2012年10月16日

年金時効特例法と修正申告

平成19年(2007年)7月に年金時効特例法が施行されましたが、この法律の施行後は年金記録確認地方第三者委員会などにより、年金記録の訂正が認められた場合には、5年の時効を超えて増額分の年金が支払われるようになりました。

正確に表現しますと厚生年金原簿や、国民年金原簿の記録の訂正が行われた上で、それらの保険給付を受ける権利に係わる裁定が行われた場合、5年の時効が撤廃されるのです。

ですから年金の請求を忘れてしまい5年が経過した場合などは、従来通り時効は5年になりますので、5年を超えた分の年金は受給できないのです。

例えば65歳から老齢基礎年金のみを受給していた方がおり、75歳になってから国民年金の加入記録が1年分見つかった場合、本来受給できるはずの年金額より、毎年19,663円(下記の計算式を参照)だけ少なかった事になります。

786,500円(平成24年度の老齢基礎年金の金額)÷40=19,662.5
※老齢基礎年金は40年で満額になりますので、40で割ると1年分が算
出できます。

この金額に50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる端数処理を実施しますと、19,663円になります。

年金時効特例法が施行されるまでは、年金記録の訂正が認められても、5年分の98,315円(19,663円×5年)しか受給できませんでした。

しかし年金時効特例法が施行されてからは5年を超えて、10年分の196,630円(19,663円×10年)が受給できるようになりました。

上記は老齢基礎年金の例になりますが、次のような給付(年金と一時金)も年金記録の訂正が認められれば、年金時効特例法の対象になります。

・国民年金法に基づくすべての給付および未支給年金

・厚生年金保険法に基づくすべての給付および未支給の保険給付

また過去の増額分の年金は、一時金として一括で支払われる事になりますが、本来の支払期日に所得が発生したものとされます。

注:本来の支払期日とは、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日になりますが、前2ヶ月分が支払われますので、例えば2月15日に支払われるのは、前年の12月分と1月分になります。

ですから老齢または退職を原因とする年金を、雑所得として確定申告していた方は、その雑所得が増額した事になるので、修正申告をする必要があります。

注:老齢基礎年金や老齢厚生年金などの、老齢または退職を原因とする年金は、雑所得として所得税や住民税が課税されますが、障害基礎年金や障害厚生年金など障害を原因とする年金、もしくは遺族基礎年金や遺族厚生年金など死亡を原因とする年金は非課税になります。

ただ5年を超える期間は国税徴収権の消滅時効(5年)の対象になり、それを超える期間については課税される事はありませんので、修正申告は5年分で良いという事になります。

修正申告により雑所得の金額が増えると、課税される所得税や住民税の金額も増えますが、過去の増額分の年金を一時金で受給する際には、税金が源泉徴収されておりますので、雑所得の金額によっては源泉徴収された税金が、還付される場合もあります。

また修正申告により雑所得の金額が増えると、国民健康保険や介護保険の保険料(税)も増えますが、2年(国保税は3年)の時効がありますので、それより前の保険料については影響を与えません。

注:国民健康保険に要する費用の徴収方式としては、「保険料方式」と「保険税方式」があり、前者の時効は2年に対して、後者の時効は3年になりますが、多くの市区町村では後者の保険税方式を採用しております。

以上が年金時効特例法で時効が撤廃された場合と、修正申告の関係になりますが、年金記録の訂正により年金額が増額された方が、既に死亡している場合には、増額分の年金が一時金として、その遺族に一括で支払われます。

注:一時金を受給できる遺族は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順になりますが、年金を受給していた方が死亡した当時、生計を同一にしていなければなりません。

このように年金の増額分を遺族が一時金として受給した場合、それを受給した年の一時所得として確定申告をしなければなりませんが、下記の計算式で算出した一時所得の金額がゼロかマイナスなら、確定申告をする必要はありません。

一時所得の金額=総収入金額−収入を得るために支出した金額−特別控除額(最高50万円)

また一時所得も雑所得と同じように、5年を超える期間は国税徴収権の消滅時効の対象になりますので、それを超える期間に関する一時所得は課税の対象になりません。
posted by FPきむ at 20:44 | 年金と税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月04日

社会保険料控除とは

社会保険料控除に該当する保険料は下記のようになりますが、社会保険料控除に該当すると、その全額を所得から控除する事ができますので、節税効果はかなり高くなります。

また所得者本人と生計を一にする親族が負担する事になっている社会保険料を、所得者本人が支払った場合には、その支払った金額は所得者本人の社会保険料控除として、所得から控除できます。

例えば夫が生計を一にする妻や子供の、国民年金の保険料を代わりに支払った場合、その金額を社会保険料控除として、夫の所得から控除する事ができますが、12月1日のブログで解説しましたように、これが「小規模企業共済等掛金控除」との一番の違いです。

■社会保険料控除に該当する保険料の例
【健康保険、雇用保険、船員保険または農業者年金の保険料で、被保険者として負担するもの】
転職者については源泉徴収票を確認し、前職分の保険料も合計して年末調整を行います。

【健康保険法附則または船員保険法附則の規定により、被保険者が承認法人に支払う負担金】
健康保険組合が運営している健康保険に加入している会社員の方は、法定給付に上乗せして付加給付を受けられる場合があります。

一方協会けんぽが運営している健康保険に加入している会社員の方も、承認法人に負担金を支払う事により付加給付のようなものが受けられますが、働いている会社が承認法人を結成しており、それに加入している方はとても珍しいので、ほとんどの方には関係のない社会保険料控除です。

【国民健康保険の保険料または国民健康保険税】
年末調整や確定申告において証明書を添付する必要はありませんが、もちろん保険料の金額は正確に申告する必要があります。

【後期高齢者医療制度の保険料】
夫婦共に後期高齢者医療制度の対象者で、夫と妻の保険料をどちらも夫の口座から振替により支払った場合、その金額分は社会保険料控除として、夫の所得から控除する事になります。

【介護保険法の規定による介護保険料】
65歳以上で老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年金などの合計額が、年額18万円以上ある方は、介護保険料が年金から特別徴収(年金からの天引)されますが、その金額分の社会保険料控除は、特別徴収された年金の受給者に適用されます。

これは老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年金などの年金から、後期高齢者医療制度の保険料が特別徴収されている場合も同じ取扱いです。

【国民年金の保険料で被保険者として負担するもの、および国民年金基金の加入員として負担する掛金】
日本年金機構または各国民年金基金が発行した、保険料等の領収書や証明書が必要になります。

ただし年末調整の時に証明書類の交付を請求中のため、証明書類が確認できない場合でも、翌年1月末までに提出または提示する事を条件として、これらの保険料または掛金を社会保険料控除として所得から控除したうえで、年末調整を行っても良い事になっております。

【厚生年金保険の保険料で被保険者として負担するもの、および厚生年金基金の加入員として負担する掛金】
転職者については源泉徴収票を確認し、前職分の保険料も合計して年末調整を行います。

【労働者災害補償保険の特別加入者として負担する保険料】
一般の労働者は労働者災害補償保険(労災保険)の保険料を支払いませんが、特別加入者は自分で保険料を支払うので、それは社会保険料控除の対象になります。

【国家公務員共済組合法、または地方公務員等共済組合法の規定による掛金(地方公務員等共済組合にあっては特別掛金を含みます)】

【私立学校教職員共済法の規定により加入者として負担する掛金】

【恩給法の規定による納金】

【地方公共団体の条例により組織された互助会が行う職員の相互扶助に関する制度で、一定の要件を備えているものとして所轄税務署長の承認を受けた制度に基づき、その互助会の構成員である職員が負担する掛金】

【公庫等の復帰希望職員の掛金】

以上が社会保険料控除の対象となる保険料ですが、1月1日〜12月31日
までの間
に給与から差し引かれた社会保険料、または自分で支払った社会保険料を集計して、社会保険料控除の金額を算出します。

自分で支払う必要のある社会保険料は、1月1日〜12月31日までの間に実際に支払ったものだけが控除の対象になりますので、納付期日が到来していても実際に支払っていないものは対象になりません。

また翌年以後に納期の期日が到来する保険料を、一括して支払った場合の「前納保険料」については、次の算式により計算した金額が、本年度中に支払った社会保険料となります。

前納保険料の総額(前納により割引をされた場合には、その割引後の金額)×前納保険料に係る本年度中に到来する納付期日の回数/前納保険料に係る納付期日の総回数

ただし前納の期間が1年以内のものについては、所得者本人が本年度の所得控除とする事を希望した場合、年度をまたぐ事なく一括して、本年度の所得から控除する事ができます。
posted by FPきむ at 19:44 | 年金と税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする