2020年01月02日

過去も未来も国民年金を救うため、もの言えぬ厚生年金保険が犠牲になる

令和元年(2019年)12月11日の朝日新聞を読んでいたら、国民・厚生年金の積立金、国が統合検討 支給額減に備えと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、いまは別々に管理している国民年金と厚生年金の積立金の統合を検討している。相対的に財政が安定している厚生年金の積立金を活用し、将来の年金水準が大きく下がる国民年金の底上げを図るのが狙い。

ただ、制度の独立性に関わるため丁寧な議論が必要で、2025年の国会への法案提出を目指す。

政府は来年の通常国会に、厚生年金のパートらへの適用拡大などの年金改革法案を提出する方針。成立後の来年夏以降、積立金の統合について、厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な検討を始める予定だ』

以上のようになりますが、次のような2種類の公的年金は原則として、現役世代から集めた保険料を、その時点の年金受給者に年金として配分する、「賦課方式」という仕組みで運営されているのです。

国民年金:自営業者、フリーラス、学生、失業者などが主に加入している
厚生年金保険:会社員や公務員などが主に加入している

ただ税金も投入されており、例えば原則65歳になると、国民年金から支給される老齢基礎年金の2分の1は、税金で賄われております。

ですから国民年金に加入する必要のある、20歳から60歳までの40年間に渡って、例えば保険料の全額免除を受け、1円も保険料を納付しなかった場合でも、満額の2分の1の老齢基礎年金を受給できるのです。

また人口構成が若かった時代に貯めていた積立金も、年金受給者に配分しております。

そのため公的年金は「現役世代から集めた保険料」、「税金」、「積立金」の3つを、主な財源にしているのです。

ところで5年に1度のペースで厚生労働省は、公的年金の定期健診にあたる財政検証を実施しており、最新版は令和元年(2019年)に実施されたものになります。

この財政検証では経済成長や労働参加のデータを変えて、6つのシナリオを示しているのですが、もっとも経済成長や労働参加が進まないケースでは、国民年金の積立金が、あと30年くらいで枯渇すると試算されました。

もしこれが現実になれば、積立金は配分できなくなるため、保険料を引き上げする、税金の割合を増やす、年金の支給額を減らすの、いずれかを選択する必要があるのですが、保険料を引き上げするのはもっとも難しいと思います。

その理由として国民年金の保険料は、平成29年(2017年)4月までという期限を定めて、平成17年(2005年)4月から、毎年280円ずつ引き上げしてきたので、更に引き上げを実施すれば、国民から反発を受けるからです。

また税金の割合を増やすために、例えば消費税率の引き上げを実施すれば、保険料の引き上げよりも、国民から反発を受けると思います。

そうなると年金の支給額を減らすしかないのですが、金額が大きくなると国民の生活が苦しくなります。

そこで厚生労働省は冒頭で紹介した記事に記載されているように、別々に管理している国民年金と厚生年金保険の積立金を統合して、国民年金の積立金が枯渇しないようにしたのです。

厚生年金保険の保険料を負担している会社員や公務員からすると、納得できない気持ちになるかもしれません。

しかし厚生年金保険の保険料は、給与から強制的に徴収されており、会社員や公務員は物言えぬ立場のため、納得できないからといって、納付を拒否する事はできないのです。

日本の公的年金の歴史を振り返ってみると、こういった事は以前にもあったと思います。

例えば昭和61年(1986年)3月まで厚生年金保険の加入者は、年齢にかかわらず、厚生年金保険だけに加入しておりました。

しかし昭和61年(1986年)4月から、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入者は、厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入するようになったのです。

これを受けて厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われるようになりました。

また厚生年金保険の加入者は原則65歳になると、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金だけなく、国民年金から支給される老齢基礎年金も受給できるようになりました。

何だかお得なような感じがするのですが、損をするようになったと捉える事もできます。

その理由として厚生年金保険の加入者が、国民年金の加入者になった後は、国民年金の保険料の未納などによって生じる、財政の不安定さを解消するために、厚生年金保険の保険料が使われるようになったからです。

つまり厚生年金保険の加入者から徴収した保険料で、財政が不安定な国民年金を救ったのです。

厚生年金保険の保険料を負担している会社員や公務員は、納得できないかもしれませんが、給与から強制的に保険料が徴収されているという、もの言えぬ立場のため、納付を拒否する事はできません。

こういった仕組みに納得できない方は、厚生年金保険に加入しない自営業者やフリーランスなどとして、働くしかないと思います。

また国民年金の加入者は、困ったら厚生年金保険の加入者に助けてもらえるという、恵まれた立場にあるため、国民年金の保険料の納付を拒否して、その恵まれた立場を放棄するのは、非常にもったいないと思います。
posted by FPきむ at 20:39 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする