2017年08月12日

松井知事は地方議員の厚生年金加入に反対なら、身を切る姿勢を見せよう

平成29年(2017年)7月12日の時事ドットコムを読んでいたら、地方議員の年金加入に反対=自民案を阻止−松井大阪知事と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『大阪府の松井一郎知事は12日の記者会見で、自民党が地方議員の厚生年金への加入を検討していることについて「大反対だ。非常勤の議員を優遇する必要があるのか」と述べ、反対する考えを示した。

松井氏は日本維新の会代表を務めていて、「自民党案を阻止する。国政でも反対のキャンペーンを行う」と主張した。

待遇改善のため地方議員が厚生年金に加入すれば、保険料を議員と自治体が折半で負担することになる。松井氏は「加入を認めることになっても大阪府としては(保険料負担の)予算を付けない」と強調した。

地方議員のなり手が不足している問題について、松井氏は「議員の身分保障を厚くするのではなく、議員になりやすい環境整備が必要だ」と指摘。具体的には議会会期を短縮する案などを挙げた』

以上のようになりますが、数年前まで地方議員は、議員が納付する掛金と地方自治体の公費で運営され、「在職12年以上」という短期で受給資格を得られる、地方議会議員年金に加入しておりました。

また国民年金と厚生年金保険は重複して加入できないので、通常はどちらか一方だけに加入しておりますが、地方議会議員年金はこれらと重複して加入できます。

つまり地方議員は、国民年金や厚生年金保険に加入しながら、地方議会議員年金にも加入していたのです。

しかし平成23年(2011年)6月に、地方議会議員年金は廃止されたため、例えば専業の地方議員は、国民年金だけに加入しております。

会社役員などを兼業している地方議員は、厚生年金保険に加入しているため、原則65歳になった時に、国民年金から支給される老齢基礎年金に上乗せして、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を受給できます。

しかし専業の地方議員は上記のように、国民年金だけに加入しているため、老齢基礎年金のみの受給となり、老齢厚生年金の上乗せがないのです。

そこで自民党のプロジェクトチームは、地方議員のなり手不足を改善するため、地方議員を厚生年金保険の加入対象とする案の検討に入ったのです。

しかし地方議員が厚生年金保険に加入する場合には、地方自治体は地方議員が納付する保険料と同額を、公費(要するに「税金」)で負担しなければなりません。

例えば地方議員の厚生年金保険の保険料が20,000円だった場合、地方自治体は公費で20,000円を負担して、併せて40,000円を日本年金機構に納付するのです。

総務省の試算によると、すべての地方議員が厚生年金保険に加入した場合、保険料の半額を負担する事によって発生する公費が、毎年約200億円かかるそうです。

このような理由があるため、大阪府の松井知事は記者会見で、地方議員の厚生年金保険への加入に対して、反対する考えを示したのです。

ところで松井知事を初めとする都道府県知事や市町村長などは、どんな年金制度に加入しているのでしょうか?

これについて調べてみると、都道府県知事や市町村長は議員ではなく、常勤職員に該当するため、一般の地方公務員と同じように、厚生年金保険に加入しているようです。

そうなると松井知事は、地方議員の厚生年金保険への加入に反対しながら、自らは厚生年金保険に加入している事になります。

もしこれが事実なら、明らかな矛盾だと思うので、自民党のプロジェクトチームの対案として、都道府県知事や市町村長などを厚生年金保険に加入させない案を出し、この矛盾を解消すべきです。

それが無理なら厚生年金保険の保険料に対する、公費負担分を返納して、自らの給与から負担すべきではないかと思います。

いずれにしろ自らが身を切る姿勢を見せないで、相手に対して身を切る姿勢を要求するのは、フェアではない気がするのです。
posted by FPきむ at 20:27 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月03日

日銀が物価目標の達成時期を先送りすると、年金額のカットは強化される

平成29年(2017年)7月20日のブルームバーグを読んでいたら、日銀:物価目標2%達成「19年度ごろ」に先送り、政策は現状維持と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『日本銀行は20日の金融政策決定会合で、物価上昇2%達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」に先送りした。

企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることが背景。物価目標達成時期を先送りするのは昨年11月の会合以来となる。

長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針は維持する。

決定会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比の新たな見通し(政策委員の中央値)は17年度が4月の1.4%上昇から1.1%上昇に、18年度は1.7%上昇から1.5%上昇に下方修正した。

19年度は消費増税の影響を除くベースで1.9%上昇から1.8%上昇に引き下げた。新たな物価見通しも「下振れリスクの方が大きい」としている』

以上のようになりますが、日銀がインフレ・ターゲット(物価上昇率の目標)を2%に設定して、大規模な金融緩和策を開始したのは、黒田総裁が就任して間もなくの、平成25年(2013年)4月になります。

当初はこの目標を2年程度で達成すると言っていたのですが、いつまで経っても達成できなかったので、追加の金融緩和策やマイナス金利政策などを実施しました。

しかしそれでも目標を達成できず、ついには黒田総裁の任期である平成30年(2018年)4月になっても、達成できない見通しになったのです。

しかも日銀の物価上昇率の見通しは上記のように、「2017年度:1.1%」、「2018年度:1.5%」になっておりますが、今年の5月時点の民間エコノミストの予想は次のようになっており、日銀の見通しとの間に大きな開きがあります。

・2017年度:0.81%
・2018年度:0.99%

この民間エコノミストの予想が当たった場合には、「2019年度ごろ」とされている2%の物価目標の達成時期も、いずれ先延ばしされる気がするのです。

ところで平成30年(2018年)4月になると、マスコミに「年金カット法案」と批判された法律の一部が、実施される予定になっており、それはマクロ経済スライドの強化です。

例えば68歳到達年度以降の「既裁定者」の場合は原則的に、購買力を維持する観点から、物価の変動率によって年金額を改定します。

もっと具体的にいうと次のように、一昨年の物価と昨年の物価を比較して、物価が変動した分だけ、今年度から支給される年金額を、増額(減額)させるのです。

今年度の年金額=昨年度の年金額×物価の変動率

しかし平成16年(2004年)の改正により、マクロ経済スライドが導入されてからは、物価の変動率から、少子高齢化の進展状況などを元に算出したスライド調整率を控除して、年金額を減額するようになり、大まかに表現すると次のようになります。

・今年度の年金額=昨年度の年金額×(物価の変動率−スライド調整率)

例えば平成27年(2015年)度に、マクロ経済スライドが発動された時のスライド調整率は0.9%だったので、物価が1%上昇しても「1%−0.9%=0.1%」となり、0.1%しか年金額は増えません。

しかし次の例のように、物価の変動率がプラスであっても、スライド調整率を控除するとマイナスになる年度は、年金額を0.5%減額するのではなく、昨年度の年金額を据え置きします。

・物価の変動率(0.4%)−スライド調整率(0.9%)=−0.5%

また次の例のように、物価の変動率がマイナスで、そこからスライド調整率を控除すると、更にマイナス幅が大きくなる年度は、年金額を1.1%減額するのではなく、物価の変動率である0.2%だけ年金額を減額します。

・物価の変動率(−0.2%)−スライド調整率(0.9%)=−1.1%

つまりこれらの年度については、マクロ経済スライドの一部または全部が、発動されないのです。

これは年金受給者にとって良い話なのですが、こういった事を繰り返していくと、マクロ経済スライドが発動されなかった分だけ、年金財政が悪化していくのです。

そこで上記のようにマクロ経済スライドを強化し、物価の上昇率が大きかった年度に、複数年分のスライド調整率を、まとめて控除できるようにしたのです。

しかし民間エコノミストが予想したような、弱い物価上昇が続くと、複数年分のスライド調整率をまとめて控除するのは、不可能ではないかと思います。

そうなると「物価の変動率−スライド調整率」がマイナスになっても、マクロ経済スライドを完全に発動できるようにして、年金額のカットを強化するしかないのです。
posted by FPきむ at 20:55 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする