2015年11月18日

平成27年(2015年)10月から「廃業準備貸付け」が開始へ

小規模企業共済に加入している方は、払い込んだ掛金の合計額の範囲内で、これを運営する中小企業基盤整備機構(以下では機構で記述)から、現金の貸付けを受けられるのです。

これは「契約者貸付制度」と呼ばれており、従来から次のような6種類の契約者貸付があります。

「一般貸付け」(1月26日のブログを参照)
「傷病災害時貸付け」(1月31日のブログを参照)
「創業転業時・新規事業展開等貸付け」(2月2日のブログを参照)
「福祉対応貸付け」(2月5日のブログを参照)
「緊急経営安定貸付け」(2月7日のブログを参照)
「事業承継貸付け」(2月9日のブログを参照)

また平成27年(2015年)10月からは、これらの契約者貸付に加えて、「廃業準備貸付け」が開始されました。

これは次のような廃業に要する資金を、廃業前に機構から借りられる契約者貸付です。

・設備の処分費用
・事業債務の清算(買掛金や借入金の返済、従業員の退職金の支払い)
・廃業の準備に要する資金

この廃業準備貸付けの創設により、個人事業の廃止や会社の解散が、円滑に行なわれやすくなりますが、貸付の条件などは次のようになっております。

(1)貸付けが受けられる条件
一般貸付の資格を取得しており、かつ1年以内の廃業の意思および計画を、持っている方になります。

具体的には次のような計画を機構に提出して、1年以内の廃業の意思および計画があることの、確認を受ける必要があります。

■個人事業主
「廃業届の提出」の計画(複数の事業を営んでいる場合は、全ての事業に関するもの)

■会社役員
「法人の解散」の計画(複数の法人の役員の場合は、共済加入にかかわる法人に関するもの)

(2)貸付けが受けられる限度額
掛金の納付月数により契約者の払い込んだ掛金合計額の、7割〜9割の範囲内で廃業準備貸付けを受ける事ができますが、上限は1,000万円で下限は50万円になります。

なお既に他の種類の契約者貸付を受けている場合には、1,500万円から他の種類の契約者貸付の貸付金を控除した額が、廃業準備貸付けが受けられる限度額になります。

(3)貸付金の使途
・事業の廃業準備資金

(4)貸付期間
・12ヶ月(1年)

(5)貸付金の償還方法(貸付金の返し方)
計画通りに廃業しなかった場合には原則として、「期限一括償還」になります。

また計画通りに廃業した場合には、A共済事由に該当し、共済金Aを請求できますので、共済金から貸付金を控除するという方法により、貸付金を返済できるのです。

ただ共済金の請求が遅れてしまった場合、償還期日以降は遅延損害金(年14.6%)の対象となりますので、早めに共済金の請求手続きを済ませる必要があります。

(6)貸付金の利率
平成27年10月1日以降の適用利率は0.9%になりますが、金利情勢等を考慮して決定されます。

(7)貸付金の利子の支払方法
貸付時に一括して前払いします。

(8)貸付金の延滞利子
貸付金が約定償還日を過ぎても償還されない場合、償還すべき元本に対して年14.6%の割合で遅延利子を徴収されますが、延滞日数が5日以内の時は、延滞利子は徴収されません。

(9)貸付金の保証人、担保
契約者の払い込んだ掛金合計額が担保の代わりになっておりますので、廃業準備貸付けを受ける場合には担保が必要なく、また保証人も必要ありません。

(10)貸付金の請求手続き
廃業準備貸付けの請求手続きは、「小規模共済融資課」が窓口になっております。

(11)申込受付期間
事業廃業予定日の1年前から申込ができます。

(12)貸付けが受けられる条件を満たせなかった場合
廃業予定日までに廃業を行わなかった場合、借主は未償還の貸付金(延滞利子および約定利子を含む)を、償還する義務が生じます。

このような場合に廃業以外の事由で、共済契約の共済金等が請求された場合には、機構は共済金等の額から未償還の貸付金を控除する事になります。
posted by FPきむ at 20:43 | 小規模企業共済で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月31日

小規模企業共済の不服申立てはあっせんが候補になる

厚生年金保険の「被保険者の資格(2月21日のブログを参照)」、「標準報酬月額(10月3日のブログを参照)と標準賞与額(2月10日のブログを参照)」、「保険給付」に関する処分に不服のある者は、社会保険審査官に対して審査請求をする事ができます。

また国民年金の「被保険者の資格(2月22日のブログを参照)」、「保険給付」、「保険料その他国民年金法の規定による徴収金」に関する処分に不服のある者も、社会保険審査官に対して審査請求をする事ができます。

そして審査請求に対する社会保険審査官の決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をする事ができますが、審査請求をした日から2ヶ月以内に決定がない時も、審査請求人は社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、再審査請求をする事ができます。

この審査請求や再審査請求を「不服申立て」と言いますが、不服申立てには費用がかかりません(ただ書類を送る郵送代などはかかります)。

また不服申立ては裁判より、手間や時間などが少なくて済みますので、国民にとってメリットのある制度になります。

しかし小規模企業共済を運営する中小企業基盤整備機構との間に、共済金などに関するトラブルが発生しても、審査請求や再審査請求などの不服申立ては利用できないのですが、小規模企業共済法には次のように、その代わりとなる制度について記載されております。

■第28条(あっせん)
『共済契約の成立若しくはその解除の効力、共済金等、掛金又は申込金に関して、機構と共済契約の申込者又は共済契約者若しくはその遺族との間に紛争が生じた場合において、共済契約の申込者又は共済契約者若しくはその遺族から請求があつたときは、経済産業大臣は、その紛争の解決についてあつせんをすることができる。

2 前項のあつせんの請求の手続その他あつせんに関し必要な事項は、経済産業省令で定める』

また小規模企業共済法施行規則には、「あつせんの請求の手続その他あつせんに関し必要な事項」について、次のように記載されております。

■第25条(あっせんの請求手続)
『法第二十八条第一項の規定によるあつせんの請求は、次に掲げる事項を記載したあつせん請求書を経済産業大臣に提出して行なわなければならない。

一  請求者の氏名および住所
二  紛争の内容
三  紛争の経過概要

■第26条(あっせんの経過概要の通知)
経済産業大臣は、あつせんを終了したときは、その経過概要を請求者および機構に通知するものとする』

以上のようになりますが、不服申立てとあっせんは似ている一方、次のような違いがあります。

(1)一審制と二審制
不服申立ては原則として、審査請求の後に再審査請求を行なう二審制になっておりますが、あっせんは1回しかできませんので、あっせんの結果に納得できなければ、裁判を起こすしかありません。

(2)時効の中断
審査請求または再審査請求といった不服申立ては、裁判上の請求とみなされますので、時効を中断する効果を持ちます。

これは例えば国民年金や厚生年金保険の保険給付を受給する権利、もしくは保険料などを徴収する権利には、5月16日のブログで紹介したような時効がありますが、この時効を中断する効果により、それぞれの権利を主張できる期間は先延ばしされます。

しかしあっせんの請求は、裁判上の請求とみなされないので、時効を中断する効果がありません。

ただあっせんに係る紛争に解決の見込みがないと認められて、あっせんが打ち切られた場合において、あっせんを請求した者が、その旨の通知を受けた日から1ヶ月以内に、あっせんの目的となった請求について裁判を起こした時は、あっせんの請求があった時に、裁判上の請求があったものとみなされます。

つまりあっせんの請求があった時から時効は中断されますので、不服申立てと同様の状態になります。

(3)審査請求(あっせん)と裁判の位置付け
厚生年金保険や国民年金に関する処分の取り消しを求める訴えは、社会保険審査官の決定を経た後でなければできません。

しかし小規模企業共済に関する処分の取り消しを求める訴えは、経済産業大臣のあっせんを経た後でなくても良いので、あっせんをやる前に裁判を起こす事ができ、またあっせんと同時進行で裁判を起こす事もできます。

以上のようになりますが、中小企業基盤整備機構のホームページを見ても、あっせんの手続きなどについて何も記載されておりません。

しかし条文にはきちんと記載されているので、共済金などに関するトラブルが発生した場合には、中小企業基盤整備機構に対してあっせんを受けたいという意思を、伝えるべきだと思います。
posted by FPきむ at 20:38 | 小規模企業共済で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする