2018年11月04日

ジャーナリストの安田さんを批判するのに、老後資金を準備しない矛盾

先日ニュースサイトを見ていたら、約3年間に渡って拘束されていた、フリージャーナリストの安田純平さんが、武装組織から開放され、帰国したという記事が掲載されておりました。

その記事の下のコメント欄を読むと、安田さんの帰国を祝福するコメントより、安田さんを批判するコメントの方が、遥かに多かったという印象があります。

その代表的なものとしては、「安田さんは自らの意思で、危険な地域に行ったのだから、拘束されたのは自己責任だ。そんな人間を税金で助けるのはおかしい」というコメントです。

これって以前に話題になった、生活保護の受給者や人工透析の患者に対する批判と、かなり似ていると思いました。

その批判とは「貧困や腎不全になったのは自己責任だから、税金で助ける必要はない」というものです。

こういった批判を見ていると日本は、政府が困っている方を助ける事に対して、否定的な国民が多いという印象を受けます。

平成29年(2017年)8月12日のVIDEO NEWSには、これを裏付けるような、「日本人は格差を望んでいる」は本当かと題した、次のような記事が掲載されておりました。

『この番組では何度もご紹介しているが、2007年のピューリサーチによる国際世論調査で、「自力で生活できない人を政府が助ける必要はあるか」の問いに対し、日本は先進国中ダントツとなる38%もの人が「助けるべきではない」と回答している。

何とこれは28%が「ノー」と答えたアメリカはもとより、中国や貧困に喘ぐアフリカの発展途上国よりも大幅に高いショッキングなデータだったが、実際に今、日本社会に起きている現象は、残念ながらこの調査結果と符合していると言わざるを得ない。

その裏付けとなるかどうかは議論のあるところだが、日本では相変わらず生活保護の捕捉率が2割を割っている。

つまり実際に生活保護を受けられるほどの困窮状態にありながら、様々な理由から生活保護を受給できていない世帯が、8割以上もあるということだ。

8割の貧困家庭が放置される一方で、実際は全体の0.3〜0.4%程度に過ぎない生活保護の不正受給に対しては、メディアも含めて凄まじいバッシングが行われる』

以上のようになりますが、これを読むと日本人の約4割は、自力で生活できない方を政府が助ける、つまりそのために税金が使われる事に対して、否定的だとわかります。

こういった日本人が多いという事は、政府はその世論に応えるような政策を行います。

安田さんが約3年間も武装組織に拘束されていたのは、「拘束されたのは自己責任だから助ける必要はない」という世論が多いため、政府は積極的に交渉をしなかったのかもしれません。

また生活保護を受給できていない世帯が8割以上もあるのは、「貧困は自己責任だから助ける必要はない」という世論が多いため、政府は積極的な援助をしないのかもしれません。

このように人生に降りかかる様々な不幸は、自己責任で処理されてしまい、その世論の通りに行動する政府からは、あまり援助を期待できないとしたら、そういった状況にならないための、自助努力が必要になってくるはずです。

例えば武装組織に拘束されないためには、危険な地域には行かない事であり、腎不全にならないためには、栄養バランスを考えた食事を摂るなどの健康管理を、きちんと行う事です。

また定年退職後に貧困にならないためには、老後資金をしっかりと準備しておく事です。

しかし内閣府が行った調査によると、7月7日のブログに記載しましたように、日本人の約4割は老後の経済的な備えを、特に何もしておりません。

現在は年金の支給額の減額や、年金の支給開始年齢の引き上げが、話題になっておりますから、こういった方が老後を迎えた時には、かなり大変な生活が待っていると思います。

それにもかかわらず貧困は自己責任という世論を受け、政府が十分な対策をしないとしたら、更に生活が苦しくなるのです。

ところで新約聖書の中には、「裁いてはいけない。裁かれないためだ。 あなた方が裁く通りに、あなた方も裁かれ、あなた方が量る通りに、あなた方も量られるだろう」という、有名な言葉が記載されております。

この言葉が真実だとしたら、安田さんを自己責任だと裁く方は、自分が高齢になった時に若い世代から、老後の貧困は自己責任だと、裁かれる可能性があるのです。

ですから自己責任だと裁かれないようにするため、老後資金をしっかりと準備する必要があると思います。

また安田さんを自己責任だと裁く方が、老後資金の準備に取り組まないのは、安田さんと同じように自助努力をしていないという意味で、矛盾していると思うのです。
posted by FPきむ at 20:42 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月30日

確定拠出年金の加入資格の範囲を、65歳まで拡大する案が議論開始へ

平成30年(2018年)10月28日の毎日新聞を読んでいたら、<厚労省>確定拠出年金、65歳まで加入期間延長へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、公的年金に上乗せする確定拠出年金について、原則60歳までとなっている加入期間を65歳まで延長する検討に入る。

60歳を超えても働き続ける人が増えている実情を踏まえ、掛け金を払い込める期間を延長し、老後の備えを手厚くするのが狙いだ。

年明けに厚労省の社会保障審議会企業年金部会で議論を始め、2020年の通常国会に確定拠出年金法の改正案を提出する方針だ。

確定拠出年金は、公的年金に上乗せする私的年金の一つ。個人が任意で加入する個人型(イデコ)と、勤め先の企業が運営する企業型があり、いずれも加入者自身が掛け金を運用し、運用成績次第で受け取る年金額が変わる。

掛け金は全額が所得控除の対象で税負担が軽減され、受け取る際も税制優遇が受けられる。

加入資格者は現在、個人型が60歳未満。企業型も原則60歳までだが、同じ事業所で勤め続ける場合に限って規約で定めれば65歳まで延長できる。

厚労省は、個人型、企業型とも65歳まで加入できるようにしたい考えだ。加入期間が延びれば、運用できる原資も増え、将来への備えが手厚くできるようになる』

以上のようになりますが、60歳以降も働く方が増えているため、この記事の中に記載されているように、確定拠出年金の加入資格の範囲が65歳まで拡大されるのは、時間の問題ではないかと思います。

もし法改正が実施された場合には最長で、厚生年金保険に加入している方は、中学を卒業してから65歳になるまで、国民年金に加入している方は、20歳から65歳になるまで、確定拠出年金に加入できるようになります。

ただ何らかの公的年金に加入している事が前提になるため、例えば60歳で定年退職を迎え、それ以降は厚生年金保険にしない、短時間労働者として働いている場合には、法改正が実施された後も、確定拠出年金には加入できないはずです。

こういった方が60歳以降に、確定拠出年金に加入したい場合は、国民年金に任意加入すれば良いと思います。

この任意加入とは例えば大学生の時、または失業している時に、国民年金の保険料を納付していない期間がある場合、それを穴埋めするため、60歳以降も国民年金に加入して、保険料を納付できる制度です。

原則65歳から支給される老齢基礎年金の、受給資格期間を満たしている場合は65歳まで、満たしていない場合には70歳まで任意加入できます。

公的年金の上乗せを準備する制度として、確定拠出年金よりも歴史の長い国民年金基金は、すでに法改正が実施されたため、国民年金に任意加入している場合には、65歳まで加入できます。

おそらく後輩の確定拠出年金は、先輩の国民年金基金をお手本にすると思うので、国民年金に任意加入する事を条件に、65歳まで確定拠出年金に加入できるようにするはずです。

確定拠出年金というニンジンをぶら下げる事により、国民年金に任意加入する方や、60歳以降も厚生年金保険に加入する方が増えれば、保険料収入が増えるため、年金財政が以前より安定化すると思います。

加入資格の範囲を65歳まで拡大する背景には、このような厚生労働省の思惑も、存在しているのではないでしょうか?

ただ確定拠出年金は税制面での優遇が大きいため、年金財政は以前より安定化しても、税収は以前より減ってしまうかもしれません。

ですから65歳までは拡大できても、70歳まで拡大するのは、難しいような気がします。

いずれにしろ公的年金の支給開始年齢の近くになって、年金額が少ないと気が付いた時に、そこから新たに始められる制度が充実するのは、良い事ではないかと思います。

確定拠出年金の加入資格の範囲が拡大された場合、60歳から65歳になるまでの間に、公的年金の上乗せを準備できる制度の選択肢は、次のようになると考えられます。

■厚生年金保険に加入している方
・企業型の確定拠出年金(勤務先が実施しており、加入資格を満たす場合)
・個人型の確定拠出年金(iDeCo)

■国民年金に任意加入している方
・国民年金基金
・個人型の確定拠出年金(iDeCo)
・付加年金

この中で国民年金基金と付加年金は同時に加入できませんが、個人型の確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は、同時に加入できるのです。

ですからまずは月々の保険料が400円の、お手頃な付加年金に加入し、それでもまだ金銭的に余裕がある場合には、個人型の確定拠出年金(iDeCo)に加入するのが良いと思います。
posted by FPきむ at 20:43 | 確定拠出年金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする