2019年05月20日

健康寿命を理由にした繰上げ受給に、疑問を投げかける日本人の健康不安

老齢基礎年金や老齢厚生年金などの老齢年金を受給できるのは、原則として65歳になってからです。

この老齢基礎年金の受給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の制度により、0.7%の割合で増額していきます。

そして繰下げの上限である70歳で受給開始すると、老齢基礎年金は42%(5年×12ヶ月×0.7%)増額するのです。

一方で老齢基礎年金の受給開始を、1ヶ月繰上げる(早くする)と、「繰上げ受給」の制度により、0.5%の割合で減額していきます。

そして繰上げの上限である60歳で受給開始すると、老齢基礎年金は30%(5年×12ヶ月×0.5%)減額するのです。

今年の初め頃に厚生労働省が、繰下げできる年齢の上限を、75歳程度まで拡大する検討に入ったという報道がありました。

また最近は厚生労働省が、来年の通常国会に繰下げ受給の改正案を、提出する方針を固めたという報道がありました。

こういった報道の影響により、最近は週刊誌などを読んでいると、繰下げ受給の特集が多いような印象があります。

ただ内容的には繰下げ受給を勧める記事だけでなく、法改正でお得度が増したとしても、繰上げ受給の方が良いという記事もあります。

どちらの主張にも説得力があったのですが、繰上げ受給を勧める側の主張の中で、もっとも説得力があると思ったのは、「健康寿命」を元にしたものです。

各年齢の方が平均して、あと何年生きられるかを示す「平均余命」、0歳の平均余命を示す「平均寿命」は、よく知られておりますが、その他に健康寿命という統計があります。

この健康寿命とは「健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間」を示しており、平成25年(2013年)の日本人の健康寿命は、「男性:71.19歳、女性:74.21歳」でした。

なお同年の日本人の平均寿命は、「男性:80.21歳、女性:86.61歳」でしたから、10年くらいの差があります。

繰上げ受給を勧める側の主張としては、健康寿命からわかるように、70歳を過ぎると健康上の問題で、例えば旅行に行ったり、スポーツしたりするのが難しくなるため、早く年金をもらって、人生を楽しんだ方が良いというものです。

また70歳を過ぎると健康上の問題で、外出する機会が少なくなり、節約しなくても支出が減るため、繰下げにより増額した年金をもらっても、使い道に困るという主張もあります。

ところで日本人の健康寿命は、無作為抽出された国民を対象に実施している、国民生活基礎調査の中にある、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか。(1)ある、(2)ない」という、シンプルな質問と回答を元に算出しているのです。

このように質問がシンプルなため、それぞれの主観的な判断が、健康寿命に影響を与えそうな気がするのです。

例えば性格がポジティブな方は、健康上の問題で日常生活に影響があっても、そんなのは気にしないで前向きに生きているため、「(2)ない」と回答するかもしれません。

一方で性格がネガティブな方は、物事を悲観的に考えてしまうため、健康上の問題で日常生活に少しだけ影響があるだけでも、「(1)ある」と回答するかもしれません。

こんな疑問を感じていたら、平成31年(2019年)4月15日のPRESIDENTに、7割弱が「具合悪い」を訴える日本の異常という記事を見つけたのですが、一部を紹介すると次のようになります。

『実に日本人の7割弱が「自分は健康でない」と思っているんです。というのも、経済協力開発機構(OECD)が2016年に35カ国を対象に「自分の健康状態は良好だと思いますか?」という調査をしました。

結果、日本は35カ国中34位。3人に1人しか「自分の健康状態は良好だ」と答えなかったんです。

ちなみに88%の人が「自分の健康状態は良好だ」と答えた国もありました。アメリカです。自己肯定感が強い。健康に関してもそうです。

ほかにも、ニュージーランド、カナダ、この辺が高いです。やっぱり、自己肯定の社会だなと思いますね。

一方で、日本では7割弱の人が「自分はどっか具合が悪い」って言うんですよ。医学界とか製薬学会にとって、こんなにいい社会はないですね(笑)』

以上のようになりますが、日本人はアメリカ人より平均寿命が長いのに、「自分の健康状態は良好だ」と回答したのは、日本人よりアメリカ人の方が多いというは、変だと思いませんか?

やはり日本はアメリカよりネガティブな国民が多く、そういった方は自分の健康状態について、実際より悲観的に捉えると考えられます。

そうなると日本人の健康寿命である、「男性:71.19歳、女性:74.21歳」は、実はもっと長いのかもしれません。
posted by FPきむ at 20:44 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月03日

貯蓄ゼロ円が老後資金を準備するのは、ラクダが針の穴を通るより難しい



令和元年(2019年)5月1日のLIMOを読んでいたら、貯蓄に無関心な30代・40代、4.3人に1人が「貯蓄ゼロ」と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『SMBCコンシューマーファイナンス株式会社は、2019年1月7日〜9日の3日間、「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」をインターネットリサーチで実施し、1000名の集計結果を公開しました。それによると、「貯蓄ゼロ円」の人が23.1%にものぼりました』

『日本ファイナンシャルプランナーズ協会の廣田士郎氏によると、貯蓄を成し得るには、2つの前提が必要だといいます。その2つとは、「貯蓄に振り向けられるだけの生活余裕分」と、「貯蓄に振り向ける意思」です。

ではここで、日本人の収入推移を見てみましょう。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、500万円近くあった民間平均給与は、バブル崩壊後は右肩下がりで減少しました。

さらに、2008年のリーマンショックによって大きく減少してしまい、2009年には約400万円まで落ち込みました。

しかし、第二次安倍内閣が発足してから1年経った2013年ごろから、平均給与は上昇に転じました。女性の給与に限って見れば、2018年の数字は統計を取り始めた1978年以降で一番高い287万円となっています。

「民間給与実態統計調査」を年代別にさらに細かく見ると、30代の前半・後半、40代前半・後半でばらつきはありますが、傾向としてはおおむね増えています。

つまり、30代・40代に限っても「収入は増えているのに、貯蓄ゼロの人が増えている」といえます。

そうすると、30代・40代において、貯蓄を成し得る2つの前提のうちの「貯蓄に振り向ける意思」が弱まっているということも考えられます』

以上のようになりますが、貯蓄ゼロの原因を分析した、金融関係の専門家などが書いた記事を見てみると、社会保険料や税金の負担増により、給与の手取りが減っている事を挙げる方が多いと思います。

また非正規雇用(契約社員、派遣社員、パートやアルバイトなど)の増加による、収入減を挙げる方もおります。

これらは共通して、「貯蓄に振り向けられるだけの生活余裕分」が少なくなった事を、貯蓄ゼロの原因と分析しているのです。

しかし冒頭の記事では、「貯蓄に振り向ける意思」が弱くなった事も、貯蓄ゼロの原因と分析しており、この点は発想が斬新だと思いました。

また冒頭の記事では、30代〜40代の貯蓄に振り向ける意思が弱くなった原因を、非婚化と晩婚化だと分析しております。

なぜこれらが原因なのかというと、例えば独身で子供がいなければ、将来的に大きなお金がかかる子供の教育費を、早いうちから貯めておこうという意欲が湧かないため、貯蓄に振り向ける意思が弱くなってしまうのです。

また貯蓄が必要な大きな消費(例えば住宅、旅行、車など)に対して、関心がなくなっている事も、貯蓄に振り向ける意思が弱くなった原因に挙げられております。

つまり貯蓄が必要な大きな消費に対して関心がなくなれば、そのためにお金を貯めようという意欲が湧かないため、貯蓄に振り向ける意思が弱くなってしまうのです。

経営コンサルタントの大前研一さんは、経済成長の頭打ち、様々な消費財のコモディティ化や普及などの、複合的な理由によって、消費行動が極端に萎縮した社会を、「低欲望社会」と呼んでおります。

現在の日本はこの低欲望社会に陥っていると、大前さんは著書の中で指摘しているので、貯蓄が必要な大きな消費に対して関心がなくなっているのは、30代〜40代だけではないのかもしれません。

ところでお金に関する本やウェブサイトなどを見ていると、「人生の3大費用」という言葉が、記載されている場合があります。

この人生の3大費用とは、子供の教育費、住宅の購入費、老後の生活費の3つを示しており、いずれについても大きな資金が必要になるため、早いうちから貯蓄して、しっかりと準備しておく必要があるのです。

ただ子供の教育費と住宅の購入費については、結婚をしなかったり、マイホームを購入しなかったりすれば、生涯を通じて必要ありません。

それに対して老後の生活費については、誰でも必要になる可能性が高いため、否が応でもこれのために貯蓄する必要があります。

しかし内閣府が行った調査によると、7月7日のブログに記載しましたように、日本人の約4割が老後の経済的な備えを、特に何もしていないのです。

新約聖書のマタイ福音書には、「金持ちが天国に入るのは、ラクダが針の穴を通るより難しい」という言葉が登場します。

近いうちに使う可能性のあるお金すら貯めていない、貯蓄ゼロ円と回答した23.1%の方が、将来の老後のためにお金を貯めるのは、ラクダが針の穴を通るより難しいのではないでしょうか?

そうなると高齢になっても働き続けられるように、資格や技術などを身につける必要があると思います。

また運動や食事などに気を使い、健康な心身を維持していくのも、大切な事ではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:43 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする