2024年10月02日

厚生労働省が「国民年金保険料の納付猶予制度」を延長する案を提示へ

令和6年(2024年)9月20日の朝日新聞を読んでいたら、国民年金保険料納付猶予制度、延長へ 新たに世帯主の所得制限も検討と題した記事が掲載されていましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『経済的な理由で国民年金(基礎年金)の保険料支払いを猶予する制度について、厚生労働省は20日、2030年までとなっている実施期限を延長する案を社会保障審議会の部会に提示した。

一定の利用者がいるため、延長が必要と判断した。一方で所得の高い世帯の利用者には新たな条件を設ける方針も示した。年末までに議論をまとめ、来年の制度改正を目指す。

国民年金保険料の「納付猶予制度」は、自営業や無職など国民年金の加入者が経済的に苦しく、保険料を納付できない時に猶予する仕組みだ。将来的な年金受給につなげてもらえるよう、10年間は保険料を追納できる。

猶予制度の対象は、本人と配偶者の前年所得が一定額以下の50歳未満の人。単身者の場合だと、67万円以下で認められる。

05年に制度が始まって以来、対象範囲を広げて期限を延長してきた。現行制度は、30年6月までの時限措置となっている』

以上のようになりますが、国民年金の被保険者(将来に年金を受給できる可能性のある方)は、次のような3種類に分かれます。

【第1号被保険者】
日本に住んでいる20歳以上60歳未満のうち、第2号被保険者や第3号被保険者に該当しない方は、第1号被保険者になります。

また現状で第1号被保険者になっているのは、自営業者、フリーランス、農林漁業者、無職の方、20歳以上の学生などです。

【第2号被保険者】
厚生年金保険の加入者は20歳未満や60歳以上の方も含めて、第2号被保険者になるため、厚生年金保険と国民年金に同時加入しています。

ただし老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている65歳以上の方は、厚生年金保険に加入している場合でも、第2号被保険者になりません。

また公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、保険料の納付を免除された期間などが原則として10年以上あると、老齢基礎年金の受給資格期間を満たします。

【第3号被保険者】
第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は、所定の届出によって第3号被保険者になります。

ただし年収が130万円未満などの要件を満たす必要があるので、第2号被保険者に扶養されている配偶者であっても、第3号被保険者にならない方もいます。

これらの3種類の被保険者の中で、第2号被保険者と第3号被保険者については、各自が国民年金の保険料を納付する必要はありません。

その理由として第2号被保険者が納付した厚生年金保険の保険料の一部は、第2号被保険者と第3号被保険者の国民年金の保険料に変わるからです。

一方で第1号被保険者については、令和6年(2024年)度額で月16,980円となる国民年金の保険料を、各自が納付する必要があります。

ただし保険料を納付するのが難しい方がいるので、各種の免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、納付猶予、学生納付特例が設けられています。

20歳以上の学生(大学生など)は学生納付特例だけが対象になるため、他の制度は審査されません。

一方で20歳以上の学生以外については、「全額免除→納付猶予(50歳未満の場合)→4分の3免除→半額免除→4分の1免除」の順に審査されるのです。

原則的には本人、配偶者、世帯主の前年の所得が低いほど、保険料を納付する金額が少ないものを受けられます。

また納付猶予は本人と配偶者の所得のみが審査の対象になるため、世帯主の所得は考慮されません。

それぞれを受けた場合の令和6年(2024年)度額の保険料は、次のような金額になります。

・全額免除:0円
・納付猶予:0円
・4分の3免除:4,250円
・半額免除:8,490円
・4分の1免除:12,740円

また65歳になると国民年金から支給される老齢基礎年金は、財源の半分が税金になるため、次のような割合で老齢基礎年金の金額に反映されます。

・全額免除:1月分の保険料を納付した場合の2分の1
・納付猶予:反映されない
・4分の3免除:1月分の保険料を納付した場合の8分の5
・半額免除:1月分の保険料を納付した場合の8分の6
・4分の1免除:1月分の保険料を納付した場合の8分の7

このように納付猶予だけは老齢基礎年金の金額に反映されないのは、税金が投入されないからです。

そのため冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、納付猶予を受けられる期間が延長されるのは、良い面ばかりではないと思います。

また金銭的な余裕ができた時に、国民年金の保険料を追納するなら、納付猶予の期間を優先した方が良いのです。
posted by FPきむ at 20:38 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月03日

令和6年(2024年)は最悪なタイミングで社会保険の適用が拡大する

令和5年(2023年)12月7日の朝日新聞を読んでいたら、保険料滞納の企業、半年で2万6千社が資産差し押さえ 倒産も急増と題した記事が掲載されていましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生年金などの保険料滞納で、資産を差し押さえられる企業が増えている。日本年金機構によると、今年度上半期(4〜9月)は約2万6300社で、前年度1年分(約2万7800社)に達する勢いだった。

コロナ禍で猶予した保険料の徴収が本格化したためだが、差し押さえがきっかけの倒産も増えており、影響が広がっている。

日本年金機構が徴収しているのは、厚生年金や中小企業などが入る公的医療保険の協会けんぽの保険料、介護保険料などがある。保険料の滞納が続くと、企業の預金や土地、建物といった不動産の差し押さえに動く。

差し押さえをした事業所数は2009年度は約8300社だった。その後、増加傾向が続き、19年度は約3万3100社に増えた』

以上のようになりますが、令和4年(2022年)の初め辺りから、インフレ(継続的な物価上昇)が多くの国で深刻化してきました。

これを受けて世界各国の中央銀行は、政策金利(中央銀行が誘導目標にする短期金利)の引き上げを始めたのです。

例えばアメリカの中央銀行にあたるFRBは、令和4年(2022年)の初め頃には「0.00〜0.25%」だった政策金利を急速に引き上げしたため、現在は「5.25〜5.50%」になっています。

一方で日本の中央銀行である日銀は、平成28年(2016年)に始まったマイナス金利政策(誘導目標は−0.10%)を現在も続けているため、政策金利は特に変わっていません。

ただYCCという長期金利を一定の範囲内に抑える金融政策に関しては、その上限を「0.25%」から「1%を目途」に引き上げしたため、何もやっていない訳ではないのです。

こういった中央銀行の金融政策の変更により、インフレは落ち着いてきたのですが、困った問題も発生しました。

例えばアメリカでは令和5年(2023年)3月頃に、シリコンバレー銀行などの複数の銀行が連鎖破綻したのです。

現在は落ち着いているのですが、令和6年(2024年)にも同じような事が起きるのではないかという予想があります。

アメリカの政策金利は連鎖破綻が起きた時よりも、高い水準になっているため、十分にあり得る話ではないかと思います。

また日本で銀行が連鎖的に破綻したり、破綻を回避するために銀行が貸出基準を厳しくしたりしたら、企業は設備投資などを控えるので、更に景気が悪化する可能性があります。

冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、現在はコロナ禍で納付を猶予された社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料の徴収が本格化し、それによる倒産が起きているのです。

こういった状況の中で更に景気が悪化したら、特に中小企業は非常に厳しい状況になると思います。

ところで平成28年(2016年)10月に、社会保険の適用が拡大されたので、次のような5つの要件を満たすと、パートなどの短時間労働者であっても社会保険に加入します。

A:賃金の月額が8万8,000円以上である
B:1週間あたりの労働時間が20時間以上である
C:学生でない
D:雇用期間の見込みが1年以上である
E:従業員数が501人以上の企業に勤務している

この中のDとEの要件が令和4年(2022年)10月から、次のように変わりました。

D:雇用期間の見込みが1年以上→2ヶ月超
E:従業員数が501人以上→101人以上

また令和6年(2024年)10月から、社会保険の適用が更に拡大されるため、従業員数の要件が「101人以上→51人以上」に変わります。

つまり従業員数が50人程度しかいない、中小企業に働いているパートなども、社会保険に加入するようになるのです。

そうなると中小企業に働いているパートなどは、社会保険の保険料の分だけ負担が増えると共に、給与の手取りが減ってしまいます。

また社会保険の保険料は、従業員と企業が半分ずつ負担するため、中小企業にとっても負担増になります。

令和6年(2024年)は上記のように、銀行の破綻や貸出基準の厳格化などによって、景気が悪化する可能性があります。

こういった状況の中で政府は、中小企業にとっての更なる負担増になる、社会保険の適用拡大を実施しようとしているのです。

個人的には最悪なタイミングだと思うので、景気の悪化が酷かった場合には、延期などを検討した方が良いと思います。
posted by FPきむ at 20:36 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする