2018年05月01日

2050年には公的年金の低下で、85歳世帯の約半数が預貯金ゼロへ

平成30年(2018年)5月1日のヨミドクターを読んでいたら、年金給付水準が低下…2050年には世帯主85歳で預貯金ゼロが半数と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『公的年金の給付水準が低下し、2050年には世帯主が85歳の世帯の48.8%で、預貯金がゼロになるなど、金融資産が枯渇する可能性があるとの試算を三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた。

年金制度は少子高齢化が進んでも過度に現役世代の負担が増えないように、物価の上昇に比べて年金給付の増額を抑える「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されている。

同社は65歳時点の貯蓄額や老後の生活費が現在の高齢者並みであると仮定し、マクロ経済スライドによる給付水準低下の影響を試算した。

一方、試算では30歳時点から年間所得の1割を毎年、資産形成にまわすと、金融資産が枯渇する世帯は48.8%から約17ポイント減少し、31.9%になるとした。

65〜74歳の10年間に毎年100万円の就労所得があれば、さらに約17ポイント減り、14.8%になるという』

以上のようになりますが、公的年金の保険料と保険給付のバランスを取るため、年金財政の検証が5年に一度のペースで実施されております。

この検証の際に年金の積立金が、どのように変化していくのかが試算されております。

例えば前回(2014年)の検証の際には、低成長が続く最悪のケースになった場合、2055年度に国民年金の積立金が枯渇すると試算されました。

今回は年金の積立金ではなく、個人の預貯金がどのように変化していくのかが試算されており、とても斬新だと思うと同時に、次のような感想が頭に浮かんできました。

(1)自分達の業界が儲かるような仕組みを提言するのは良くない
この記事だけでは試算の詳細がよくわからなかったので、情報ソースとなったと思われる「〜私的年金に関する3つの政策提言を発表〜」を見たところ、次のような3つの提言が掲載されておりました。

■提言1
企業年金がないすべての被用者に対して脱退選択(オプトアウト)可能な確定拠出型企業年金を導入する。その際、本人の年金口座への直接的な財政支援を行う。

■提言2
企業年金および退職一時金受取の年金化を促進する税制を目指すことにより高齢期所得に安定性をもたらす。

■提言3
公的年金支給開始年齢のオープンエンド化と高齢就労促進によって、長寿リスクに備えるとともに高齢期所得保障に厚みをもたらす。

注:オープンエンド化とは、個人の事情に合わせて年金の支給開始年齢を、自由に選べるようにする事のようです。

以上のようになりますが、いずれについても十分に納得できる、なかなか良い提言をしていると思いました。

ただ提言1が実施された場合には、確定拠出型企業年金のための金融商品を提供する、三菱UFJフィナンシャル・グループ内の企業や、その同業者にビジネスチャンスがやってきます。

また提言2が実施された場合には、年金として支払う前の資産は、どこかに預けたり、運用して増やしたりする必要があるため、三菱UFJフィナンシャル・グループ内の企業や、その同業者にビジネスチャンスがやってきます。

このように自分達の業界が儲かるような仕組みばかりを、提言しているような印象があり、それは良くないと思うのです。

ただ1月7日のブログに記載しましたように、生命保険協会は政府に対して、「長寿安心年金」という個人年金保険の創設を提言していたので、提言というのは基本的に、自分達の業界が儲かるものばかりになるのかもしれません。

(2)老後資金は「資産運用」と「高齢期の労働」以外でも準備できる
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは老後資金を準備する方法として、資産運用と高齢期の労働を薦めておりますが、これらに加えて支出を減らす、つまり節約を実施すれば、更に老後資金を準備できます。

老後資金を準備する方法として節約をイメージする方は、多いような印象があるので、資産運用と高齢期の労働の2つに加えて、節約を実施した場合の試算結果も、示すべきだったと思いました。

なお老後の生活に不安がある方が、どのような節約を実施しているのかについては、6月10日のブログを参照して下さい。

(3)内閣府も同じような内容の警告をしている
民間企業が実施する調査や、その調査結果に基づく提言は、(1)に記載しましたように、自分達の業界が有利になる方向へ偏りがちです。

そこで内閣府という公的機関が行った調査について紹介してみると、7月7日のブログに記載しましたように、50代までに老後資金の準備を何もしていない方は、4割超もいるという調査結果が出ております。

このような調査結果を受けて内閣府は、「若い時期から老後を見据えて準備を始めることが重要」と警告しております。

そのため三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算のように、85歳で預貯金が枯渇しないため、早めに老後資金の準備を始めた方が良いのは、どうやら間違いないようです。
posted by FPきむ at 20:23 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月19日

モリカケの影に隠れて、老齢年金の支給開始年齢をこっそりと68歳へ

平成30年(2018年)4月11日の時事通信を読んでいたら、財務省が年金支給68歳開始案=高齢化対策で審議会に提示−実現には曲折もと題した、次のような記事が掲載されておりました。

『財務省は11日、厚生年金の支給開始年齢を68歳に引き上げる案を財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会に示した。

少子高齢化による年金財政悪化に歯止めをかけるのが狙いで、今後の改革論議に反映させる。ただ国民の反発は避けられず、実現には曲折もありそうだ。

支給開始年齢は60歳から段階的に引き上げられ、男性は2025年、女性は30年までに、65歳となることが既に決まっている。

同省は過去にも年金支給年齢引き上げを訴えてきたが、67〜68歳が多い海外事例の紹介にとどめてきた。

分科会に提出した資料で、同省は「人生100年時代」を迎える中、年金財政悪化により、給付水準低下という形で将来世代が重い負担を強いられると指摘した。

さらに、35年以降に団塊ジュニア世代が65歳になることなどを踏まえ、「それまでに支給開始年齢をさらに引き上げていくべきではないか」と主張。

開始年齢を68歳と明記した上で、「支給開始年齢の引き上げによる受給水準充実」のイメージ図を提示した。ただ、どの程度充実するかといった数値は盛り込まれていない。

来年春にも厚生労働省は5年に1度実施する年金財政検証の結果を示す。これを基に将来の年金制度に関する議論が始まる見通しだ』

以上のようになりますが、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)の支給開始年齢を、原則65歳から引上げするという案は、今まで何度も登場してきました。

しかし「マスコミが批判的に取り上げる→国民の大きな反発が発生→しばらくすると撤回」という流れを、繰り返してきたため、実現には至っておりません。

ただ最近のマスコミはモリカケや、その後に発生した事務次官のセクハラ問題ばかりを取り上げ、老齢年金の支給開始年齢の引上げについては、ほとんど取り上げなかったため、今回は国民の大きな反発は発生しませんでした。

そのため老齢年金の支給開始年齢を原則65歳から、68歳に引上げするという案は、しばらく議論が続いていきそうです。

また平成31年(2019年)に実施される予定の、5年に1度の年金財政検証の際に、老齢年金の支給開始年齢を68歳に引上げするという案を元にした、試算結果が発表されるかもしれません。

それにしてもモリカケや、事務次官のセクハラ問題が世間を騒がしているこの時期に、なぜ国民の生活を大きく変えるような案を、財務省は提示したのでしょうか?

それはおそらくこれらの問題が世間を騒がしている間に、その影に隠れてこっそりと提示すれば、マスコミは熱心に取り上げないため、国民の反発が発生しにくいと考えたのかもしれません。

あくまで個人的な推測であり、本当はもっと別の理由があったのかもしれませんが、この推測の通りだとしたら、財務省はさすがに頭が良いと思います。

これに加えてもう一点だけ、財務省は頭が良いと思った事があります。

それは老齢年金の支給開始年齢を、原則65歳から68歳に引上げしても、65歳から68歳になるまでに受給できた老齢年金はカットにならず、68歳から支給される老齢年金に上乗せされると説明している点です。

その結果として平均寿命まで生きれば、老齢年金の支給開始年齢が68歳になっても、生涯に受け取れる老齢年金の総額は、65歳の時と同じになるそうです。

本当にそれが事実だとしたら、老齢年金の支給開始年齢が68歳になっても、損はしないという話になりますが、国民の反発を避けるための、方便としか思えないのです。

その理由として平均寿命まで生きれば、生涯に受け取れる老齢年金の総額に変化がないとしたら、わざわざ時間と手間をかけて、老齢年金の支給開始年齢を68歳に引上げる必要はなく、今まで通り65歳で良いという話になるからです。

なお日本人の平均寿命は毎年少しずつ延びており、平成28年(2016年)は男性が80.98歳、女性は87.14歳となりました。

それに対して平成25年(2013年)のデータになりますが、日本人の健康寿命(健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間)は男性が71.19歳、女性が74.21歳になります。

つまり日本人は以前より長生きできるようになっても、アクティブに過ごせる期間は意外に短いのです。

こういったデータを見ていると、老齢年金の支給開始年齢を68歳に引上げしても、生涯に受け取れる老齢年金の総額に変化がないのなら、今まで通り65歳で良いのではないという気持ちが、更に強くなってくるのです。
posted by FPきむ at 19:58 | 年金の最新情報と法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする