2022年08月03日

国民年金の納付率は10年連続上昇も、全額免除や納付猶予は過去最多へ

令和4年(2022年)6月23日の日本経済新聞を読んでいたら、国民年金の保険料、612万人免除・猶予 21年度過去最多と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は23日、2021年度の国民年金保険料の納付率は73.9%と前年度から2.4ポイント上昇したと発表した。

納付を全額免除・猶予されている人数は前年度より3万人多い612万人で2年連続で最多を更新した。長引く新型コロナウイルス禍が影響したとみられる。

加入者数は21年度末時点で1431万人と前年度から18万人減少した。全体の4割が免除や猶予されている。こうした人も含めた納付率は41.4%まで下がる。

国民年金は自営業者やフリーターらが加入する。厚労省はコロナ禍で収入が大幅に減った人の保険料納付を免除しやすくする特例措置を設けている。21年度もオミクロン型の感染拡大などで経済活動の制限が続いた。

納付率上昇は10年連続。コンビニエンスストアやインターネットを利用した支払い方法が普及したことなどが背景にある。納付率は保険料の納付対象月数に対する納付月数の割合で、全額免除・猶予者は計算対象に含まない。

保険料は過去2年さかのぼって納付できる。免除を受けると将来受け取る年金額は減る仕組みのため、免除する人が増えても国民保険財政への影響は大きくない。

政府は会社員らが加入する厚生年金の適用拡大を進めており、国民年金からの移行が増えている。国民年金は厚生年金に比べて年金額の水準が低い。免除期間が長くなれば、将来低年金に陥る人が増える懸念もある』

以上のようになりますが、この記事の中に記載されているように、国民年金の納付率の上昇は10年連続になります。

国民年金の納付率の上昇が始まったのは政権交代が起き、亡くなった安倍元総理がアベノミクスと呼ばれる経済政策を、日銀の黒田総裁と共に始めた頃です。

このようにアベノミクスが上昇の起点になったのは、民主党政権時代よりも経済が良くなり、国民年金の保険料を納付するだけの、経済的な余裕のある方が増えたからだと思います。

そのため新型コロナの感染拡大によって、経済が大幅に悪化した令和2年(2020年)には、連続上昇の記録が途切れると予想していたのです。

しかし実際には記録が途切れる事はなく、令和3年(2021年)も連続記録を更新しました。

この理由はいくつか考えられますが、「納付を全額免除・猶予されている人数は前年度より3万人多い612万人で2年連続で最多を更新した」という部分が、もっとも参考になると思います。

つまり新型コロナの感染拡大を受けた免除の特例措置で、納付率の計算対象に含まれない全額免除や納付猶予を受けた方が増えたので、連続上昇の記録が途切れなかったという訳です。

全額免除を受けた期間は、後で国民年金の保険料を追納しなくても、保険料を全額納付した場合の2分の1として、老齢基礎年金の金額に反映されます。

一方で納付猶予を受けた期間は、後で国民年金の保険料を追納しないと、老齢基礎年金の金額に反映されません。

こういった仕組みのため、特に後者の納付猶予を長期に渡って受けると、老齢基礎年金が大幅に減ってしまうので、老後破産を招いてしまう可能性があります。

ですから国民年金の納付率が10年連続で上昇した事を、評価する気持ちにはなれないのです。

ところで次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、70歳になるまで厚生年金保険に加入します。

A:1週間あたりの勤務時間が20時間以上
B:賃金の月額が8万8,000円(年収では約106万円)以上
C:雇用される見込みが1年以上
D:学生でない
E:従業員数が501人以上の企業に勤務している(労使の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業も含む)

この中のCの要件が令和4年(2022年)10月から改正されるため、雇用される見込みが2ヶ月超の場合にも、厚生年金保険に加入します。

またEの要件も同月から改正されるため、従業員数が101人以上の企業に勤務している場合にも、厚生年金保険に加入します。

こういった厚生年金保険の適用拡大により、国民年金の保険料を未納にしていた方が厚生年金保険に加入すると、その分だけ国民年金の納付率が上昇するのです。

また厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているため、厚生年金保険に加入していた期間は、国民年金の保険料を納付した事になります。

そのため厚生年金保険の適用拡大による納付率の上昇は、全額免除や納付猶予の増加による納付率の上昇より、評価できると思います。
posted by FPきむ at 20:01 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする