2011年10月11日

退職金に課税される税金

数年前にある会社で退職金を退職の時に受け取るのか、それとも毎月の給与に上乗せして受け取るのか、入社した時に選択できる制度がスタートしたと報道されておりました。

将来の人生設計をどう考えるかによって意見は分かれると思いますが、課税される税金の大小で決めるなら、退職時に受け取った方が良い場合が多いのです。

また毎月の給与に上乗せして退職金を受け取ると、標準報酬(月額・日額)が上がりますので社会保険料が高くなり、給与の手取りが減ってしまうというマイナス面もあります。

退職金を退職の時に受け取ると退職所得として所得税が課税され、退職所得は以下のように計算しますが、原則として他の所得(例えば会社員の方なら給与所得など)と分離して所得税の金額を計算します。

退職所得=(退職金の金額−退職所得控除額)×1/2

※退職所得控除額の計算
・勤務年数が20年以下→40万円×勤務年数
(80万円に満たない場合は80万円)

・勤務年数が20年超→800万円+70万円×(勤務年数−20年)

障害者になった事が直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に100万円を加えた金額となり、また1年未満の端数が生じてしまった時には1年に切り上げて計算します(例えば勤務年数が10年2ヶ月の場合には、11年で計算します)。

このようにして算出された退職所得に下記の所得税の税率を掛け、その後に控除額を引きますが、その結果導き出された金額が「退職金に課税される税金(所得税)」になります。

※退職所得の金額→税率−控除額
・195万円以下→5%
・195万円を超え330万円以下→10%−97,500円
・330万円を超え695万円以下→20%−427,500円
・695万円を超え900万円以下→23%−636,000円
・900万円を超え1,800万円以下→33%−1,536,000円
・1,800万円超→40%−2,796,000円

以上が退職金に課税される税金の計算方法ですが、退職金を受け取る時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、会社が上記のような計算をして、その計算により導き出された所得税を退職金から控除するので、退職した方は特に何もする必要はありません。

もし「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、会社は上記のような計算をせず、ただ退職金の20%を税金として控除しますが、この方法だと多くの方が税金を取られすぎになってしまいますので、確定申告をして源泉徴収された税金を取り戻しましょう。

最後にブログの冒頭で退職金は税金の大小で考えるなら、退職時の受け取りにした方が良いと書いた理由について説明しますが、退職所得控除額が深く関係してきます。

日本経済団体連合会が日本国内の約2,000社に上る大手企業を対象に隔年で実施してきた、退職金および年金に関する最新実態調査の結果によると、2010年9月に60歳で定年退職を迎えた「管理・事務・技術労働者」総合職の平均退職金額は大学卒で2,443万円、高校卒で2,185万円だったそうです。

仮に高校を卒業してから42年間同じ会社で働き、60歳の定年の時に2,185万円の退職金を受け取ったAさんという方がいたとしますと、退職金に課税される税金は以下のように計算できます。

・退職所得控除額の計算
800万円+70万円×(42年−20年)=2,340万円

・退職所得の計算
(2,185円−2,340万円)×1/2=0

このように退職所得はゼロになりますので、税率を掛ける必要もありませんが、勤務期間が長くなるほど退職所得控除額は大きな節税効果をもたらします。

一方このAさんが毎月の給与に上乗せして退職金を受け取っていると、上乗せ分は給与所得として所得税が42年間課税されるので、おそらくかなりの金額になるのではないかと思います。

追記:
上記で計算した所得税の他に住民税が課税されますが、

退職所得=(退職金の金額−退職所得控除額)×1/2

で計算した退職所得に税率の10%をかけて、更にそれから「10%を差し引いたもの」が住民税の金額になります(100円未満は切り捨て)。

ただし平成25年(2013年)1月1日以後に支払われる退職金から、10%を差し引く事ができなくなるので、その点は注意が必要です。
posted by FPきむ at 20:01 | 年金と税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月13日

年金所得者の申告不要制度の創設

平成23年(2011年)度の税制改正法案が成立しましたが、年金に関するものでは年金所得者の申告不要制度の創設があります。

これはどういう制度かと言いますと、年金所得者のうち公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の他の所得金額が20万円以下の者については、確定申告をする必要がなくなります。

この制度は平成23年(2011年)分以後の所得税から、適用されるとなっておりますので、平成24年(2012年)からは確定申告をしなくても良い事になります。

つまり来年から申告不要制度が始まりますが、それにもかかわらずこの制度の情報をあまり入手できず、混乱が生じるのではないかと感じてしまいましたので、情報不足を補足するような話を少し書いてみたいと思います。

(1)公的年金等の範囲
申告不要になるのは公的年金「」と書いてありますので、老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金などの公的年金以外でも公的年金に近いものであれば、申告不要制度を適用できるはずです。

これについては情報を入手できなかったので、あくまで推測になってしまいますが、年金所得者の必要経費として認められている「公的年金等控除」の範囲と、同じになるのではないかと個人的には考えます。

ですから適格退職年金契約に基づいて支給される年金、厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金などの制度から支給される年金なども、公的年金等の範囲に含まれると思います。

(2)確定申告はやっぱり必要
会社員の方は確定申告をしておりませんが、お勤めしている会社が確定申告の代わりとなる年末調整をしてくれます。

例えば生命保険に加入している方が生命保険料控除証明書を会社に提出すれば、それに基づいて会社は「生命保険料控除」の金額を計算しますが、その後に「生命保険料控除」を引いた所得を導きだし税額を再計算するので、控除前より税金が安くなり、源泉徴収されていた所得税が還付されるのです。

しかし年金所得者の申告不要制度ができても、会社に代わり日本年金機構が年末調整をしてくれるようになった訳ではありませんし、そもそも日本年金機構が把握しているのは「扶養親族等申告書」に書いてある控除対象配偶者と扶養親族だけです。

ですから下記のような方は年金所得者の申告不要制度ができても、確定申告をして源泉徴収されていた所得税を取り戻した方が良いのです。

・年金から直接控除された社会保険料以外に社会保険料(国民健康保険料、年金の金額が低く源泉徴収されていない場合の介護保険料など)の支払いがある場合

・生命保険、医療保険、介護保険、個人年金保険、地震保険などの保険料の支払いがある場合

・災害、盗難、横領により住宅や家財などに損害を受けた場合

・一定額以上の医療費の支払いがある場合

・住宅ローンが残っており住宅ローン控除を受けたい場合

・「扶養親族等申告書」に記載漏れや誤りがあった、もしくは年の途中で扶養親族が増えたなどの場合

(3)住民税は基準が違う
公的年金等に係る雑所得以外の他の所得金額が20万円以下の者については、確定申告をする必要がなくなりますが、これは所得税の話だけであり住民税は基準が違うのです。

ですから公的年金等に係る雑所得以外の所得があれば、それがたとえ20万円以下であっても、住所地の市区町村役場などに「市民税・県民税申告書」を提出する事により、住民税の申告をしなければなりません。

追記:
平成26年(2014年)の法改正により、源泉徴収の対象になっていない、外国の公的年金などの支給を受ける者については、この申告不要制度を利用できなくなります。

なおこの法改正は、平成27年(2015年)以後の所得税に適用されます。
posted by FPきむ at 20:12 | 年金と税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする