2017年04月06日

妻以外を対象とする遺族補償年金の年齢制限を、最高裁が合憲と判断へ

平成29年(2017年)3月22日の毎日新聞を読んでいたら、男女格差は「合憲」 夫のみに年齢制限 最高裁初判断と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『遺族補償年金の受給要件に、妻以外の遺族に対して年齢制限を設けた地方公務員災害補償法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は21日、規定は合憲とする初判断を示した。

小法廷は「妻が置かれている社会的状況に鑑み、規定が合理的な理由を欠くとは言えない」と指摘。「性差別に基づく規定で違憲」と主張した原告側の上告を棄却した。

裁判官5人全員一致の意見。同法は年金の受給要件について、夫が死亡した場合は妻に年齢制限を設けていない一方で、妻が死亡した場合は死亡時点で夫が55歳以上と規定している。

規定を違憲とした1審・大阪地裁判決を取り消し、合憲とした2審・大阪高裁判決が確定した。

高裁判決は「労働者に占める非正規雇用の割合が女性は男性の3倍近い」「女性の平均賃金は男性の約6割以下」などの状況を示し、「妻を亡くした夫が独力で生計を維持できなくなる可能性は、夫を亡くした妻に比べ著しく低い」との判断を示していた。

小法廷は、男女間の労働力人口の割合や、男性の平均賃金が女性より高いことなどを考慮。「死亡した職員の夫に一定年齢に達していることを受給要件とする部分は憲法に反しない」と結論付けた。

原告の堺市の男性(70)は1998年に中学教諭の妻(当時51歳)を自殺で亡くし、2010年に公務災害と認定された。男性は妻の死亡時に51歳だったため、年金支給は認められなかった』

以上のようになりますが、地方公務員災害補償法の第三十二条第1項を読むと、遺族補償年金を受給できる遺族は、次のようになっているとわかります。

■第三十二条第1項(遺族補償年金)
『遺族補償年金を受けることができる遺族は、職員の配偶者(婚姻の届出をしていないが、職員の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、職員の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたものとする。

ただし、妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。次条において同じ。)以外の者にあつては、職員の死亡の当時次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。

一  夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、六十歳以上であること。

注:地方公務員災害補償法の附則抄を読むと、妻が公務または通勤に起因して死亡した場合、「平成二年十月一日から当分の間」は、妻の死亡時に夫が55歳以上60歳未満であれば、夫は遺族補償年金の受給権を取得できるという、特例措置について記載されております。

二  子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあること。

三  兄弟姉妹については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあること又は六十歳以上であること。

四  前三号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、総務省令で定める障害の状態にあること』

以上のようになりますが、これを読むと地方公務員である夫が死亡した場合には、夫の死亡時に妻が何歳であっても、他の要件を満たせば、妻は遺族補償年金を受給できる事がわかります。

しかし地方公務員である妻が死亡した場合には、妻の死亡時に夫が60歳以上(公務や通勤の場合は55歳以上)でないと、夫は遺族補償年金を受給できないのです。

このような妻以外の遺族に対する年齢制限は、地方公務員災害補償制度だけでなく、会社員などが加入する労災保険や厚生年金保険、国家公務員災害補償制度の中にもあります。

そのためこれが違憲とされると、他の制度にも変化をもたらすと考えていたのですが、最高裁は合憲と判断しました。

個人的には違憲と判断されると予想していたので、とても残念に思うと同時に、次のような考え方が頭の中に浮かんできました。

(1)年金制度内の格差を生む
国民年金の中にも男女格差はありましたが、8月14日のブログに記載しましたように、平成26年(2014年)4月から、「子のある妻」の他に「子のある夫」も、遺族基礎年金を受給できるようになり、男女格差は原則として解消されているのです。

今回の判決はこういった時代の流れに反すると共とに、年金制度内の格差を生むのではないかと思いました。

(2)遺族厚生年金を5年の有期年金にしたのは問題がある
平成19年(2007年)4月より、夫が死亡した時に妻が30歳未満で、かつ子供がいない場合は、妻は5年間しか遺族厚生年金を受給できなくなりました。

これ以前は失権事由(例えば再婚)に該当しない限り、生涯に渡って遺族厚生年金を受給できたので、かなり大きな違いです。

今回の判決のように、女性は男性より収入が低いため、夫が死亡した後に妻は、独力で生計を維持できなくなる可能性が高いと考えるなら、子供がいない30歳未満の妻の遺族厚生年金を、5年の有期年金にしたのは、問題があると思いました。

(3)同姓のパートナーが遺族年金を受給できる時代は当面は来ない
地方公務員災害補償法の第三十二条第1項には、「婚姻の届出をしていないが、職員の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む」と記載されており、内縁の配偶者であっても、遺族補償年金を受給できる事がわかります。

このような規定は地方公務員災害補償制度だけでなく、会社員などが加入する労災保険や厚生年金保険、国家公務員災害補償制度の中にもあります。

いずれはこの規定が拡大され、同姓のパートナーでも各種の遺族年金を受給できる時代が、やってくると思っておりました。

しかしこの判決を見ると、最高裁はかなり保守的だとわかり、このような時代がやってくるのは、まだまだ先のような気がしました。
posted by FPきむ at 20:12 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする