令和6年(2024年)7月14日の日本経済新聞を読んでいたら、年金納付5年延長 増税恐れ「異例の早さ」で封印と題した記事が掲載されていましたが、一部を紹介すると次のようになります。
『7月初旬に公表された公的年金財政の将来見通しを示す「財政検証」では、国民年金の保険料納付期間の5年延長の扱いが焦点の一つだった。
厚生年金に比べて劣る国民年金の給付水準を高めるのが狙いで、2025年の制度改正での実施を検討してきた。ただ財政検証で課題に挙げられたにもかかわらず早々と見送りが決まった』
以上のようになりますが、国民年金の保険料の納付期間は、現在は20歳から60歳までの40年間です。
これを将来的に5年延長して、20歳から65歳までの45年間にするという改正案があります。
厚生労働省は5年に1度のペースで、公的年金財政の将来見通しを示す財政検証を実施しています。
令和6年(2024年)は財政検証の年だったので、厚生労働省は同年7月初旬に試算結果を発表しました。
財政検証の際には5年延長する改正案を実施した時の、年金の給付水準の変化なども試算されています。
また財政検証の中で試算が実施されると、改正が実施される可能性がかなり高くなるのです。
そのため来年辺りの年金改正の際に、5年延長が現実になるのかと思っていたら、冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、早々と見送りが決まりました。
会社員や公務員などが加入している厚生年金保険の加入上限は、今のところは70歳になります。
また所定の加入要件を満たして、60歳以降も厚生年金保険に加入している間は、国民年金に加入する必要がないため、5年延長になっても影響はないのです。
厚生年金保険の加入者に扶養されている、年収130万円未満などの要件を満たす20歳以上60歳未満の配偶者は、所定の届出によって国民年金の第3号被保険者になります。
この第3号被保険者は国民年金に加入していますが、保険料を納付しなくても良いうえに、保険料を納付したという取り扱いになるのです。
国民年金の保険料の納付期間が5年延長になった時に、第3号被保険者が保険料を納付するのかは、まだ明らかになっていません。
そのため60歳以降は保険料を納付する可能性もあれば、引き続き納付しなくても良い可能性もあります。
このように厚生年金保険の加入者には影響がなく、第3号被保険者は微妙な感じですが、国民年金の第1号被保険者は確実に負担が増えます。
また第1号被保険者に該当するのは、自営業者、フリーランス、農林漁業者、厚生年金保険の加入要件を満たさない短時間労働者、無職の方などです。
第1号被保険者が納付する国民年金の保険料は、令和6年(2024年)度額で月1万6,980円です。
この金額が将来的に変わらないと仮定すると、101万8,800円(1万6,980円×12月×5年)くらいは、新たに負担が増える可能性があります。
けっこうな負担になりますが、国民年金の保険料を1月納付すると、65歳から受給できる老齢基礎年金が1,700円くらい増えるのです。
そのため国民年金の保険料の納付期間が5年延長になった後は、10万2,000円(1,700円×12月×5年)くらいは老齢基礎年金の増額が期待できます。
ただ無職の方や短時間労働者の方が、101万8,800円もの金額を負担するのは大変なので、60歳未満の方が利用できる免除制度が、60歳以降に延長されると思います。
この免除制度には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除がありますが、いずれを受けられるのかは収入によって変わるのです。
例えば収入が低い短時間労働者の方が、全額免除を受けられる前年の年収の目安は次のような金額です。
・単身者:122万円以下
・配偶者などの扶養親族が1人いる方:157万円以下
老齢基礎年金の財源の2分の1は税金になるため、例えば全額免除を受けて保険料を納付しなくても、1ケ月あたり850円(1,700円÷2)くらい年金額が増えるのです。
つまり無課金でも保険料を納付した場合の半分を受給できるため、収入が低い方にとって5年延長は、かなりのメリットがあるのです。
また5年間に渡って全額免除を受けられた場合には、5万1,000円(850円×12月×5年)くらい老齢基礎年金が増えます。
パリオリンピックでは射撃の混合エアピストルで銀メダルを獲得した、トルコ人のユスフ・ディケチさんが、「無課金おじさん」と呼ばれて話題になりました。
全額免除のメリットから考えると、5年延長が見送りされて困るのは、全額免除で保険料は無課金なのに年金額が増える予定だった、年金界の「無課金おじさん」なのかもしれません。



