2020年10月19日

菅総理の要請で携帯料金が値下げされると、年金に悪い影響があるのか?

令和2年(2020年)10月17日のミレモを読んでいたら、菅政権の携帯料金値引き要請、もし実現したら起こる怖いことと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『もし携帯電話会社の業績を犠牲にしてよいということであれば、料金の引き下げは可能です。

仮に4割の値下げが実現すると、日本全体で2.5兆円ほどの金額が家計に戻ってきますが、これは消費税を1%引き下げたことと同じレベルの効果です。

しかしながら、携帯電話会社の収益はその分だけ減ってしまいますから、誰かがこれを負担しなければなりません。

携帯電話最大手のNTTドコモはNTTの子会社ですが、NTTは約4兆円を投じてドコモを完全子会社にして自社と一体化する決断を行いました。

これでドコモとNTTのお財布は一緒になりますから、グループ全体で値下げの負担を負うことになるでしょう。

NTTグループとしては、携帯電話の収益が悪化した分をそのまま損失にするわけにはいかないので、固定電話など別のサービスで利益を確保するかもしれません。

その場合には、携帯電話以外のサービス値上げによって結局は利用者が負担することになります。

仮にこうした措置を行わなかった場合、NTTグループの業績は悪化しますから、株価が下がります。昔であれば、株式に投資している投資家が損をするだけでしたが、今は違います。

安倍政権は私たちの公的年金について安全性優先の債券投資からリスクの高い株式運用に切り換えました。つまり有力企業の株価が下がると、私たちの年金に悪影響が及ぶのです。

携帯電話の値下げをどこにも転嫁できない場合、最終的には私たちの年金がその分を負担する結果となるかもしれません』

以上のようになりますが、この記事は菅総理の要請で、携帯料金の値下げが実現した場合、どのような影響があるのかについて解説しております。

この中の携帯電話の収益が悪化した場合、NTTは固定電話などの別のサービスで利益を確保するという部分は、とても納得できました。

しかしその後に記載されている、NTTの株価が下がると、年金に悪い影響があるという部分は、あまり納得できなかったのです。

日本の公的年金は原則として、現役世代から徴収した保険料を、その時点の年金受給者に年金として配分する、「賦課方式」で運営されております。

例えるなら現役世代が、親世代や祖父母世代に対して、国を通じて仕送りしているような感じです。

ただ現役世代から徴収した保険料に加えて、国庫負担(消費税などの税金の投入)もあります。

またGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって、国内外の株式や債券などで運用されている積立金を、少しずつ取り崩して、年金の財源にしているのです。

政府が作成している資料を見てみると、公的年金の財源の比率は、次のようになっております。

・現役世代から徴収した保険料:約7割
・国庫負担(消費税などの税金の投入):約2割
・積立金の取り崩し:約1割

このように大部分は現役世代から徴収した保険料であり、積立金の取り崩しは僅かなのです。

またNTT、KDDI、ソフトバンクなどの携帯電話会社の株式は、GPIFが保有する国内外の株式の、ごく一部にすぎないのです。

しかも平成13年(2001年)度から、令和2年(2020年)度第1四半期までの、GPIFの通算での運用成績は次のように、プラスを維持しております。

・収益率:+2.97%(年率)
・収益額:+70.0兆円(累積)

こういったデータから考えると、携帯電話会社の株価が下がった場合、年金に悪い影響があるというのは、かなりオーバーな話だと思います。

個人的には携帯料金が値下げされると、年金に対しては悪い影響より、良い影響があると考えております。

冒頭で紹介した記事には、「仮に4割の値下げが実現すると、日本全体で2.5兆円ほどの金額が家計に戻ってきますが、これは消費税を1%引き下げたことと同じレベルの効果です」と記載されております。

これが事実だとしたら、家計にゆとりが出来た分だけ、個人消費が伸びる可能性があります。

そうすると小売業、飲食業、食品業などを営む会社の株価が上昇して、GPIFの運用成績を良くするため、年金に対して良い影響があるのです。

また家計にゆとりができると、NISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)などを利用して、老後資金の準備をする方が、現在より増えるかもしれません。

これらの制度をすでに利用している方は、家計にゆとりが出来た分だけ、投資金額を増やすかもしれません。

その結果として個人投資家の資金の一部が、国内外の株式に流入すると、株価を引き上げる効果があります。

このようにして株価が上がれば、GPIFの運用成績が良くなるため、年金に対しては良い影響があるのです。

また記事の中に記載されている予想が当たり、年金に悪い影響があったとしても、NISAやiDeCoを通じて老後資金を準備していれば、影響を小さくできるのです。
posted by FPきむ at 20:53 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月02日

持続可能性が低いと思う社会保障は、現在は年金より健康保険と雇用保険



令和2年(2020年)8月19日の共同通信を読んでいたら、社会保障「持続できる」は4% 民間調査、多くは現状に悲観的と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『現行の社会保障制度が「30年以上持続可能」と考える人はわずか4%にとどまることが、民間調査で分かった。

政府は、制度の維持を目指して全世代型社会保障改革を進める考えだが、現状を悲観的にとらえている人が多いことが明らかになった。「持続できない」と答えた人は42%、「分からない」が54%だった。

改革を進めるべき分野(複数回答)は「年金」が46%で最も多く、「医療保険」「子育て・教育支援の充実」がともに29%で続いた。

年代別でみると20〜30代の女性では「子育て・教育」が半数超で最多だった。調査はパソナ総合研究所(東京)が2月、約1300人を対象に実施した』

以上のようになりますが、現行の社会保障制度が30年以上持続可能と考える方は、わずか4%しかいないようです。

また改革を進めるべき分野は、「年金」が最も多く、その後に「医療保険」や「子育て・教育支援の充実」が続いております。

こういった結果から推測すると、健康保険より年金の方が、持続可能性が低いと思われているようです。

本当はどちらなのかを考えていたら、「年金問題」は嘘ばかり(著:橋洋一)に記載されていた、次のような文章を思い出しました。

『皆さんは、同じ公的保険制度で比べた場合、「年金制度」と「健康保険制度」とでは、どちらが難しいと思われるでしょうか。結論をいえば、「健康保険制度」のほうが、はるかに難しい問題を抱えています。

年金の場合は、多くのことが予測可能であり、それをもとに年金数理で計算できます。

人口減少の問題にしても、戦争や自然災害などが起こらないかぎり、10年後、20年後の人口はほぼほぼ予測可能です。予測可能なことに対しては、計算ができます。

一方、健康保険の場合は、予測が難しい面があります。10年後、20年後に総額でどのくらい医療費が必要になるのかを簡単に予測できません。

どんな病気が増えるかわかりませんし、さらには、その治療費にどのくらいかかるかも予測できません。

医療はどんどん進歩し、すばらしい治療法、薬が開発されます。それらはものすごく高額になる可能性があります』

以上のようになりますが、この文章は個人的には、次のように解釈できると思います。

■年金制度
人口の推移は予測しやすい→65歳以上の人口の推移を予測できれば、将来に支払う年金総額を予測できる→将来に支払う年金総額を予測できれば、事前に対策を立てられる→制度を維持しやすい

■健康保険制度
将来にどんな病気が増えるのかを、予測するのは難しい→将来の医療費総額を、予測するのは難しい→事前に対策を立てにくい→制度を維持するのが難しい

今年に新型コロナウイルスが大流行する事は、おそらく誰も予測していなかったと思います。

またいずれワクチンが開発され、新型コロナウイルスは沈静化していくと予測されますが、それを使うために、どのくらいの医療費がかかるのかを予測するのは、現時点ではかなり難しいうえに、高額になる可能性があるのです。

こういった予測できない事に対しては上記のように、事前に対策を立てにくいのです。

そうなると制度を維持するのが難しいため、健康保険は年金より、持続可能性が低い社会保障だと思います。

新型コロナウイルスの影響で、持続可能性が低下している社会保障がもうひとつあり、それは雇用保険です。

この理由としては、雇用保険の保険料や積立金を財源にしている、失業手当(基本手当など)や、助成金(雇用調整助成金など)の支給が、新型コロナウイルスが発生してから急激に増えました。

これにより雇用保険の積立金が、枯渇が懸念されるくらいに少なくなってきたからです。

近いうちに景気が回復して、雇用情勢が今より改善すれば、積立金の問題は自ずと解決していくと思います。

一方でコロナ不況が長引くようだと、雇用保険の持続可能性が、更に低下するかもしれないのです。
posted by FPきむ at 20:36 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする