2018年12月03日

災害が不安で地震保険に加入するのに、老後が不安でも準備しない理由

平成30年(2018年)11月14日のニッポンドットコムを読んでいたら、家計の金融資産は平均1151万円:保有目的、「老後の生活資金」が65.5%と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『金融広報中央委員会がまとめた2018年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると2人以上の世帯が保有する金融資産の平均額は、1151万円(前年と同水準)だった。

内訳は、預貯金が505万円、保険382万円、有価証券(株式、債券等)221万円、その他金融商品43万円。

調査は全国8000世帯を対象に6〜7月に実施。有効回答率は44.7%だった。調査世帯の手取り年収は平均519万円で、前年の487万円から拡大した。

このうち、金融商品を「いずれも保有していない」と回答した世帯が1.6%あった。金融資産を保有している世帯に前年との比較を聞いたところ、「減った」と回答した世帯が28.4%。「増えた」は22.2%だった。

「増えた」世帯にその理由を聞いたところ、「定例的な収入が増加した」40.4%、「定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げた」27.9%、「株式、債券価格の上昇で評価額が増加した」が14.5%だった。

一方、減った理由は「定例的な収入が減ったので金融産を取り崩した」39.1%、「耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があった」34.7%。「子どもの教育費用・結婚費用の支出があった」30.4%などが多かった。

金融資産の保有目的について聞いたところ、「老後の生活資金」65.6%、「病気や災害への備え」61.1%の2つの項目が圧倒的に多く、将来への不安を少しでも減らしたいとの思いがにじみ出ている』

以上のようになりますが、「老後の生活資金」と「病気や災害への備え」の割合、またはこれらより下位の保有目的と、その割合について調べてみると、次のようになっております。

・老後の生活資金:65.6%
・病気や災害への備え:61.1%
・子どもの教育資金:30.1%
・安心のため:20.7%
・耐久消費財の購入資金:15.4%
・旅行・レジャー資金:13.7%
・住宅取得、増改築資金:11.7%
・子どもの結婚資金:5.6%

人生の中で「子どもの教育費、住宅購入費、老後の生活費」の3つについては、大きな資金が必要になります。

そのためこの3つの費用を総称して、「人生の3大費用」と言う場合が多いのです。

金融資産の保有目的のトップ3は、人生の3大費用と重なるのではないかと思っていたら、意外にも「病気や災害への備え」が、2位に入っているのです。

病気や災害は身近にあるものなので、恐怖感を覚えると同時に、住宅の取得や増改築にはローンを組めるため、それほど積極的には準備しないのかもしれません。

実際に地震などの自然災害が発生し、その被害が大きかった時は、手持ちの金融資産を取り崩したり、「被災者生活再建支援制度」から最大で300万円となる支援金を受け取ったりしても、生活を再建できない場合があります。

ですから金融資産を保有するだけでなく、地震保険などの保険に加入する必要があると思います。

そこでどのくらいの方が、地震保険に加入しているのかを調べてみると、平成29年(2017年)度の地震保険の世帯加入率は、損害保険料率算出機構の調べによると、全国平均で31.2%でした。

けっこう低いという印象を受けるのですが、平成7年(1995年)に阪神・淡路大震災が発生した時は9%、平成23年(2011年)に東日本大震災が発生した時は23.7%だったそうなので、急速に普及が進んでいるとわかります。

また生命保険文化センターが発表している、「平成28年度生活保障に関する調査」によると、個人年金保険の加入率は21.4%になっているため、地震保険はわずか数年で個人年金保険との差を、10%くらい広げたのです。

これだけ地震保険が急速に普及しているのは、ここ数年は地震が増えているため、これに対して不安を感じる方が、増加しているからだと思います。

ただ年金額の引き下げや、それによる老後破産の社会問題化により、公的年金に対して不安を感じる方も、同じように増加しているため、個人年金保険の加入率が伸びないのは、不思議な感じがします。

この理由について考えてみると、「双曲割引」の心理により、目先(地震などの自然災害)の事を過大評価し、遠い先(老後破産)の事は、過小評価しているのではないかと思うのです。

ですから老後破産のリスクを過小評価せずに、こちらについても準備する必要があります。

ただそうはいっても保険のために使える予算は、どの家庭でも限られているので、必要な保障のためにお金を使うだけでなく、不必要な保障は削減するという、メリハリが必要だと思います。

また老後の生活資金は、個人年金保険ではなくiDeCo(個人型の確定拠出年金)で、準備しても良いと思います。
posted by FPきむ at 20:13 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

年金を減額するマクロ経済スライドが、4年ぶりに発動される見通しへ

平成30年(2018年)11月22日の毎日新聞を読んでいたら、年金抑制「マクロ経済スライド」4年ぶり実施へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『少子高齢化に伴って年金給付の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」が、2019年度に実施される見通しとなった。

年金額を改定する際に指標となる賃金や物価が上昇しており、スライド実施の条件が整うため。

年金額は、今年度から微増か据え置きとなる公算が大きい。実施されれば15年度以来4年ぶりで2度目となる』

以上のようになりますが、公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は次のように、現役世代の賃金や物価の変動率を元にして、新年度が始まる4月から金額を改定します。

・4月からの年金額=前年度の年金額×賃金や物価の変動率

大まかに言うと年金の受給を始めてから数年の方は、現役世代の賃金の変動率を元にして、またそれ以降の方は物価の変動率を元にして、年金の金額を改定するのです。

このように現役世代の賃金や物価の変動率を元にして、年金の金額を改定しているのは、例えば物価が上昇しているのに、年金の金額が変わらないとしたら、年金の実質的な価値が下がってしまうからです。

しかしマクロ経済スライドという制度が、2004年に導入されてからは、次のように現役世代の賃金や物価の変動率から、少子高齢化の進展状況を元に算出した、スライド調整率を控除するようになりました。

・4月からの年金額=前年度の年金額×(賃金や物価の変動率−スライド調整率)

つまり現役世代の賃金や物価が上昇しても、その分だけ年金の金額が上昇しない仕組みになったのです。

ただ物価の変動率がマイナスになる、いわゆるデフレの時には、マクロ経済スライドは発動しないルールのため、制度の導入以降にマクロ経済スライドが発動されたのは、2015年度の1回だけしかありません。

この時のスライド調整率は0.9%でしたので、この分だけ年金の金額が減ってしまいました。

冒頭で紹介した記事は、このような仕組みのマクロ経済スライドが、2019年度に再び発動される見通しになったというものです。

おそらくここ数年の人手不足などを受け、現役世代の賃金や物価が、だんだんと上昇しているのかもしれません。

実際にマクロ経済スライドの発動が決定されると、これを批判する新聞や雑誌の記事が、頻繁に掲載されると思うのですが、若者世代は高齢世代と一緒になって、批判しない方が良いと思います。

その理由としてマクロ経済スライドによる年金の減額は、年金財政の均衡を図る事ができると見込まれたら、終了する予定だからです。

マクロ経済スライドが導入された時点では、2005年度から年金の減額が始まり、2023年度で終了すると試算されました。

デフレが長引いたため、この試算のようにはいかなくなったのですが、マクロ経済スライドによる年金の減額が、定期的に続いていけば、若者世代が年金の受給を始める前に、マクロ経済スライドは終了する可能性が高くなります。

なお2018年度からは、控除できなかったスライド調整率を、翌年度以降にキャリーオーバーして、現役世代の賃金や物価の上昇率が大きかった年度に、まとめて控除できるようにしました。

また現在は上記のように、デフレの時にはマクロ経済スライドを発動しないルールなのですが、デフレの時にも発動できるようにする案が、かなり前から議論されております。

こういった改正によって、マクロ経済スライドの発動が強化されていくと、若者世代だけでなく、中年世代が年金の受給を始める前に、マクロ経済スライドが終了するかもしれません。

このようにマクロ経済スライドは世代によって、受ける影響に違いがあるのですが、その対策は世代によって違いはないと思うのです。

マクロ経済スライドの対策のひとつになるのは、つみたてNISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)を通じて、株式が組み入れられた投資信託を購入する事です。

なぜこれが高齢世代にとっての、マクロ経済スライドの対策になるのかというと、物価が上昇すると株式が組み入れられた投資信託は、値上がりしやすくなります。

そのため「物価上昇→マクロ経済スライドの発動→年金の減額」が起きたとしても、物価上昇で値上がりした投資信託を売却すれば、年金の減額分を穴埋めできるからです。

また株式が組み入れられた投資信託を購入する方が増えると、その方達によって株価が下支えされるため、企業は賃上げをしやすくなります。

このようにして賃金の上昇が続いていけば、生活に余裕が生まれるだけでなく、マクロ経済スライドは早く終了するため、若者世代や中年世代にとっての、マクロ経済スライドの対策になるのです。

つみたてNISAやiDeCoを通じて、老後資金の準備ができるだけでなく、マクロ経済スライドの対策ができるとしたら、一石二鳥ではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:41 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする