2019年01月02日

短時間労働者が社会保険に加入する企業規模を、引き下げる議論が開始へ

平成30年(2018年)12月16日の毎日新聞を読んでいたら、厚生年金、パート加入拡大 企業規模を緩和へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、厚生年金に加入するパートなど短時間労働者を増やす方針を固めた。加入義務があるのは従業員501人以上の企業だが、これを引き下げる。

厚生年金は、多くのパートらが加入している国民年金より給付が手厚い。パートらの老後の貧困リスクを低くするのが狙い。18日に有識者会議の初会合を開いて議論を開始。2020年の通常国会に年金改革関連法案を提出する。

現在、パート労働者らについて厚生年金への加入義務があるのは従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万8000円以上などの要件を満たした場合。

500人以下の企業でも労使合意を条件に任意に加入できる。それ以外の労働者は自営業者ら向けの国民年金に加入する。週30時間以上働く人は企業規模にかかわらず原則加入する。

国民年金の保険料は定額(月約1万6000円)で、40年間納付すれば給付は月約6万5000円。

一方、厚生年金は収入に応じて納めた保険料に見合う給付がある。月収8万8000円の場合、保険料は国民年金と同水準の約1万6000円で、半分は企業が負担する。

給付は加入1年につき国民年金より月約500円多くなる。加入40年なら約1万8000円多い。

ただ、加入拡大には保険料負担の増える企業側が慎重だ。従業員500人以下の任意加入の企業のうち2316社を対象に労働政策研究・研修機構が調べたところ、パートらを厚生年金に加入させていたのは5.6%。

加入申請見通しの企業も4.7%にとどまり、任意では加入が進まない様子がうかがえた』

以上のようになりますが、平成28年(2016年)10月からは、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する必要があります。

A:1週間あたりの勤務時間が20時間以上

B:月額賃金が8万8,000円以上(年収にすると106万円以上)

C:勤務期間が1年以上

D:学生でない

E:従業員数が501人以上の企業に勤務している

また(E)の要件が改正され、社会保険に加入する事についての、労使(労働者と使用者)の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業でも、平成29年(2017年)4月から、社会保険に加入するようになりました。

ただ冒頭の記事を読むと労使が合意して、短時間労働者を社会保険に加入させていた企業は、5.6%しかないとわかります。

この理由としては、例えば給与から控除されている厚生年金保険の保険料が1万円の場合、企業は同額の1万円を拠出し、両者を併せた2万円を日本年金機構に納付します。

つまり厚生年金保険に加入する短時間労働者が増えるほど、企業の負担が大きくなってしまうのです。

こういった事情があるため、労使の自主性にまかせていると、なかなか短時間労働者は社会保険に加入できないので、政府は(E)の要件の引き下げに、踏み切ったと考えられます。

なお冒頭の記事には「月収8万8000円の場合、保険料は国民年金と同水準の約1万6000円で、半分は企業が負担する」と記載されておりますが、正確には短時間労働者と企業が8,052円ずつ負担し、企業は両者を併せた16,104円を日本年金機構に納付します。

ところで従業員数が500人以下で、かつ労使の合意がない企業の場合は、短時間労働者の「1週間の勤務時間および1ヶ月の労働日数」が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の、4分の3以上になった時に社会保険に加入します。

つまり短時間労働者が社会保険に加入する基準は、現状では企業規模などにより、2種類に分かれているのです。

なお冒頭の記事を読むと、「週30時間以上働く人は企業規模にかかわらず原則加入する」と記載されておりますが、これは一般社員の1週間の勤務時間が40時間のケースになります。

このように社会保険に加入する基準が2種類あるのは、わかりにくいと思うので、最終的には(E)の要件を撤廃して、ひとつに統一すべきです。

ただそれを実施すれば、従業員数が500人以下の企業から、反発が起きると予想されます。

ですから例えば既存の「キャリアアップ助成金」を改正したり、新たな助成金を作ったりするなどの、企業の負担を軽減する政策を、同時に実施する必要があると思います。
posted by FPきむ at 20:05 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする