2020年11月03日

介護保険で差し押さえが増えている原因は、「国民」ではなく「国民年金」



令和2年(2020年)10月11日の朝日新聞を読んでいたら、介護保険料滞納、差し押さえ最多 65歳以上、約2万人と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『介護保険料を滞納して、預貯金や不動産といった資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が増えている。

2018年度は過去最多の1万9221人にのぼったことが、厚生労働省の調査でわかった。65歳以上の保険料が介護保険制度が始まった00年度から約2倍に上昇していることも影響したとみられる。

調査は全国1741市区町村が対象。差し押さえ処分を受けた人は14年度に初めて1万人を超え、前年の17年度は1万5998人だった。

介護保険に加入している65歳以上の人は、18年度末で3525万人いる。このうち9割は年金から介護保険料を天引きされているが、残り1割は年金額が年18万円未満で、保険料を納付書や口座振替で支払っている。

生活保護を受ける人は、生活保護費に介護保険料が加算されて支給される。差し押さえを受ける人は、生活保護は受けていないが、受け取る年金がわずかで保険料を払えなくなった人が多いとみられる。

保険料は40歳から支払うが、未収の保険料は65歳以上の分だけで約236億円(18年度)にのぼる。65歳以上の介護保険料は3年に1度見直されるが、高齢化で介護保険の利用者が増えるのに伴って保険料の上昇が続く。

00年度は全国平均で月額2911円だったのが、15年度には5514円、18年度からは5869円になった。団塊の世代がすべて75歳以上になる25年度には7200円程度になると見込まれている』

以上のようになりますが、この記事の中に記載されているように、65歳以上の9割くらいは、受給している年金から、介護保険の保険料が天引きされております。

この理由として年金額が年18万円以上ある場合には、年金から介護保険の保険料を天引きするという、ルールになっているからです。

もし年金額が年18万円の場合、1ヶ月分は1万5,000円になるため、かなりの少額です。

こんなに少ない年金からも、介護保険の保険料を天引きするだけでなく、75歳以上の場合には、後期高齢者医療の保険料も天引きするのですから、ひどい話ではないかと思います。

またこれより少ない年金をもらっている方の、預貯金や不動産などの資産を差し押さえして、介護保険の保険料を強制徴収しているのですから、更にひどい話だと思います。

ただ年金額が年18万円未満の方は、年金だけでは生活費を賄えないため、年齢によっては預貯金などの資産を、かなり取り崩していると考えられます。

ですから資産を差し押さえしても、滞納していた介護保険の保険料を、すべて回収できない可能性があるのです。

そのうえ資産の差し押さえをするために、費用(税金)と時間をかけているのですから、年金額が年18万円未満という方の、資産を差し押さえするのは、かなりコスパが悪い行為だと思います。

こんな事を考えていたら、貧乏はお金持ち(著:橘玲)という本に記載されていた、次のような文章を思い出したのです。

『ここで、法人を設立すれば強制的に社会保険に入らなければならないのではないかと疑問に思うひともいるかもしれない。

たしかに法律上は、役員一人のマイクロ法人でも社会保険の加入義務があるが、現実にはこの規定は有名無実と化しており、制度の趣旨に照らしても意味がない。

そもそも制度を監督する社会保険庁が、つい最近まで中小零細法人の社会保険への加入を拒絶してきた(私の知人も、法人設立時に社会保険事務所に相談に行ったところ、「儲かってひとを雇うようになったら来てください」と追い返された)。

法律を杓子定規に解釈してすべての法人を社会保険に加入させれば膨大な未納が発生し、その徴収コストで制度自体が崩壊してしまうことを知っているからだ』

以上のようになりますが、介護保険の保険料の滞納者が増え続けると、この中に記載されているように、徴収コストの増加で介護保険が、崩壊するかもしれません。

ところで介護保険で差し押さえが増えているのは、誰(何)が悪いのでしょうか?

個人的には介護保険の保険料の納付を滞納した方よりも、国民年金という制度が悪いと思うのです。

国民年金の保険料を20歳から60歳までの40年間に渡って、一度も未納なく納付すると、令和2年(2020年)度は年781,700円となる、満額の老齢基礎年金を、65歳から受給できます。

また老齢基礎年金の財源の2分の1は税金のため、20歳から60歳までの40年間に渡って全額免除を受け、保険料を全く納付しなかった場合でも、満額の2分の1となる年390,850円の老齢基礎年金を受給できます。

こういった知識をもっと国民に周知していれば、または申請がなくても自動的に免除になる仕組みを作れば、年金額が年18万円未満という方は、ほとんどいなくなるはずです。

そのため介護保険の保険料の納付を滞納した方よりも、国民年金という制度が悪いと思うのです。

また介護保険の保険料の滞納をなくしたいのなら、まずは国民年金を変えていく必要があるのです。
posted by FPきむ at 20:45 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月19日

菅総理の要請で携帯料金が値下げされると、年金に悪い影響があるのか?

令和2年(2020年)10月17日のミレモを読んでいたら、菅政権の携帯料金値引き要請、もし実現したら起こる怖いことと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『もし携帯電話会社の業績を犠牲にしてよいということであれば、料金の引き下げは可能です。

仮に4割の値下げが実現すると、日本全体で2.5兆円ほどの金額が家計に戻ってきますが、これは消費税を1%引き下げたことと同じレベルの効果です。

しかしながら、携帯電話会社の収益はその分だけ減ってしまいますから、誰かがこれを負担しなければなりません。

携帯電話最大手のNTTドコモはNTTの子会社ですが、NTTは約4兆円を投じてドコモを完全子会社にして自社と一体化する決断を行いました。

これでドコモとNTTのお財布は一緒になりますから、グループ全体で値下げの負担を負うことになるでしょう。

NTTグループとしては、携帯電話の収益が悪化した分をそのまま損失にするわけにはいかないので、固定電話など別のサービスで利益を確保するかもしれません。

その場合には、携帯電話以外のサービス値上げによって結局は利用者が負担することになります。

仮にこうした措置を行わなかった場合、NTTグループの業績は悪化しますから、株価が下がります。昔であれば、株式に投資している投資家が損をするだけでしたが、今は違います。

安倍政権は私たちの公的年金について安全性優先の債券投資からリスクの高い株式運用に切り換えました。つまり有力企業の株価が下がると、私たちの年金に悪影響が及ぶのです。

携帯電話の値下げをどこにも転嫁できない場合、最終的には私たちの年金がその分を負担する結果となるかもしれません』

以上のようになりますが、この記事は菅総理の要請で、携帯料金の値下げが実現した場合、どのような影響があるのかについて解説しております。

この中の携帯電話の収益が悪化した場合、NTTは固定電話などの別のサービスで利益を確保するという部分は、とても納得できました。

しかしその後に記載されている、NTTの株価が下がると、年金に悪い影響があるという部分は、あまり納得できなかったのです。

日本の公的年金は原則として、現役世代から徴収した保険料を、その時点の年金受給者に年金として配分する、「賦課方式」で運営されております。

例えるなら現役世代が、親世代や祖父母世代に対して、国を通じて仕送りしているような感じです。

ただ現役世代から徴収した保険料に加えて、国庫負担(消費税などの税金の投入)もあります。

またGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって、国内外の株式や債券などで運用されている積立金を、少しずつ取り崩して、年金の財源にしているのです。

政府が作成している資料を見てみると、公的年金の財源の比率は、次のようになっております。

・現役世代から徴収した保険料:約7割
・国庫負担(消費税などの税金の投入):約2割
・積立金の取り崩し:約1割

このように大部分は現役世代から徴収した保険料であり、積立金の取り崩しは僅かなのです。

またNTT、KDDI、ソフトバンクなどの携帯電話会社の株式は、GPIFが保有する国内外の株式の、ごく一部にすぎないのです。

しかも平成13年(2001年)度から、令和2年(2020年)度第1四半期までの、GPIFの通算での運用成績は次のように、プラスを維持しております。

・収益率:+2.97%(年率)
・収益額:+70.0兆円(累積)

こういったデータから考えると、携帯電話会社の株価が下がった場合、年金に悪い影響があるというのは、かなりオーバーな話だと思います。

個人的には携帯料金が値下げされると、年金に対しては悪い影響より、良い影響があると考えております。

冒頭で紹介した記事には、「仮に4割の値下げが実現すると、日本全体で2.5兆円ほどの金額が家計に戻ってきますが、これは消費税を1%引き下げたことと同じレベルの効果です」と記載されております。

これが事実だとしたら、家計にゆとりが出来た分だけ、個人消費が伸びる可能性があります。

そうすると小売業、飲食業、食品業などを営む会社の株価が上昇して、GPIFの運用成績を良くするため、年金に対して良い影響があるのです。

また家計にゆとりができると、NISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)などを利用して、老後資金の準備をする方が、現在より増えるかもしれません。

これらの制度をすでに利用している方は、家計にゆとりが出来た分だけ、投資金額を増やすかもしれません。

その結果として個人投資家の資金の一部が、国内外の株式に流入すると、株価を引き上げる効果があります。

このようにして株価が上がれば、GPIFの運用成績が良くなるため、年金に対しては良い影響があるのです。

また記事の中に記載されている予想が当たり、年金に悪い影響があったとしても、NISAやiDeCoを通じて老後資金を準備していれば、影響を小さくできるのです。
posted by FPきむ at 20:53 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする