2019年03月01日

平成31年(2019年)から実施される予定の年金関連の改正点

平成31年(2019年)から実施される予定の年金関連の改正点は、主に次のようなものがあります。

■4月からの改正点
新年度が始まる4月からは、多くの改正が実施されますが、それは次のようになります。

(1)キャリーオーバーされたスライド調整率の控除
公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は次のように、賃金や物価の変動率によって、新年度が始まる4月から金額を改定します。

・新年度からの年金額=前年度の年金額×賃金や物価の変動率

ただ平成16年(2004年)から、現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて、年金額を自動的に調整する、「マクロ経済スライド」が導入されました。

そのため次のように賃金や物価の変動率から、現役人口の減少や平均余命の伸びを元に算出した、スライド調整率を控除するようになったのです。

・新年度からの年金額=前年度の年金額×(賃金や物価の変動率−スライド調整率)

しかし次のように賃金や物価の変動率がプラスであっても、スライド調整率を控除するとマイナスになる年度は、前年度の年金額を0.5%減額するのではなく、前年度と同額の年金が支給されます。

・賃金や物価の変動率(0.4%)−スライド調整率(0.9%)=−0.5%

また次のように賃金や物価の変動率がマイナスで、そこからスライド調整率を控除すると、更にマイナスが大きくなる年度は、前年度の年金額を1.1%減額するのではなく、賃金や物価の変動率の0.2%分だけ、年金額を減額するのです。

・賃金や物価の変動率(−0.2%)−スライド調整率(0.9%)=−1.1%

こういった年度については、スライド調整率の全部または一部が控除できないので、控除できなかった分だけ年金財政が悪化します。

そこでマクロ経済スライドの適用を強化する改正が、平成30年(2018年)4月から実施されたため、賃金や物価の上昇率が大きかった年度に、過去に控除できなかったスライド調整率を、一緒に控除できるようになったのです。

平成30年(2018年)度は、0.3%のスライド調整率をまったく控除できなかったため、0.3%のキャリーオーバーが発生しました。

このキャリーオーバー分は、いつか控除する必要がありますが、早くも平成31年(2019年)度に、その機会がやってきたのです。

平成31年(2019年)度の年金額の計算に使う、賃金の変動率は0.6%、物価の変動率は1.0%でした。

こういったケースでは、上昇率の低い賃金の変動率(0.6%)で、年金額を決めるのです。

また平成31年(2019年)度分のスライド調整率(0.2%)と、キャリーオーバーされたスライド調整率(0.3%)を、上記の0.6%から控除するため、「0.6%−(0.2%+0.3%)」となり、前年度の年金額から0.1%の増額に止まります。

(2)国民年金の保険料に関する産前産後休業の免除制度
厚生年金保険はかなり前から、産前産後休業や育児休業を取得した場合の保険料の免除制度が存在しており、免除を受けた期間については、保険料を納付したという取り扱いになります。

しかし国民年金はいずれの場合についても、保険料は免除にならないため、厚生年金保険より不利な状況でした。

そのため4月から産前産後休業を取得した場合の保険料の免除制度が、国民年金にも導入されるのです。

ただ保険料を納付したという取り扱いにするためには、そのための財源が必要になります。

そこで平成31年(2019年)度は月70円、翌年度は月130円ほど、国民年金の保険料が値上げされます。

(3)国民年金基金の合併
自営業者やフリーランスなどの国民年金の加入者は、会社員などの厚生年金保険の加入者と違って、国民年金から支給される「老齢基礎年金」の上乗せとなる「老齢厚生年金」が、厚生年金保険から支給されません。

そのため老齢厚生年金の代わりとなる年金を、自助努力で準備するための制度のひとつとして、国民年金基金があります。

この国民年金基金は都道府県、または職業ごとに設立されているのですが、4月からすべての国民年金基金が合併され、「全国国民年金基金」になるのです。

それぞれの都道府県にある国民年金基金に加入している方が、他県に引っ越しをする場合、いったん資格喪失の手続きを取り、引っ越し先の都道府県で、新たに加入手続きをする必要があります。

しかし合併後の4月以降については、住所変更届の手続きだけで済むため、加入者の利便性が向上します。

■10月からの改正点
所得の金額が一定の基準以下の、低所得の年金受給者に対して、月5,000円程度になる「年金生活者支援給付金」が、10月から支給されます。

ただ消費税を税源にするため、消費税率の引き上げが延期された場合には、これの支給も延期されます。

また年金生活者支援給付金が支給されるのと引き換えにして、低所得者を対象にした後期高齢者医療の保険料に関する軽減特例が、廃止される可能性があります。

ですから増えるものだけでなく、減ってしまうものにも、注意しておく必要があるのです。
posted by FPきむ at 20:34 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月02日

短時間労働者が社会保険に加入する企業規模を、引き下げる議論が開始へ

平成30年(2018年)12月16日の毎日新聞を読んでいたら、厚生年金、パート加入拡大 企業規模を緩和へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、厚生年金に加入するパートなど短時間労働者を増やす方針を固めた。加入義務があるのは従業員501人以上の企業だが、これを引き下げる。

厚生年金は、多くのパートらが加入している国民年金より給付が手厚い。パートらの老後の貧困リスクを低くするのが狙い。18日に有識者会議の初会合を開いて議論を開始。2020年の通常国会に年金改革関連法案を提出する。

現在、パート労働者らについて厚生年金への加入義務があるのは従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万8000円以上などの要件を満たした場合。

500人以下の企業でも労使合意を条件に任意に加入できる。それ以外の労働者は自営業者ら向けの国民年金に加入する。週30時間以上働く人は企業規模にかかわらず原則加入する。

国民年金の保険料は定額(月約1万6000円)で、40年間納付すれば給付は月約6万5000円。

一方、厚生年金は収入に応じて納めた保険料に見合う給付がある。月収8万8000円の場合、保険料は国民年金と同水準の約1万6000円で、半分は企業が負担する。

給付は加入1年につき国民年金より月約500円多くなる。加入40年なら約1万8000円多い。

ただ、加入拡大には保険料負担の増える企業側が慎重だ。従業員500人以下の任意加入の企業のうち2316社を対象に労働政策研究・研修機構が調べたところ、パートらを厚生年金に加入させていたのは5.6%。

加入申請見通しの企業も4.7%にとどまり、任意では加入が進まない様子がうかがえた』

以上のようになりますが、平成28年(2016年)10月からは、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する必要があります。

A:1週間あたりの勤務時間が20時間以上

B:月額賃金が8万8,000円以上(年収にすると106万円以上)

C:勤務期間が1年以上

D:学生でない

E:従業員数が501人以上の企業に勤務している

また(E)の要件が改正され、社会保険に加入する事についての、労使(労働者と使用者)の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業でも、平成29年(2017年)4月から、社会保険に加入するようになりました。

ただ冒頭の記事を読むと労使が合意して、短時間労働者を社会保険に加入させていた企業は、5.6%しかないとわかります。

この理由としては、例えば給与から控除されている厚生年金保険の保険料が1万円の場合、企業は同額の1万円を拠出し、両者を併せた2万円を日本年金機構に納付します。

つまり厚生年金保険に加入する短時間労働者が増えるほど、企業の負担が大きくなってしまうのです。

こういった事情があるため、労使の自主性にまかせていると、なかなか短時間労働者は社会保険に加入できないので、政府は(E)の要件の引き下げに、踏み切ったと考えられます。

なお冒頭の記事には「月収8万8000円の場合、保険料は国民年金と同水準の約1万6000円で、半分は企業が負担する」と記載されておりますが、正確には短時間労働者と企業が8,052円ずつ負担し、企業は両者を併せた16,104円を日本年金機構に納付します。

ところで従業員数が500人以下で、かつ労使の合意がない企業の場合は、短時間労働者の「1週間の勤務時間および1ヶ月の労働日数」が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の、4分の3以上になった時に社会保険に加入します。

つまり短時間労働者が社会保険に加入する基準は、現状では企業規模などにより、2種類に分かれているのです。

なお冒頭の記事を読むと、「週30時間以上働く人は企業規模にかかわらず原則加入する」と記載されておりますが、これは一般社員の1週間の勤務時間が40時間のケースになります。

このように社会保険に加入する基準が2種類あるのは、わかりにくいと思うので、最終的には(E)の要件を撤廃して、ひとつに統一すべきです。

ただそれを実施すれば、従業員数が500人以下の企業から、反発が起きると予想されます。

ですから例えば既存の「キャリアアップ助成金」を改正したり、新たな助成金を作ったりするなどの、企業の負担を軽減する政策を、同時に実施する必要があると思います。
posted by FPきむ at 20:05 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする