2018年11月25日

年金を減額するマクロ経済スライドが、4年ぶりに発動される見通しへ

平成30年(2018年)11月22日の毎日新聞を読んでいたら、年金抑制「マクロ経済スライド」4年ぶり実施へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『少子高齢化に伴って年金給付の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」が、2019年度に実施される見通しとなった。

年金額を改定する際に指標となる賃金や物価が上昇しており、スライド実施の条件が整うため。

年金額は、今年度から微増か据え置きとなる公算が大きい。実施されれば15年度以来4年ぶりで2度目となる』

以上のようになりますが、公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は次のように、現役世代の賃金や物価の変動率を元にして、新年度が始まる4月から金額を改定します。

・4月からの年金額=前年度の年金額×賃金や物価の変動率

大まかに言うと年金の受給を始めてから数年の方は、現役世代の賃金の変動率を元にして、またそれ以降の方は物価の変動率を元にして、年金の金額を改定するのです。

このように現役世代の賃金や物価の変動率を元にして、年金の金額を改定しているのは、例えば物価が上昇しているのに、年金の金額が変わらないとしたら、年金の実質的な価値が下がってしまうからです。

しかしマクロ経済スライドという制度が、2004年に導入されてからは、次のように現役世代の賃金や物価の変動率から、少子高齢化の進展状況を元に算出した、スライド調整率を控除するようになりました。

・4月からの年金額=前年度の年金額×(賃金や物価の変動率−スライド調整率)

つまり現役世代の賃金や物価が上昇しても、その分だけ年金の金額が上昇しない仕組みになったのです。

ただ物価の変動率がマイナスになる、いわゆるデフレの時には、マクロ経済スライドは発動しないルールのため、制度の導入以降にマクロ経済スライドが発動されたのは、2015年度の1回だけしかありません。

この時のスライド調整率は0.9%でしたので、この分だけ年金の金額が減ってしまいました。

冒頭で紹介した記事は、このような仕組みのマクロ経済スライドが、2019年度に再び発動される見通しになったというものです。

おそらくここ数年の人手不足などを受け、現役世代の賃金や物価が、だんだんと上昇しているのかもしれません。

実際にマクロ経済スライドの発動が決定されると、これを批判する新聞や雑誌の記事が、頻繁に掲載されると思うのですが、若者世代は高齢世代と一緒になって、批判しない方が良いと思います。

その理由としてマクロ経済スライドによる年金の減額は、年金財政の均衡を図る事ができると見込まれたら、終了する予定だからです。

マクロ経済スライドが導入された時点では、2005年度から年金の減額が始まり、2023年度で終了すると試算されました。

デフレが長引いたため、この試算のようにはいかなくなったのですが、マクロ経済スライドによる年金の減額が、定期的に続いていけば、若者世代が年金の受給を始める前に、マクロ経済スライドは終了する可能性が高くなります。

なお2018年度からは、控除できなかったスライド調整率を、翌年度以降にキャリーオーバーして、現役世代の賃金や物価の上昇率が大きかった年度に、まとめて控除できるようにしました。

また現在は上記のように、デフレの時にはマクロ経済スライドを発動しないルールなのですが、デフレの時にも発動できるようにする案が、かなり前から議論されております。

こういった改正によって、マクロ経済スライドの発動が強化されていくと、若者世代だけでなく、中年世代が年金の受給を始める前に、マクロ経済スライドが終了するかもしれません。

このようにマクロ経済スライドは世代によって、受ける影響に違いがあるのですが、その対策は世代によって違いはないと思うのです。

マクロ経済スライドの対策のひとつになるのは、つみたてNISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)を通じて、株式が組み入れられた投資信託を購入する事です。

なぜこれが高齢世代にとっての、マクロ経済スライドの対策になるのかというと、物価が上昇すると株式が組み入れられた投資信託は、値上がりしやすくなります。

そのため「物価上昇→マクロ経済スライドの発動→年金の減額」が起きたとしても、物価上昇で値上がりした投資信託を売却すれば、年金の減額分を穴埋めできるからです。

また株式が組み入れられた投資信託を購入する方が増えると、その方達によって株価が下支えされるため、企業は賃上げをしやすくなります。

このようにして賃金の上昇が続いていけば、生活に余裕が生まれるだけでなく、マクロ経済スライドは早く終了するため、若者世代や中年世代にとっての、マクロ経済スライドの対策になるのです。

つみたてNISAやiDeCoを通じて、老後資金の準備ができるだけでなく、マクロ経済スライドの対策ができるとしたら、一石二鳥ではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:41 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月02日

国民年金の保険料の納付率が66.8%となり、6年連続での上昇へ

平成30年(2018年)6月29日の産経新聞を読んでいたら、国民年金の納付率66・3% 6年連続上昇 雇用改善、徴収強化でと題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は29日、自営業者らが支払う平成29年度の国民年金保険料の納付率が前年度から1・3ポイント増加し、66・3%だったことを明らかにした。

過去最低の58・6%だった23年度から6年連続で上昇した。同省は、雇用環境の改善や強制徴収の取り組み強化などが要因としている。

29年度末の加入者は1505万人で、前年度末と比べ70万人減った。平成28年10月から厚生年金の適用対象がパートらに拡大され、厚生年金の加入者が増加したことに伴い減少した。

世代別では年齢が若いほど納付率は低く、25〜29歳が最低の54・87%で、55〜59歳が最高の76・28%だった。

都道府県別で最も納付率が高かったのは島根県の80・6%で、次いで富山県の78・7%、新潟県の78・6%などと続いた。最低は沖縄県の49・1%で、次いで大阪府の56・7%、東京都の62・4%の順となった。鹿児島県を除き、すべての都道府県で上昇した。

納付を請求する最終催告状は10万3614件、催促する督促状は6万6270件と共に過去最高。最終手段である財産差し押さえは1万4344件と過去2番目に多く、強制徴収の強化を裏付けている』

以上のようになりますが、毎年この時期になると厚生労働省から、前年度の国民年金の保険料の納付率が発表されております。

平成29年(2017年)度の納付率は、前年度から1.3%増えて66.3%になり、6年連続での上昇になったそうです。

納付率の上昇が始まった6年前は、安倍内閣が誕生した頃ですから、安倍内閣の経済政策であるアベノミクスは、やはり上手くいっていると評価できると思うのです。

ただ先日に財務省から発表された、平成29年(2017年)度の国の税収は、バブル期以来の高水準になった事を鑑みると、国民年金の保険料の納付率は、まだまだ低いような気がするのです。

なおバブル期が始まった昭和61年(1986年)度の納付率は、82.5%に達しております。

またバブル期が終わった平成3年(1991年)度の納付率は、更に上がって85.7%に達しておりますから、いずれも現在より20%くらい高いのです。

ただ当時の国民年金の保険料は、月に7,000円〜9,000円程度で、現在の16,340円の半分くらいですから、当時と比べて納付率が上昇しないのは、やむを得ないのかもしれません。

また国民年金の保険料の納付率が、バブル期以来の高水準になるためには、更なる賃上げが必要になるのかもしれません。

ところでこういった統計を発表する時に、すべての年金制度を合わせた国民年金の保険料の納付率を、なぜ発表しないのだろうか?という疑問を、いつも感じてしまうのです。

厚生年金保険に加入している会社員や公務員などは、厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入しているため、厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われております。

ですから会社員や公務員などは原則65歳になった時に、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」だけでなく、国民年金から支給される「老齢基礎年金」も受給できるのです。

こういった厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入している方の、国民年金の保険料の納付率は、勤務先の会社などが給与から天引きして納付しているため、ほぼ100%だと思います。

そうなると国民年金だけの納付率である66.8%を確実に引き上げ、バブル期の納付率を超えるかもしれません。

こういった統計を発表しないのは、何かしらの不都合な理由があると推測しております。

例えば保険料の納付率の低迷は、強制徴収を強化する口実になるため、納付率は低く見えた方が良いのかもしれません。

また国民年金と厚生年金保険の加入者を同列に並べると、給与から強制的に国民年金の保険料を徴収されている厚生年金保険の加入者が、不公平な気持ちになってしまうため、同列に並べるような統計は発表しないのかもしれません。

いずれにしろ年金制度全体から見れば、国民年金の保険料を納付していないのは少数派であり、また後で困るのは自分ですから、保険料をきちんと納付した方が良いのであり、また納付できない方は免除を受けた方が良いのです。

posted by FPきむ at 19:52 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする