応じて金額が増える税金や保険料の負担が、大きくなってしまうというものです。

その一方で政府の立場から考えると、損益分岐点の上昇により、そこまで生きられない方が増えれば、年金財政は安定化します。

また損益分岐点より生きたとしても、以前より多くの税金や保険料を徴収できるのですから、政府にとっては「一挙両得」であり、逆に国民にとっては、「一挙両損」ではないかと思うのです。

ですから繰り下げ受給を利用するにしても、年金額がかなり少ない方を除いては、70歳程度にしておいた方が良いのかもしれません。

また個人型の確定拠出年金(iDeCo)に加入している方は、60歳から65歳になるまでの間、または65歳以降の繰り下げしている最中に、iDeCoの老齢給付金の受給を済ませ、老齢年金と老齢給付金を同時に受給しない方が良いと思います。

もし繰り下げにより増額した老齢年金と老齢給付金を、同時に受給開始した場合には、年金収入が一気に増えるため、所得税や住民税、国民健康保険や後期高齢者医療の保険料の負担が、大きくなってしまう場合があります。

なお国民健康保険や後期高齢者医療は、「年金収入+給与収入」を元にして、保険料の金額を決めます。

それに対して職場で加入する健康保険は、給与収入のみで保険料の金額を決めるため、繰り下げにより年金額が大幅に増えそうな方は、健康保険に加入するメリットがあると思うのです。
posted by FPきむ at 20:07 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする