2018年02月17日

年金の繰下げ支給を拡大すると、1%しかいない利用者は10%に増える

老齢基礎年金や老齢厚生年金などの「老齢年金」が支給されるのは、原則として65歳になります。

この支給開始年齢を1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ支給」の制度により、0.7%の割合で老齢年金の金額が増額します。

そのため繰下げ支給の上限年齢となっている、70歳まで繰下げした場合には、42%(5年×12ヶ月×0.7%)も増額します。

内閣府の有識者検討会は平成29年(2017年)7月頃に、繰下げ支給の上限年齢を、75歳程度まで拡大する案を発表しました。

それから特に進展がなかったので、実現せずに終わってしまうのかと思っていたら、政府はこの案を盛り込んだ「高齢社会対策大綱」を、平成30年(2018年)2月16日に閣議決定したのです。

これから新しい制度の具体的な設計を決める必要があるため、繰下げ支給が拡大されるのは、数年後の話になるようですが、実現する可能性が高くなってきました。

ただ厚生労働省年金局が作成している、「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を見てみると、老齢基礎年金のみの受給者の中で、繰下げ支給を利用している方は、平成27年(2015年)度末時点で、1.4%しかいません。

しかもここ数年はずっと1%台で推移しているため、ほとんど増えていない事がわかります。

ですから繰下げ支給を75歳程度まで拡大しても、利用者の割合に大きな変化はないと予想していたのですが、平成29年(2017年)12月20日の毎日新聞に、その予想を覆すような記事が掲載されておりました。

その記事のタイトルは日本の世論2017:いつまで働く?「70歳以上」36%であり、一部を紹介すると次のようになります。

『毎日新聞は10〜12月、埼玉大学社会調査研究センターと共同で時事問題に関する世論調査「日本の世論2017」を実施した。

何歳まで働く予定か、または働いていたか、具体的な数字(就労希望年齢)を挙げてもらったところ、70歳以上の年齢を記入した人が36%を占めた。

総務省によると、2016年の就業者総数に占める70歳以上の割合は5%だが、これを大幅に上回った。

就労希望年齢の平均は66.9歳。公的年金を受け取れるようになる年齢(原則65歳)を上回った。具体的には65歳を挙げた人が32%で最も多く、70歳(22%)、60歳(16%)、75歳(8%)と続いた。

回答者の年代別に見ると、70歳以上の年齢を挙げた人は、70代以上は過半数、60代は4割、30〜50代も3割前後いた』

以上のようになりますが、就業者総数に占める70歳以上の割合は、まだ5%しかいないようです。

ただ就労希望年齢に70歳以上を挙げた方は、上記のように36%もいるため、働きやすい環境が整備されれば、7.2倍に増える可能性があります。

75歳程度までの繰下げ支給を利用しても良いという方も、同じ割合で増えていく可能性を秘めており、実際に増えると10%(1.4%×7.2倍)くらいになります。

かなり強引な計算かもしれませんが、繰下げ支給が75歳程度まで拡大して、現在と同じペースで老齢年金の金額が増えるなら、84%(10年×12ヶ月×0.7%)も増額しますから、ありえない話ではないと思うのです。

このように繰下げ支給の拡大により、その利用者は現在よりも増えていく可能性がありますが、すぐに頭打ちするかもしれません。

その理由としては平成30年(2018年)1月13日のマネージンに、65歳以降の就労、46.0%が「仕事したくない」一方、働くシニアの平均収入は22万1,000円と題した記事が掲載されていたからであり、一部を紹介すると次のようになります。

『ソニー生命保険株式会社は12月20日、「シニアの生活意識調査」の結果を発表した。調査は50歳から79歳の全国のシニアを対象に11月21日から22日にかけて実施され、1,000名から有効回答を得た。

シニアに65歳以降の就労意欲について聞いたところ、「仕事をしたい」が32.8%、「仕事はしたくない」が46.0%、「わからない」が21.2%となり、65歳以降に就労意欲があるシニアは3人に1人の割合になった。

65歳以降の仕事で重視すること・重視したことを複数回答で聞くと、「体力的な負担が軽い」が48.4%で最も多く、以下「勤務時間」(39.4%)、「経験が活かせる」(33.6%)、「通勤時間」(27.5%)、「賃金」(24.7%)が続いた。

働くシニアはより多くの収入を求めて就労する一方、定年後はなるべくなら働きたくないと考えるシニア層も一定数いるようだ』

以上のようになりますが、このように65歳以降については、仕事はしたくないと考えるシニア層が、一定数(46.0%)は存在している事から、繰下げ支給の利用者は増加しても、すぐに頭打ちすると考えるのです。

ただそうであったとしても、それぞれの生き方に合わせて年金の支給開始年齢を、現在より幅広く選択できるのは、良い事ではないでしょうか?
posted by FPきむ at 20:32 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月03日

投資で老後資金を準備するなら、「いい加減」を目標にした方が良い

平成30年(2018年)1月26日に、仮想通貨の取引所の中では最大手であるコインチェックが、ハッキングの被害に遭い、約580億円分の仮想通貨NEM(ネム)が、外部流出したそうです。

この直後のニュースサイトの記事には、被害に遭った芸人さんの名前や、被害額などが記載されており、一部の記事では会社員の方も匿名で、被害額を告白しておりました。

こういった記事を読んでいたら、日本人は投資に関する目標が、高すぎるのではないかと思いました。

そのため「いい加減(程よい程度)」を、目標にした方が良いのではないかと思いましたが、それは例えば次のようになります。

(1)仮想通貨の取引は投資経験を積んでからにする
平成30年(2018年)1月27日に仮想通貨のビットコインが、1日で40%も下落したそうです。

この日以外でも激しい値動きをしているため、ビットコインを保有している方は、いつも値段が気になってしまうと思います。

またこれだけ値動きの激しいものを、投資経験のない方が取引するのは、運動不足で体が鈍っている方が、いきなりフルマラソンにチャレンジするようなものであり、いい加減を越えていると思います。

フルマラソンを完走するには、少しずつ走る距離を伸ばしていき、まずはハーフマラソンにチャレンジするのが良いそうです。

投資についてもマラソンと同じで、「個人型の確定拠出年金(iDeCo)」や「つみたてNISA」で、投資信託を積み立てするなどの、難易度の低いものからチャレンジするのが良いと思います。

そして難易度を少しずつ上げていき、十分な投資経験を積んでから、仮想通貨の取引にチャレンジするのです。

もし初めての投資に仮想通貨を選んだとしたら、いい加減を越えているため、おそらく投資が怖くなっていき、短期間で取引を止めてしまうと思います。

数千万円の老後資金を準備するには、ある程度の期間がかかりますから、このように短期間で取引を止めてしまうという事は、投資で老後資金は準備できないという結果になるのです。

(2)仮想通貨は資産の一部として保有する
ある芸人さんは貯金の全額を、仮想通貨の取引に使ってしまったため、コインチェックのハッキングにより、無一文になってしまったそうです。

芸人さんの話なので、ジョークの可能性もありますが、もし事実だったとしたら、いい加減を越えていると思います。

投資の世界には「命金には手をつけるな」という、有名な格言が存在しております。

これは「生活に必要な資金(命金)で投資してはならず、余裕資金で投資しなさい」という意味の言葉です。

なぜ命金で投資してはいけないのかというと、失敗してはいけないという気持ちが強くなり、冷静な判断ができなくなるからです。

この芸人さんのように貯金の全額を使うのは、命金に手をつけていると考えられるため、いい加減を越えていると思います。

また余裕資金で投資するにしても、そのすべてを仮想通貨の取引のために使うのは、いい加減を越えていると思います。

つまり株式、債券、不動産、コモディティなどの他の複数の資産も保有し、仮想通貨は資産の一部でしかないというのが、いい加減な資産配分です。

もし資産のすべてがビットコインだった場合、1日で40%も下落するのですから、資産額が数千万円であったとしても、安心して老後を迎える事はできないと思います。

(3)高すぎる利回りを目標にしない
仮想通貨の平成29年(2017年)の利回りについて、インターネットで調べてみたら、1,000%〜2,000%くらいという、かなり威勢の良い数字が紹介されておりました。

そんなに簡単に儲けられるのなら、100%くらいだったら楽勝のような気がします。

しかしアメリカを代表するお金持ちで、投資の神様と称えられているウォーレン・バフェット氏でさえ、利回りは20%くらいなのですから、100%でも高すぎるのです。

先進国の株式に投資した場合の期待利回りは、5%くらいと言われておりまので、このくらいがいい加減ではないかと思います。

かなり低いような気がしますが、例えば500万円を年利5%で、35年に渡って複利運用した場合、終価係数で計算すると約2,758万円になります。

これだと仮想通貨の取引で1億円もの利益を得た方、いわゆる「億り人(おくりびと)」にはなれません。

しかし老後資金の目標額としてよく登場する、3,000万円にはかなり近づきますので、時間を味方にすれば、高い利回りを目標にしなくても良いのです。
posted by FPきむ at 20:19 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする