2014年08月26日

遺族給付の種類と受給できる遺族とは

公的年金と言えば年をとった時に支給される、「老齢給付」を思い浮かべますが、法律で定められた障害等級に該当した事を支給事由とする「障害給付」、または公的年金の被保険者が死亡した事を支給事由とする、「遺族給付」があります。

このうちの老齢給付と障害給付は、障害手当金(5月18日のブログを参照)を除き、「基礎年金」の上乗せとして「報酬比例部分」が支給されるという、シンプルな構造になっているので、どんな給付があるのか迷わないと思います。

【第2号被保険者の場合】 
2階:報酬比例部分(老齢厚生年金、障害厚生年金)
1階:基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金)  

【第1号、第3号被保険者の場合】 
1階:基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金) 

注:第1号〜第3号被保険者といった、国民年金の被保険者の種別の違いについては、9月20日のブログを参照して下さい。

しかし遺族給付については次のように、その種類が多く、またそれを受給できる遺族も、老齢給付や障害給付と違って複数おり、とても複雑になっております。

(1)第1号被保険者が死亡した場合
遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金が支給されますが、これらを受給できる遺族は次のようになります。

【遺族基礎年金】
遺族基礎年金の支給要件については、8月14日のブログで紹介しましたが、これを受給できるのは「子のある配偶者」、または「子」になります。

ただこの「子」とは、次のような要件を満たす者になりますので、子が高校を卒業する程度の年齢に達している場合には、遺族基礎年金を受給できなくなります。

・18歳に達した日以後の、最初の3月31日までの間にある子

・障害等級の1級もしくは2級に該当する、20歳未満の子

【寡婦年金】
寡婦年金の支給要件については、1月15日のブログで紹介しましたが、これを受給できるのは「夫との婚姻関係(事実婚を含む)が、10年以上継続した65歳未満の妻」になります。

なおこの寡婦年金については、子の有無は関係ありませんので、子がいなくて遺族基礎年金を受給できなかった妻も、こちらは受給する事ができます。

【死亡一時金】
死亡一時金の支給要件については、1月13日のブログで紹介しましたが、これを受給できる遺族の範囲と順位は、次のようになります。

第1順位:配偶者
第2順位:子
第3順位:父母
第4順位:孫
第5順位:祖父母
第6順位:兄弟姉妹

なお第1順位の配偶者のうち妻については、寡婦年金を受給できる場合もありますが、両者を受給する事はできないので、どちらか一方を選択しなければなりません。

また同一の死亡について、遺族基礎年金を受給できる場合には、死亡一時金は支給されません。

(2)第2号被保険者が死亡した場合
遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給されますが、これらを受給できる遺族は次のようになります。

【遺族基礎年金】
第1号被保険者と同様の取り扱いになりますが、子がいなくて遺族基礎年金を受給できない、40歳以上の妻については、第1号被保険者と違い、中高齢寡婦加算か経過的寡婦加算(9月18日のブログを参照)を、受給できる可能性があります。

また子が高校を卒業する程度の年齢に達して、遺族基礎年金を受給できなくなった時点で、妻の年齢が40歳以上の場合にも、中高齢寡婦加算か経過的寡婦加算を、受給できる可能性があります。

【遺族厚生年金】
遺族厚生年金の支給要件については、7月30日のブログで紹介しましたが、これを受給できるのは、次のような遺族(詳細については7月15日のブログを参照)のうち、最先順位にある者になります。

第1順位:配偶者、子
第2順位:父母
第3順位:孫
第4順位:祖父母

なお第1号被保険者が死亡しても原則として、遺族厚生年金は支給されませんが、次のような者については、遺族厚生年金を受給できる場合があります。

・退職などにより厚生年金保険の被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある病気やケガで、初診日から5年以内に死亡した者

・障害等級の1級もしくは2級に該当する、障害厚生年金の受給権者

・老齢厚生年金の受給権者、または老齢厚生年金の受給資格期間(6月27日のブログを参照)を満たしている者】

(3)第3号被保険者が死亡した場合
会社員である夫が失業して一時的に、妻が加入する厚生年金保険の第3号被保険者になっている時に死亡した場合など、限られたケースで遺族基礎年金は支給されますが、原則的には支給されません。

この理由として遺族給付を受給できるのは、死亡した者によって生計を維持(7月28日のブログを参照)していた遺族であり、第2号被保険者の被扶養者である第3号被保険者は、この要件を満たすのが難しいからになります。

なお遺族給付の中で死亡一時金は例外的に、生計維持までは求められておらず、死亡した者と生計を同じくしていた、つまり同居して家計を共にしていた程度で良いのです。

ですから昭和61年4月に、第3号被保険者の制度が始まる前に3年以上、国民年金に任意加入していた第3号被保険者が死亡した場合、その配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹は、死亡一時金を受給できる場合があります。
posted by FPきむ at 20:29 | 遺族給付の基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月23日

内縁関係の配偶者に遺族年金が支給される場合とは

平成26年(2014年)1月に大阪地裁が戸籍上の妻より、内縁関係の妻の方が遺族年金を受給する資格があると言い渡し、話題になりましたが、詳細については「MSN産経ニュース」を参照して下さい。

遺族基礎年金の支給要件については8月14日のブログで、また遺族厚生年金の支給要件については7月30日のブログで紹介しましたが、配偶者は他の遺族より優先して、遺族年金を受給する事ができます。

この配偶者には届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者、つまり内縁関係にある者も含まれますが、内縁関係にあると認定されるには、次のような要件を満たさなければなりません。

・当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実を、成立させようとする合意があること

・当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること

注:これらの要件を満たしていても、近親婚などの反倫理的な内縁関係の場合には、内縁関係にあると認定されません。

具体的には住民票の住所が同一であるだけでなく、次のような点も重要になってきます。

・健康保険の被扶養者(2月4日のブログを参照)になっていること

・会社などが支給している、扶養手当の対象になっていること

・葬儀の喪主になっていること

・葬儀費用を負担していること

・二人の氏名が併記された郵便物があること

・加給年金(8月10日のブログを参照)の対象になっていること

ただ戸籍上の配偶者がいる場合には、その者との関係が、実態をまったく失っている状態でなければ、内縁関係の配偶者ではなく、戸籍上の配偶者に遺族年金が支給されます。

この「実態をまったく失っている状態」とは、日本年金機構が関係者に発した通達によると、次のような状態を意味しております。

注:通達とは行政機関内部の文章で、上級機関が下級機関に対して法令の解釈などを示したものです。

・当事者が離婚の合意に基づいて、夫婦としての共同生活を廃していると認められるが、戸籍上の届け出をしていないとき

・一方の悪意の遺棄によって、夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間(おおむね10年以上)継続し、当事者双方の生活関係が、そのまま固定していると認められるとき

なお「共同生活を廃している」、または「共同生活が行われていない」と認められるためには、次のような要件をすべて満たす必要があります。

・当事者が住居を異にすること

・当事者間に経済的な依存関係が、反復して存在していないこと

・当事者間の意思の疎通を表す音信、または訪問等の事実が、反復して存在していないこと

しかし大阪地裁の判決では「共同生活を廃している」、または「共同生活が行われていない」と判断するうえで、この3つの要件は絶対的なものではなく、次のような要素を検討すべきだとしました。

・別居の経緯と期間

・夫婦関係を維持または修復するために努力しているか

・別居後の経済的依存状況

・別居後の音信や訪問の状況

・内縁関係がどこまで強固か

以上のようになりますが、大阪地裁の判決が確定した場合には、内縁関係の配偶者に遺族年金が支給される要件は、多少変更されるかもしれません。

注:敗訴した戸籍上の妻は、大阪高裁に控訴したようなので、この判決は確定した訳ではありません。

しかしこの判決においても、戸籍上の関係より実態を重視する、従来からの考え方に変更はありません。

そのため戸籍上の配偶者と別居して、生計維持関係(7月28日のブログを参照)がなくなり、内縁関係の配偶者との生活がおおむね10年以上継続すれば、内縁関係の配偶者に遺族年金が支給される可能性が高くなります。
posted by FPきむ at 20:21 | 遺族給付の基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする