2017年06月21日

平成29年(2017年)の年末調整において変更が予定されている点

第193回の通常国会は、加計学園問題などに対する野党からの追及を逃れるため、与党は会期を延長しなかったので、当初の予定通りに、平成29年(2017年)6月18日に終了しました。

これまでに実施された法改正を元にして、平成29年(2017年)の年末調整において変更が予定されている点を考えてみると、主に次のようなものがあると思います。

(1)給与所得控除の上限額の引き下げ
会社員(正社員、派遣社員、パートやアルバイトなど)の方が納付する所得税は、次のような手順を経て算出されます。

・1月から12月に支払われる給与の合計額−給与所得控除=給与所得

・給与所得−所得控除(配偶者控除や扶養控除など)=課税所得

・課税所得×所得税の税率=所得税

・所得税−税額控除(住宅ローン控除など)=最終的に納付する所得税

このうちの「給与所得控除」は、会社員の必要経費とされており、その金額は平成28年(2016年)までは、次のような金額になっておりました。

■1月から12月に支払われる給与の合計額→給与所得控除
・180万円以下 →年収×40%(最低65万円)
・180万円を超え360万円以下→年収×30%+18万円
・360万円を超え660万円以下→年収×20%+54万円
・660万円を超え1,000万円以下→年収×10%+120万円
・1,000万円を超え1,200万円以下→年収×5%+170万円
・1,200万円超→230万円

しかし平成29年(2017年)以降については、「1,000万円を超え1,200万円以下→年収×5%+170万円」と「1,200万円超→230万円」がなくなり、上限額が「1,000万円超→220万円」に変わります。

なお給与計算の仕事をしている方については、今年の初めに給与計算ソフトなどの給与所得控除の金額を変更して、源泉徴収事務を行っているはずなので、すでにご存知かと思います。

(2)住宅の再取得等に係る住宅ローン減税の特例の創設
災害により住宅ローン控除の対象となる住宅を、居住の用に供する事ができなくなった場合、被災した年については控除を受けられますが、翌年以降は控除を受けられなくなります。

しかし法改正が実施されため、被災した年の翌年以降も、住宅ローン控除の残存期間について、引き続き控除を受けられます。

この改正は住宅ローン控除の対象となる住宅を、平成28年(2016年)1月以降に発生した災害により、居住の用に供する事ができなくなった方の、平成29年(2017年)分以降の所得税に適用されます。

ただ次のいずれかに該当した場合、引き続き控除を受けられるのは、それに該当した年までになるので、この点には注意が必要です。

【被災した住宅やその敷地、被災後に新たに建築した住宅などを、事業、賃貸、親族などに対する無償の貸付の、いずれかに利用した場合】

注:被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内ある住宅が、災害により居住の用に供する事ができなくなったため、被災後に新たな住宅を建築して、住宅ローン控除を受けている場合などは例外となり、引き続き控除を受けられます。

【被災した住宅やその敷地を譲渡し、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算」及び「繰越控除又は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用を受ける場合】

【被災後に新たな住宅を取得し、その住宅について、住宅ローン控除を受けるようになった場合】

注:被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内ある住宅が、災害により居住の用に供する事ができなくなったため、被災後に新たな住宅を取得し、住宅ローン控除を受けるようになった場合は例外となり、新旧の住宅ローン控除を重複して受けられます。

(3)配偶者控除と配偶者特別控除に関する年収の変更
例えば妻が年収を「103万円以内」に抑えていると、その夫は38万円の配偶者控除を受けられますが、これが「150万円以内」に引き上げされます。

ただ次のように夫の収入によって、配偶者控除の金額が変わる、つまり一律に38万円ではなくなり、夫の年収が1,220万円(所得:1,000万円)を超える場合には、配偶者控除を受けられなくなります。

・夫の年収が1,120万円(所得:900万円)以下→38万円

・夫の年収が1,120万円(所得:900万円)を超え、1,170万円(所得:950万円)以下→28万円

・夫の年収が1,170万円(所得:950万円)を超え、1,220万円(所得:1,000万円)以下→13万円

・夫の年収が1,220万円(所得:1,000万円)を超える→配偶者控除を受けられない

この改正は平成30年(2018年)以降の所得税から適用されるので、今年の年末調整にはまだ関係がありません。

ただ年末調整の前にはお勤めの会社から、来年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が配布されると思うので、是非とも覚えておきたいところです。

なお妻の年収が150万円を超えても、201万円(現在は141万円)以下の場合には、夫の年収が1,220万円(所得:1,000万円)以下あれば、「配偶者特別控除」を受けられる場合があります。

そのため社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する年収の「106万円」だけでなく、150万円や201万円も覚えておきたいところです。
posted by FPきむ at 20:19 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月08日

老後資金と借金返済に充てられる外貨投資は、プロより素人が優位になる

平成29年(2017年)5月17日の毎日新聞を読んでいたら、外貨建て資産:増加、50兆円超 国内の超低金利嫌いと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『家計が保有する外貨建ての金融資産が増加している。2016年12月末の残高は前年末比3%増の50兆6000億円となり、15年6月末以来1年半ぶりに50兆円を超えた。

米大統領選後の世界的な景気回復期待に加え、国内の超低金利を嫌って利回りの良い海外資産にお金が向かっていることが背景にあるとみられる。

為替リスクを恐れて国内にとどまっていた家計資金の海外シフトが本格化するか、注目される。

日銀が四半期ごとに公表する資金循環統計を基に大和総研が推計した。16年12月末の外貨建て資産の内訳は、投資信託約28兆7000億円▽外国株式や外国債券などの対外証券投資約16兆5000億円▽外貨預金約5兆4000億円−−だった』

『最大の原動力が、個人の投資心理を反映しやすいとされる外国株式や債券などの対外証券投資の増加だ。

16年前半は売却や償還額が新規投資額を上回っていたが、16年9月末に流入超に転じ、年間では約1兆円増加した。

昨年11月の米大統領選で大規模減税や投資を掲げるトランプ大統領が勝利したことで世界経済の成長期待が高まり、海外金融商品にお金が流れ込んだ』

以上のようになりますが、要するに米大統領選後の世界的な景気回復期待や、国内の超低金利を背景に、外貨投資をする方が、増加しているというお話です。

また外貨投資の中で特に増加しているのは、「外国株式や債券などの対外証券投資」であり、債券であれば初心者でも始めやすいと思います。

そういえば「家計」という投資の素人だけでなく、「機関投資家」(銀行や生命保険会社など)という投資のプロも、同じような背景により、外貨投資を増加させているようです。

素人かプロかを問わず、外貨投資の難しさは、この記事に記載されているように、「為替リスク」だと思います。

例えば「1米ドル=100円」の時に米ドルを買って、それを日本円に戻す時に「1米ドル=90円」になっていた場合には、10円の為替差損が発生します。

これが為替リスクになりますが、逆に「1米ドル=110円」になっていた場合には、10円の為替差益が発生しますので、為替レートが変動するという事は、ピンチにもチャンスにもなるのです。

また近年の為替レートを見てみると、「1米ドル=80円〜120円」くらいの範囲を、一定の周期で行ったり来たりしております。

ですから「1米ドル=90円」の時に、日本円に戻すのは止めて、「1米ドル=100円」になるのを待てば、為替差損は発生しないのです。

素人がすぐに使う予定のない資金で、米ドルを買っている場合には、このように待ち続ける事が可能です。

また待ち続けている間に、金利が付いていきますので、為替差損は少しずつ減っていきます。

しかしプロの場合は一定期間ごとに決算があり、その時点での運用成果が評価されるので、為替差損が発生しなくなるまで、待ち続けるという訳にはいきません。

こういった意味において外貨投資は、プロより素人の方が優位な面があるのです。

またプロは為替差益に対して、法人税が課税されますが、素人はNISAや個人型の確定拠出年金を活用すると、商品によっては所得税や住民税が課税されないので、こういった面でも素人が優位になります。

ですから外貨投資は老後資金の準備に活用できるのですが、平成29年(2017年)6月3日の投信1の、財政赤字は巨額でも、日本の財政は破綻しないという記事を読んでいたら、次のような全く違う分野での活用法が掲載されておりました。

『政府が破産するという噂が広がれば、誰もそんな国の通貨は持ちたくありませんから、外貨が高騰するでしょう。

日本政府は巨額の外貨準備を持っていますから、これを高値で市場に売却し、巨額の売却益を稼ぐことができるわけです。

その利益を用いて、暴落している日本国債を買い戻せば、一気に債務残高は減るでしょう。

「倒産するという噂が流れることで、財務状態が改善し、倒産の確率が下がる」という何とも不思議な恵まれた立場に日本政府は立っているのです』

以上のようになりますが、個人においても外貨建て資産を保有していれば、政府が破産するという噂によって、それが高騰しますので、売却すれば住宅ローンなどの借金の返済に充てられます。

政府が破産するという噂は、多くの日本国民にとってピンチですが、外貨建て資産を保有している方にとっては、チャンスにもなりますので、すぐに使う予定のない資金については、外貨投資を検討してみるべきだと思います。
posted by FPきむ at 20:39 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする