2014年02月19日

厚生年金保険の通算老齢年金とは

公的年金はかつて、次のような3つの制度に分かれておりましたが、例えば「公務員→会社員→自営業」といった感じに転職した場合には、それぞれの年金制度に加入した期間が短くなります。

・国民年金(自営業者、フリーランスなど)
・厚生年金保険(会社員など)
・共済年金(公務員、私立学校の職員など)

その結果として、それぞれの年金制度が求める「受給資格期間」(6月27日のブログを参照)、要するに老齢年金を受給するために必要な加入期間を、満たせなくなる可能性があります。

注:現在の受給資格期間は原則25年ですが、昭和61年3月以前の旧法時代は原則20年でした(厚生年金保険に関しては、男子は40歳、女子は35歳から、15年以上の加入期間があれば、受給資格期間を満たすという特例がありました)。

そのため昭和36年4月に通算制度が導入され、公的年金の加入期間が通算できるようになりましたが、通算した結果として、それぞれの年金制度が求める受給資格期間を満たせば、それぞれの年金制度から通算老齢年金が支給されます。

ただ昭和61年4月から始まった新法では、原則25年の国民年金の受給資格期間を満たせば、厚生年金保険や共済年金の加入期間が、たとえ1ヶ月しかなくても、年金額に反映されるようになったので、通算老齢年金は廃止されました。

そのため通算老齢年金は過去の制度になりますが、このうちの厚生年金保険の通算老齢年金とは、次のような制度になります。

(1)通算老齢年金を受給するための要件
通算老齢年金を受給するための大前提として、次のような要件を満たす必要があります。

【大正15年4月1日以前に生まれた】
昭和61年4月から新法が始まった時に、すでに60歳を過ぎていたという意味になります。

【大正15年4月2日以降に生まれた方で、新法が始まった昭和61年4月より前から、老齢年金を受給していた】

またその他として、次のいずれかの要件も満たす必要がありますが、厚生年金保険の加入期間が1年以上あって、原則20年(もしくは15年)の受給資格期間を満たしていない場合に限ります。

【他の年金制度の加入期間と合算して、20年(国民年金と合算する場合は25年)以上、公的年金の加入期間がある】
厚生年金保険や船員保険にかつて存在した、「脱退手当金」(1月16日のブログを参照)の計算の基礎となった期間については、合算する事ができません。

また通算制度が導入される前の、昭和36年3月までの期間については、昭和36年4月まで引き続いている加入期間のみ、合算する事ができます。

ただ厚生年金保険や船員保険の、昭和36年3月までの期間については、昭和36年4月以後において、国民年金以外の公的年金に関する加入期間がある場合のみ、合算する事ができます。

注:国民年金については保険料納付済期間か免除期間であれば、合算する事ができます。

その他として「合算対象期間」(6月25日のブログを参照)、いわゆる「カラ期間」とされる期間も、他の年金制度には該当しませんが、合算する事ができます。

【他の年金制度において、老齢年金の受給資格期間を満たしている】

大正15年4月1日より前に生まれた方で、昭和36年4月以降に次のような10年から20年以上の、公的年金の加入期間がある】

・明治44年4月2日〜大正5年4月1日→10年
・大正5年4月2日〜大正6年4月1日→11年
・大正6年4月2日〜大正7年4月1日→12年
・大正7年4月2日〜大正8年4月1日→13年
・大正8年4月2日〜大正9年4月1日→14年
・大正9年4月2日〜大正10年4月1日→15年
・大正10年4月2日〜大正11年4月1日→16年
・大正11年4月2日〜大正12年4月1日→17年
・大正12年4月2日〜大正13年4月1日→18年
・大正13年4月2日〜大正14年4月1日→19年
・大正14年4月2日〜大正15年4月1日→20年

明治44年4月1日以前に生まれた方で、10年以上の公的年金の加入期間がある】
ただ昭和36年4月以降に1ヶ月以上、公的年金の加入期間が必要になります。

(2)通算老齢年金の計算方法
通算老齢年金の年金額(基本年金額)は、次のような「定額部分」と「報酬比例部分」を、合算した金額になります。

注:定額部分と報酬比例部分の違いについては、8月22日のブログを参照して下さい。

■定額部分
3,143×被保険者期間の月数×0.968(平成25年度のスライド率)

■報酬比例部分
平均標準報酬月額×10/1000×被保険者期間の月数×1.031×0.968(平成25年度のスライド率)

なお標準報酬月額に掛ける再評価率(7月8日のブログを参照)は、「物価スライド特例水準」を使用します。

(3)通算老齢年金と老齢年金の違い
厚生年金保険の加入期間だけで、原則20年の受給資格期間を満たした場合には、厚生年金保険から通算老齢年金ではなく、老齢年金が支給されますが、この通算老齢年金と老齢年金には、次のような違いがあります。

【通算老齢年金は60歳になって退職した時、もしくは退職して60歳になった時に受給できるが、老齢年金は60歳になる前、例えば55歳から受給できる場合がある】

【通算老齢年金に加給年金(8月10日のブログを参照)は付かないが、老齢年金には加給年金が付く】

【老齢年金の定額部分には20年(240月)の最低保障があるが、通算老齢年金にはない】

【通算老齢年金を受給している方が死亡しても、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算(9月18日のブログを参照)は付かないが、老齢年金を受給している方が死亡すると、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が付く】

以上のようになりますが、最後の中高齢寡婦加算については、年齢差のある夫婦の場合には、現在でも役に立つ知識になります。
posted by FPきむ at 20:51 | 年金の歴史と過去の制度 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする