2020年01月19日

高年齢雇用継続給付は廃止しないで、65歳以降に引き上げした方が良い

令和元年(2019年)12月20日の毎日新聞を読んでいたら、高年齢雇用給付、25年度から段階的廃止へ 厚労省方針と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『高齢者が定年後も継続して働き続ける場合に賃金の目減り分の一部を補う「高年齢雇用継続給付」について、厚生労働省は20日、現行の給付水準を2025年度に60歳を迎える人から半減し、その後段階的に廃止する方針を示した。

労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会で明らかにした。来年の通常国会に雇用保険法改正案の提出を目指す。

高齢者雇用を促進する目的で1995年に創設された同給付は、継続して働く60〜64歳の賃金が、60歳時点と比べ75%未満の場合に原則として月給の最大15%が雇用保険から支給される仕組み。

厚労省は、65歳までの継続雇用が25年度から完全義務化されるのに合わせ、給付率を半減し、段階的縮小にかじを切る。

各企業が賃金水準の確保に努めるべきだと判断した。見直しにあたっては、積極的に高齢の働き手の処遇改善に取り組む企業に対し、助成金を支給するなど支援策も併せて検討するとした』

以上のようになりますが、この記事は高年齢雇用継続給付を廃止する案について、紹介したものになります。

高年齢雇用継続給付とは60歳以上65歳未満の各月の賃金が、60歳に到達した時点の賃金と比較して、61%以下に低下した時に、各月の賃金の15%程度が、雇用保険から支給されるというものです。

なお61%超75%未満に低下した場合にも、高年齢雇用継続給付は支給されますが、支給率は15%から一定の割合で逓減していき、75%以上になると支給されなくなります。

このような特徴のある高年齢雇用継続給付ですが、次のような2種類に分かれております。

(A)高年齢雇用継続基本給付金
60歳で定年退職を迎えた後に、雇用保険の基本手当を受給しないで、同じ会社に再雇用された方などに支給されます。

ただ「再雇用後も雇用保険に加入する」、「雇用保険の加入期間が5年以上ある」などの、支給要件を満たす必要があります。

また高年齢雇用継続基本給付金は、賃金の低下が続く場合、60歳から65歳までの5年間に渡って支給されるため、年金と同じように生活費の支えになるのです。

(B)高年齢再就職給付金
60歳で定年退職を迎えた後に、雇用保険の基本手当を受給したけれども、これの支給残日数を100日以上残して、別の会社に再就職した方などに支給されます。

ただ「1年以上雇用されるのが確実である」、「再就職後も雇用保険に加入する」、「基本手当の算定基礎期間が5年以上ある」、「再就職手当を受給していない」などの、支給要件を満たす必要があります。

また(A)の高年齢雇用継続基本給付金は、最長で5年に渡って支給されますが、高年齢再就職給付金は次のように、基本手当の支給残日数によって、支給日数が変わってくるのです。

【基本手当の支給残日数が100日以上200日未満】
再就職した日の翌日から起算して、1年を経過する日の属する月まで

【基本手当の支給残日数が200日以上】
再就職した日の翌日から起算して、2年を経過する日の属する月まで

以上のようになりますが、高年齢雇用継続給付を廃止するという案に対して、疑問を感じる点がいくつかあります。

近年は景気回復や少子高齢化による人手不足で、失業率が継続的に低下しているため、雇用保険の基本手当を受給する方が減っております。

そのため雇用保険の積立金は、平成27年(2015年)3月末に、過去最大の6兆4,260億円に達しました。

またこういった状況を受けて、現在は雇用保険の保険料率を、過去最低の水準に下げているのです。

これだけ雇用保険の財政に余裕があるのに、高年齢雇用継続給付を廃止する必要があるのでしょうか?

冒頭の記事を読んでみると、令和7年(2025年)度から65歳までの継続雇用が、義務化されると記載されております。

そうなると65歳までの雇用が保障されますが、賃金まで保障されるとは限りません。

実際のところ60歳で定年退職を迎えた後に、契約社員などで再雇用された方の賃金は、60歳前と比較すると、5割から7割程度に低下している場合が多いのです。

こういった状況の改善を企業の自主性に委ねたまま、高年齢雇用継続給付を廃止しても良いのでしょうか?

ところで大企業は令和2年(2020年)4月から、中小企業は令和3年(2021年)4月から、「同一労働同一賃金」(同一の仕事をする方には、その雇用形態にかかわらず、同一水準の賃金を支払うというルール)が導入されます。

そのため定年退職を迎えた後に、契約社員などで再雇用された方が、60歳以降に勤務先から受け取る賃金は、改善されていくと思います。

ただ同一労働同一賃金を守らなくても罰則が科せられないため、どのくらい改善されるのかは未知数です。

特に体力や気力などが衰えてくる65歳以降は、更に未知数ではないかと思うのです。

また平成29年(2017年)から、65歳以降に新たに雇用された方も、雇用保険に加入するようになったため、保険料の負担に応じた保険給付を、受け取れるようにすべきです。

このように考えていくと、高年齢雇用継続給付を廃止するのではなく、これの支給対象になる年齢を、現在の60歳〜64歳から、65歳〜70歳に引き上げするのが、ベストではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:21 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月02日

過去も未来も国民年金を救うため、もの言えぬ厚生年金保険が犠牲になる

令和元年(2019年)12月11日の朝日新聞を読んでいたら、国民・厚生年金の積立金、国が統合検討 支給額減に備えと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、いまは別々に管理している国民年金と厚生年金の積立金の統合を検討している。相対的に財政が安定している厚生年金の積立金を活用し、将来の年金水準が大きく下がる国民年金の底上げを図るのが狙い。

ただ、制度の独立性に関わるため丁寧な議論が必要で、2025年の国会への法案提出を目指す。

政府は来年の通常国会に、厚生年金のパートらへの適用拡大などの年金改革法案を提出する方針。成立後の来年夏以降、積立金の統合について、厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な検討を始める予定だ』

以上のようになりますが、次のような2種類の公的年金は原則として、現役世代から集めた保険料を、その時点の年金受給者に年金として配分する、「賦課方式」という仕組みで運営されているのです。

国民年金:自営業者、フリーラス、学生、失業者などが主に加入している
厚生年金保険:会社員や公務員などが主に加入している

ただ税金も投入されており、例えば原則65歳になると、国民年金から支給される老齢基礎年金の2分の1は、税金で賄われております。

ですから国民年金に加入する必要のある、20歳から60歳までの40年間に渡って、例えば保険料の全額免除を受け、1円も保険料を納付しなかった場合でも、満額の2分の1の老齢基礎年金を受給できるのです。

また人口構成が若かった時代に貯めていた積立金も、年金受給者に配分しております。

そのため公的年金は「現役世代から集めた保険料」、「税金」、「積立金」の3つを、主な財源にしているのです。

ところで5年に1度のペースで厚生労働省は、公的年金の定期健診にあたる財政検証を実施しており、最新版は令和元年(2019年)に実施されたものになります。

この財政検証では経済成長や労働参加のデータを変えて、6つのシナリオを示しているのですが、もっとも経済成長や労働参加が進まないケースでは、国民年金の積立金が、あと30年くらいで枯渇すると試算されました。

もしこれが現実になれば、積立金は配分できなくなるため、保険料を引き上げする、税金の割合を増やす、年金の支給額を減らすの、いずれかを選択する必要があるのですが、保険料を引き上げするのはもっとも難しいと思います。

その理由として国民年金の保険料は、平成29年(2017年)4月までという期限を定めて、平成17年(2005年)4月から、毎年280円ずつ引き上げしてきたので、更に引き上げを実施すれば、国民から反発を受けるからです。

また税金の割合を増やすために、例えば消費税率の引き上げを実施すれば、保険料の引き上げよりも、国民から反発を受けると思います。

そうなると年金の支給額を減らすしかないのですが、金額が大きくなると国民の生活が苦しくなります。

そこで厚生労働省は冒頭で紹介した記事に記載されているように、別々に管理している国民年金と厚生年金保険の積立金を統合して、国民年金の積立金が枯渇しないようにしたのです。

厚生年金保険の保険料を負担している会社員や公務員からすると、納得できない気持ちになるかもしれません。

しかし厚生年金保険の保険料は、給与から強制的に徴収されており、会社員や公務員は物言えぬ立場のため、納得できないからといって、納付を拒否する事はできないのです。

日本の公的年金の歴史を振り返ってみると、こういった事は以前にもあったと思います。

例えば昭和61年(1986年)3月まで厚生年金保険の加入者は、年齢にかかわらず、厚生年金保険だけに加入しておりました。

しかし昭和61年(1986年)4月から、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入者は、厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入するようになったのです。

これを受けて厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われるようになりました。

また厚生年金保険の加入者は原則65歳になると、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金だけなく、国民年金から支給される老齢基礎年金も受給できるようになりました。

何だかお得なような感じがするのですが、損をするようになったと捉える事もできます。

その理由として厚生年金保険の加入者が、国民年金の加入者になった後は、国民年金の保険料の未納などによって生じる、財政の不安定さを解消するために、厚生年金保険の保険料が使われるようになったからです。

つまり厚生年金保険の加入者から徴収した保険料で、財政が不安定な国民年金を救ったのです。

厚生年金保険の保険料を負担している会社員や公務員は、納得できないかもしれませんが、給与から強制的に保険料が徴収されているという、もの言えぬ立場のため、納付を拒否する事はできません。

こういった仕組みに納得できない方は、厚生年金保険に加入しない自営業者やフリーランスなどとして、働くしかないと思います。

また国民年金の加入者は、困ったら厚生年金保険の加入者に助けてもらえるという、恵まれた立場にあるため、国民年金の保険料の納付を拒否して、その恵まれた立場を放棄するのは、非常にもったいないと思います。
posted by FPきむ at 20:39 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする