令和5年(2023年)7月28日の毎日新聞を読んでいたら、「昭和型」の遺族厚生年金は「不平等」 男女格差是正求める声相次ぐと題した、次のような記事が掲載されていました。
『2025年に予定される公的年金制度の改正に向け、社会保障審議会年金部会(厚生労働相の諮問機関)が28日に開かれ、生計を支えていた家族が亡くなると受給できる遺族厚生年金の見直し議論が始まった。
男性が家計を支える昭和型の家庭を念頭に設計されており、現役世代は受給条件が男女で異なる点について、委員から是正を求める意見が相次いだ。
現行制度では夫婦に子どもがいない場合、妻は年齢を問わず遺族厚生年金を受け取れる一方、夫は妻の死亡時に55歳以上でなければ受け取れない。
また、中高年の女性の就労は難しいとして、夫の死亡時に40〜64歳で子どもがいないといった条件を満たせば、妻には年間で約60万円が加算される。
現在は若い世代を中心に夫婦共働きが主流となる中で、現行制度が「不平等だ」との指摘がある。委員で流通経済大の百瀬優教授は「今後も男女間の格差は縮小が見込まれ、(制度下の)男女差を解消する時期が来た」と述べた。
一方、遺族年金で生計を立てて暮らしている人への配慮を求める声も相次いだ。遺族厚生年金は21年度末時点で、約571万人が受給している。
委員の島村暁代・立教大教授は「これまでも、(老後の生活保障を)年金でみてきたことを考えると、劇的な改正は難しい。十分な経過措置規定は不可欠だ」と強調した。
厚労省は今後、遺族年金も含めて議論を深め、25年の通常国会に改正法案を提出したい考えだ』
以上のようになりますが、国民年金に加入している方が死亡した時に、保険料の納付要件などを満たしている場合、所定の親族に対して遺族基礎年金が支給されます。
会社員や公務員などは一部の方を除き、厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入しているのです。
そのため厚生年金保険に加入する会社員や公務員の方などが死亡した時にも、保険料の納付要件などを満たしている場合には、国民年金から遺族基礎年金が支給されます。
この遺族基礎年金を受給できる所定の親族は、平成26年(2014年)3月までは次のようになっていました。
・子のある妻
・子
両者に登場する子とは、次のような要件を満たしている子になるため、子が高校を卒業するくらいの年齢になると、遺族基礎年金を受給できなくなってしまうのです。
・18歳になった年度の3月31日までの間にある子
・1級か2級の障害状態にある20歳未満の子
このように遺族基礎年金は子のある妻しか受給できず、男女の格差があったので、平成26年(2014年)4月からは、次のように改正されたのです。
・子のある配偶者(妻だけでなく夫も含む)
・子
なお遺族基礎年金を受給できるのは、死亡した方に生計を維持されていた親族になります。
また子のある配偶者が遺族基礎年金を受給している間は、子に対する遺族基礎年金は支給停止になります。
会社員や公務員の方などは上記のように、国民年金だけでなく厚生年金保険にも加入しています。
そのため会社員や公務員の方などが死亡した時に、保険料の納付要件などを満たしている場合には、遺族基礎年金の上乗せとなる遺族厚生年金が、厚生年金保険から支給されるのです。
また遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した方に生計を維持されていた次のような親族のうち、先順位にある方になります。
■第1順位
・配偶者(妻は年齢を問わない、夫は親族が死亡した当時に55歳以上である)
・子(18歳になった年度の3月31日までの間にある、または20歳未満で1級か2級の障害状態である)
※第1順位の中での先順位は、「子のある妻→子のある55歳以上の夫→子→子のない妻→子のない55歳以上の夫」になります。
■第2順位
・父母(親族が死亡した当時に55歳以上である)
■第3順位
・孫(18歳になった年度の3月31日までの間にある、または20歳未満で1級か2級の障害状態である)
■第4順位
・祖父母(親族が死亡した当時に55歳以上である)
以上のようになりますが、第1順位の中に含まれている妻は、例えば夫が死亡した当時に何歳であっても、遺族厚生年金を受給できます。
一方で第1順位の中に含まれている夫は、例えば妻が死亡した当時に55歳以上という要件を満たしていないと、遺族厚生年金を受給できないのです。
こういった男女の格差を解消するための議論が、社会保障審議会で行われているという訳です。
まだ結論は出ていないようですが、遺族基礎年金の男女の格差が解消された点から考えると、遺族厚生年金の男女の格差が解消されるのは、時間の問題ではないかと思います。