2019年08月16日

公的年金を信頼できないのなら、国から届くレシートを確認した方が良い



令和元年(2019年)7月5日のITMediaビジネスオンラインを読んでいたら、50代の6割が受け取れる年金額を知らない 日銀調査と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『日本銀行が3月に行った調査で、50代の62%が受け取れる公的年金の金額を知らないことが分かった。退職後の生活費について意識している人は8割に達するが、必要額を認識している人は5割。実際に資金を確保している人は26%しかいなかった。

2016年に行われた前回の調査と比較すると、受け取れる金額の認識(60%)や必要額の認識(54%)、資金確保(28%)ともに大きな変化は見られなかった。

公的年金の受給額は、毎年誕生月に日本年金機構が「ねんきん定期便」としてはがきを送付している。50歳以上の場合、年金見込額も記載されている。

公的年金は、国民全員が加入する国民年金に加え、サラリーマンなどは本人と会社側が折半で拠出する厚生年金がある。

また、受給開始年齢は通常65歳だが、金額を減らして60歳から受け取ったり、金額を増やして70歳まで受給を遅らせることもできる。

本調査では、自分がどの年金を受け取れるのか(被保険者としての種類)についても、50代の51%が知っておらず、また支給開始年齢についても50%が知らないと答えた。

なお、退職後の生活費については、20代で47%、30代で63%が「意識している」と回答した。20代の19%、30代の25%が退職後の資金計画を策定していると答えており、年金不安を背景に、若いうちから老後に向けた行動を取りつつあることが分かる。

この調査は金融リテラシーの現状把握が目的。3月1日から20日にかけて、全国の18〜79歳の個人2万5000人を対象に、インターネットを用いたモニター調査で行われた。人口構成とほぼ同一の割合で収集した』

以上のようになりますが、50歳以上に送付されるねんきん定期便には、現在加入している年金制度(国民年金、厚生年金保険)に、60歳まで同じ条件で加入した場合の、年金見込額が記載されているのです。

そのため月給や賞与の金額が大きく変わらなければ、実際に受給できる金額に近くなります。

また50歳以上に送付されるねんきん定期便には、どんな種類の年金を、何歳から受け取れるのかも記載されております。

ですからねんきん定期便をきちんと見ていれば、「受け取れる金額」や「年金の支給開始年齢」がわからないというのは、ありえない話だと思うのです。

しかし上記の日銀の調査によると、50代の62.6%については、「受け取れる金額」がわからず、また50代の49.5%については、「年金の支給開始年齢」がわからないのです。

こういった基本的な事がわからないと、いくら老後資金を準備すれば良いのかについても、わからないのではないかと思ったら、やはり必要額を認識しているのは、54%にとどまりました。

ところで「年金問題」は嘘ばかり(著:高橋洋一)という本を読んでみると、年金の受給額や支給開始年齢などを確認するという目的以外でも、ねんきん定期便が使えるとわかります。

その具体的な使い方について記載した部分を紹介すると、次のようになっております。

『なぜ、「ねんきん定期便」が大事なのか。それは、「ねんきん定期便」は国が発行する「レシート」だからです。

会社員の皆さんは、給料から厚生年金保険料を天引きされています。「天引きされているから、大丈夫。きちんと納めている」と思っているかもしれませんが、会社に天引きされただけで、会社が国(日本年金機構)に払い込みをしたかどうかは、確認していないはずです。

それを確認するための資料が「ねんきん定期便」です。会社からもらう給与明細には、天引き額が書いてありますが、それは会社が発行したレシートにすぎません。

本当に国に納付されたかどうかを証明する資料は、「ねんきん定期便」だけです。それゆえ、「ねんきん定期便」は国から発行されたレシートだということになるのです』

『「ねんきん定期便」の中に、「これまでの保険料納付額」という欄があるはずです。ここに累計の納付額が記載されていますが、これがレシートに相当します。労使折半で会社が半額を負担していますから、国はこの欄に書かれた数字の倍の金額を受け取っています…(中略)…

レシートの「明細」代わりになるページは「最近の月別状況です」と書かれた部分です。ここには、標準報酬月額(月給)、標準賞与額(ボーナス)とともに、保険料納付額が記入されています。

同欄の「厚生年金保険」の項に書かれている「標準報酬月額(千円)」「標準賞与額(千円)」を見てください。

自分がもらった月給、ボーナスの額と大きく違っていないか確認しましょう。あまりにも低い数字が書かれていたら、会社が月給や賞与の数字をごまかして、低い保険料しか納付していない可能性があります』

以上のようになりますが、給与から天引きされた保険料を、事業主が運転資金などに使ってしまったため、未納になったケースや、天引きされた金額より低い金額しか納付されていないケースがあったのです。

また事業主が正直に納付しても、日本年金機構の職員のミスにより、または日本年金機構の職員の着服により、未納になったケースもありました。

ですからこの本の中に記載されているように、国から届くレシート(ねんきん定期便)を見て、給与から天引きされた保険料が、きちんと納付されているのかを、確認する必要があるという訳です。

公的年金を信頼していない方は特に、こういった確認をしっかりと行って、自分の身は自分で守った方が良いと思います。
posted by FPきむ at 20:17 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月03日

2,000万円の老後資金を貯められないのは、自己責任にした方が良い

夫が65歳、妻が60歳の無職の夫婦が、そろって30年生きると、年金以外に老後資金が、2,000万円必要になると試算された金融庁の報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、大きな話題になりました。

ここ最近はネタが切れてきたせいか、新聞や週刊誌などを見ていても、この問題を取り扱った記事を、あまり見かけなくなりましたが、先日久しぶりに興味深い記事を見かけました。

それは2,000万円の老後資金を貯められないのは、自己責任なのか否かをテーマにした、かなり社会派の記事です。

金融庁の報告書を読んでみると、世帯主が65歳〜69歳の金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯が2,252万円になっているため、報告書の目標額をクリアーしている世帯は、意外に多いのです。

そうなると2,000万円の老後資金を貯められないのは、自己責任の面もあるのではないかという疑問が生じるため、上記のような記事が書かれたのだと思います。

自己責任というと約3年間に渡って拘束されていた、フリージャーナリストの安田純平さんが、武装組織から開放され、帰国した時の事を思い出します。

この時の世間の反応としては、安田さんの帰国を祝福する声より、安田さんを批判する声の方が、遥かに多かったという印象があります。

その批判の代表的なものとしては、「安田さんは自らの意思で、危険な地域に行ったのだから、拘束されたのは自己責任だ。だから政府が税金で助けるのはおかしい」というものです。

もし2,000万円の老後資金を貯められないのが、自己責任だとしたら、安田さんの時と同じように、税金で助ける必要はないという話になりますが、そんな主張はあまり聞いた事がありません。

ですから「老後資金を貯められないのは自己責任ではない、だから政府は税金で助けるべきだ」と思っている方が、多いのではないかと思います。

政府が老後資金を貯められない方を助ける場合、主に二つの方法があると思います。

そのひとつは年金受給額を引き上げする、またはマクロ経済スライドによる年金の減額を止める事です。

公的年金は原則として、賃金や物価の変動率を元に、新年度が始まる4月から金額を改定します。

このマクロ経済スライドとは、賃金や物価の変動率から、現役人口の減少や平均余命の伸びを元に算出した「スライド調整率」を控除して、年金を減額するというものです。

なお平成27年(2015年)度に、マクロ経済スライドが初めて発動した時のスライド調整率は0.9%だったため、この分だけ年金額が少なくなったのです。

政府が老後資金を貯められない方を助ける、もうひとつの方法としては、老齢基礎年金などの「基礎年金」を受給できる、一定の低所得者を対象にした、月額5,000円程度の「年金生活者支援給付金」を拡充し、対象者や金額を増やす事だと思います。

この年金生活者支援給付金は民主党政権時代に、支給する事が決定したのですが、消費税率の引き上げ分を財源にするつもりだったため、支給開始が先延ばしされてきました。

しかし令和元年(2019年)10月から、消費税率が8%から10%に引き上げされる予定なので、年金生活者支援給付金の支給が始まると思います。

このように政府が老後資金を貯められない方を助ける場合、年金受給額を増やす、またはマクロ経済スライドによる年金の減額を止めるという方法と、年金生活者支援給付金を拡充するという方法があります。

もし前者を実施する場合には、国民年金や厚生年金保険の保険料を、現在より引き上げする必要があります。

そのように考える理由として、マクロ経済スライドによる年金の減額が導入されたのは、現役世代の保険料の上昇を抑えるためだったからです。

また後者を実施する場合には、消費税率を現在より引き上げする必要があります。

いずれについても更なる国民の負担増になるため、2,000万円の老後資金を貯められないのは自己責任だから、政府は助ける必要はないという事にして、保険料や消費税率の引き上げを、止めてもらった方が良いと思うのです。

おそらく政府としても、iDeCo、一般NISA、つみたてNISAなどの、税制優遇の大きい制度を用意しておくので、年金だけで足りない分は、自己責任で何とかして下さいという立場だと思います。

これに素直に乗っかり、3つの制度のいずれかで、老後資金を貯めれば良いのですから、外貨建て保険などを推してくる金融機関の勧誘は、相手にする必要はありません。

また自己責任という覚悟で、コツコツと努力を続けても、十分な老後資金を貯められない場合があります。

そういった事態に備えて、生活保護について勉強しておくと、精神的な安定を維持できると思うのです。
posted by FPきむ at 20:39 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする