2017年10月13日

仕事の満足度が世界最低レベルの日本人を、75歳まで働かせるのか?



内閣府の有識者検討会(座長:清家篤・前慶応義塾長)が、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)の繰下げ支給の上限を、75歳程度まで延長する案を発表しました。

この老齢年金の繰下げ支給とは、原則65歳になっている老齢年金の支給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)ごとに、0.7%の割合で年金額が増額する制度です。

注:老齢基礎年金の繰下げ支給については8月17日のブログを、また老齢厚生年金の繰下げ支給については、8月20日のブログを参照して下さい。

現在の繰下げ支給の上限は70歳であり、ここまで繰下げを実施すると、42%(5年×12ヶ月×0.7%)も年金額が増額します。

この上限が70歳から75歳程度まで延長するなら、更に老齢年金は増額すると考えられるので、75歳程度まで年金以外の収入を確保できる方にとっては、悪い話ではないと思うのです。

しかし有識者検討会の発表があった後に週刊誌などを見ると、繰下げ支給の75歳程度までの延長は、この年齢まで老齢年金の支給開始年齢を引き上げするための布石なのだから、油断してはいけないなどと記載されております。

個人的には70歳程度までの引き上げはあっても、75歳程度まで引き上げするのは、かなり難しいと考えております。

その理由としては7月28日のブログに記載しましたように、日本人の健康寿命(健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間)は、「男性:71.19歳、女性:74.21歳」になるからです。

つまり75歳程度まで年金を受給できないので、収入を確保するために働こうと思っても、特に男性は71歳くらいになると、健康上の問題で働くのが難しくなってしまうのです。

また老齢年金の支給開始年齢を65歳まで引き上げした際には、企業が定める定年年齢の下限などを規制する、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」を改正して、定年年齢の下限を引き上げ、65歳まで働ける環境を整備しました。

もし老齢年金の支給開始年齢を、75歳程度まで引き上げするなら、これと同様の事をする必要があると思います。

しかし上記のように男性は71歳くらいになると、健康上の問題で働くのが難しくなるので、企業は定年年齢の下限を75歳程度まで引き上げすることに、強く反発するはずです。

また従業員の側も、75歳程度まで働きたくないと思っているはずであり、その理由は仕事が好きではないからです。

例えば「働きがいあふれる」チームのつくり方(著:前川孝雄)という本には、次のような文章が記載されております。

『NHK放送文化研究所が1993年から参加している国際比較調査グループISSP(International Social Surbey Progamme)の2005年の調査で、日本で働く人たちの仕事の満足度は、世界32カ国と地域中28位という低さ。

最新の2015年の調査では、世界ランキングは周知されていないものの、2005年の満足度合計が73%から2015年では60%に下がっていることから、相変わらず世界最低レベルであると推測できる。

その他にも、日本で働く人たちの会社や仕事に対する満足度は、世界的に見て低くなっているという調査が後を立たない』

以上のようになりますが、国際比較が掲載されている、2005年の調査結果については、仕事の満足度が低い日本人を参照して下さい。

また最新の2015年の調査結果については、仕事の満足度を左右するのは,仕事内容か,人間関係かを参照して下さい。

2005年の調査結果を見ると、「仕事の満足度」が世界32カ国の中で28位となり、かなり低いとわかるだけでなく、「職場に誇り」についても、世界32カ国の中で25位となり、かなり低いとわかります。

こういったデータから考えると日本人は、自分の仕事や職場に対して、あまり満足していないのだと思うのです。

しかも2005年と2015年のデータを比較すると、その傾向は強くなっていると考えられます。

それにもかかわらず「転職しない」については、世界32カ国の中で2位となっているので、仕事や職場を変える気持ちは低いようです。

ただ老齢年金の支給開始年齢が、75歳程度まで引き上げされた場合には、満足できない仕事や職場で働く期間が、現在よりも長くなります。

それはとても辛い事ですから、満足できる仕事や職場を求めて、転職や起業などをする方が、増えていくのかもしれません。

つまり老齢年金の支給開始年齢の引き上げは、老後資金について考えるきっかけになるだけでなく、働き方について考えるきっかけにもなると思うのです。
posted by FPきむ at 20:28 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月03日

生活保護の受給者を批判するのに、老後資金の準備はしないという矛盾

厚生労働省は平成29年(2017年)6月7日に、同年3月時点の全国の生活保護受給世帯数が、概数で164万1,532世帯だったと発表しました。

これにより平成28年(2016年)年度の月平均は、163万7,183世帯になり、過去最高を更新したのです。

その内訳を見てみると、65歳以上の高齢者世帯が全体の51%を占め、初めて半数を超えました。

こういったニュースを伝えるニュースサイトの、読者のコメント欄を見ていると、生活保護の受給者に対する批判が、繰り返し書き込みされている場合が多いように感じます。

どうして日本人は批判ばかりするのだろうかと思っていたら、平成29年(2017年)8月12日のVIDEO NEWSに、その答えとなるような記事が掲載されておりました。

その記事とは「日本人は格差を望んでいる」は本当かであり、一部を紹介すると次のようになります。

『この番組では何度もご紹介しているが、2007年のピューリサーチによる国際世論調査で、「自力で生活できない人を政府が助ける必要はあるか」の問いに対し、日本は先進国中ダントツとなる38%もの人が「助けるべきではない」と回答している。

何とこれは28%が「ノー」と答えたアメリカはもとより、中国や貧困に喘ぐアフリカの発展途上国よりも大幅に高いショッキングなデータだったが、実際に今、日本社会に起きている現象は、残念ながらこの調査結果と符合していると言わざるを得ない。

その裏付けとなるかどうかは議論のあるところだが、日本では相変わらず生活保護の捕捉率が2割を割っている。

つまり実際に生活保護を受けられるほどの困窮状態にありながら、様々な理由から生活保護を受給できていない世帯が、8割以上もあるということだ。

8割の貧困家庭が放置される一方で、実際は全体の0.3〜0.4%程度に過ぎない生活保護の不正受給に対しては、メディアも含めて凄まじいバッシングが行われる。

とは言え、もし橘木氏が指摘するように、実は日本人の本性が「助け合い」ではなく「自助」にあるのだとすれば、今日の日本の問題はとても根深いものとなる。

なぜならば、困っている他人を助けるために一肌脱ぐことには否定的な一方で、精神的にも実態面でも行政への依存度が非常に高く、何かあればすぐに「お上」に頼る傾向が強いのが日本人だとすれば、日本の財政の帳尻が合わなくなるのは目に見えているからだ』

以上のようになりますが、要するに自力で生活できない人を、政府が生活保護などで助ける事に対して、日本人の38%が反対しているのです。

だからニュースサイトの読者のコメント欄を見ると、生活保護の受給者に対する批判で溢れているのだと思います。

またこのような批判が怖いため、生活保護を受けられるほどの困窮状態にありながら、生活保護を受けていない方が多いのかもしれません。

あくまで推測になりますが、自力で生活できない人を、政府が生活保護などで助ける事に反対している38%の方は、そのために自分が納めた税金が使われる事や、そのための増税に対しても、反対ではないかと思います。

そうなると政府は生活保護のために使われる予算を増やせない、または削減するので、申請の厳格化や給付減などが実施されるのです。

これに対して納得できない方がいるかもしれませんが、自力で生活できない人を、政府が生活保護などで助ける事に反対している国民が、38%もいるのですから、民主主義国家である日本においては、申請の厳格化や給付減などに行き着いてしまうのです。

ですから老後資金の準備をしっかりと行い、特に高齢になった時に発生する可能性のある貧困に、備えていく必要があります。

しかし7月7日のブログに記載しましたように、内閣府の調査によると日本人の4割超は、老後の経済的な備えを特に何もしていないのです。

この理由のひとつとして考えられるのは、冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、『精神的にも実態面でも行政への依存度が非常に高く、何かあればすぐに「お上」に頼る傾向が強い』からかもしれません。

つまり困った時には、政府がなんとかしてくれるという気持ちが強いから、自分でなんとかしようという気持ちが弱くなってしまうのです。

そうなると日本人は生活保護の受給者を、自助努力が足りないと批判するのに、自らも自助努力をしないで、困ったら政府に助けてもらおうと思っている、矛盾した状態にあるのです。

いずれにしろこれだけ多くの日本人が、自力で生活できない人を政府が助ける必要はないと思っているのですから、生活保護をはじめとする社会保障の給付は、全般的に先細りしていくと予想されます。

その結果として老後資金の準備などの自助努力が、否が応でも必要になってくると思うのです。
posted by FPきむ at 20:49 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする