2017年05月19日

平成29年1月から海外居住者も、国民年金基金に加入できるよう改正へ

先日久しぶりに国民年金基金連合会のウェブサイトを見ていたら、「平成29年1月から海外に居住されている方で国民年金に任意加入されている方も国民年金基金に加入できるようになりました」と題した、次のようなお知らせが記載されておりました。

『国民年金基金は、これまで日本国内に住所を有し、国民年金の保険料を納めている20歳以上60歳未満の方および60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入されている方が加入できる制度でしたが、平成29年1 月から、海外に居住されており国民年金に任意加入されている方も国民年金基金に加入できるようになりました。

【ご注意いただきたいこと】
○原則として国内協力者(配偶者、子、父母、兄弟姉妹など)を指定いただき、本人に代わって諸手続をおこなっていただきます。 ※国内協力者がいない場合は、基金にお問合せください。

○掛金は、ご指定の金融機関(基金が指定する金融機関の国内に開設している預貯金口座)から口座振替にて納付いただくこととなります。なお、国民年金保険料と基金の掛金を合算して納付いただくことはできません。

○加入の手続や保険料納付方法などの詳細につきましては、最後に住所を有していた都道府県の国民年金基金又は加入していた職能型の国民年金基金にお問合せ下さい。

○基金ご加入後にご自分の都合で任意に脱退及び中途解約することはできません』

以上のようになりますが、要するに平成29年(2017年)1月から、海外居住者であっても、国民年金に任意加入していれば、国民年金基金に加入できるよう、改正されたというものです。

国民年金基金は自営業やフリーランスなどの、国民年金の第1号被保険者が利用できる制度です。

つまり国民年金の第2号被保険者である会社員や公務員、国民年金の第3号被保険者である専業主婦などは、加入資格がありません。

また国民年金の第1号被保険者であっても、国民年金の保険料をきちんと納付している方でないと、加入資格がありません。

もちろん国民年金の保険料を納付しないのは違法なのですが、合法的に保険を納付していない方もおり、それは例えば海外居住者です。

その理由として国民年金に強制加入しなければならないのは、日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者になるため、海外に居住すると国民年金に加入しなくても良いからです。

ただ保険料を納付しないと、原則65歳から支給される老齢基礎年金を受給できなくなったり、その金額が少なくなったりするので、1月18日のブログに記載しましたように、国民年金に任意加入して、保険料を納付できます。

冒頭に記載したお知らせは、海外に居住していても、このように国民年金に任意加入している方であれば、国民年金基金に加入できるようになったというものです。

国民年金は海外に居住している場合の他に、次のように60歳から70歳になるまで、任意加入できる制度があります。

■60歳から65歳になるまで任意加入できる制度
普通の任意加入制度(1月8日のブログを参照)

■65歳から70歳になるまで任意加入できる制度
特例の任意加入制度(1月10日のブログを参照)

このうちの普通の任意加入制度を利用して、国民年金に任意加入している方は、9月4日のブログに記載しましたように、平成25年(2013年)4月から、国民年金基金に加入できるようになっております。

そうなると今回の改正によって、更に国民年金基金に加入しやすくなったというわけです。

ところで日銀が平成28年(2016年)1月に、マイナス金利政策を導入してから、貯蓄型の生命保険(終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険など)の保険料が、大幅に値上げされております。

国民年金基金もこれらと同様に、5年毎に実施される「財政再計算」で予定利率などが見直しされて、平成31年(2019年)4月から、掛金が値上げされると予想しております。

この影響による新規加入者の減少を防ぐには、海外居住者に対する加入資格の拡大くらいでは効果が薄いので、国民年金の第3号被保険者である専業主婦に対する加入資格の拡大など、もっと大胆な改正を実施すべきだと思うのです。

平成29年(2017年)1月から専業主婦であっても、確定拠出年金(個人型)に加入できるようになっているので、まったくありえない話ではないはずです。
posted by FPきむ at 20:18 | 国民年金基金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月23日

国民年金基金が平成31年(2019年)4月をめどに合併を検討へ

平成28年(2016年)7月5日の時事ドットコムを読んでいたら、国民年金基金、合併検討=19年4月−利便性を向上と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『自営業者らが将来受け取る公的な年金額を上乗せするために任意で加入する国民年金基金が、2019年4月をめどに47都道府県にある地域型の基金の合併を検討していることが5日、分かった。

住所移転に伴う手続きを簡素化し、加入者の利便性を高めるのが狙い。職業別に25ある職能型の基金の一部も合流する可能性がある。

都道府県をまたぐ住所移転の場合、現在は資格喪失手続きを取り、引っ越し先で加入し直す必要がある。

47の地域型基金が合併すれば、住所変更届を出すだけで手続きが済む。合併後も、加入者が支払う保険料や受け取る年金額は変わらない』

以上のようになりますが、都道府県をまたぐ住所移転した方が、年金を請求する際にも、合併のメリットがあるようです。

なぜならば現在は住所を変更する前と、変更した後の両者の国民年金基金に対して、年金の請求手続きを行う必要があるのですが、合併後は1箇所で済むからです。

この記事を最初に読んだ時は、国民年金基金は加入者の利便性の向上を図っており、素晴らしいと感じました。

しかし疑り深い私は、利便性の向上とは違う別の目的があって、合併したのではないかと思ったのです。

都道府県をまたぐ住所移転をした方は上記のように、住所を変更する前の国民年金基金から脱退する必要があります。

しかし脱退した後に、住所を変更した後の国民年金基金に対して、新たに加入する義務はありません。

そのため住所変更を期に、国民年金基金への加入を止めてしまう方が出てきてしまうので、それを少しでも喰い止めるため、合併を検討していると思ったのです。

またそこまでして、加入を止めてしまう方を減らそうとしているのは、3月1日のブログに記載しましたように、平成26年(2014年)4月に掛金を値上げしてから、新規加入者があまり増えていないからだと思ったのです。

国民年金基金がタレントの優香さんを起用したバナー広告を、けっこう頻繁に掲載しているのは、新規加入者があまり増えていない事に対する、焦りのように感じるのです。

国民年金基金が存続していくためには、なんとしても新規加入者を、増やし続ける必要があると考えております。

その理由として国民年金基金の予定利率は、平成3年の設立当初、A型やB型で5.5%、C型で6.5%もあったそうです。

注:予定利率とは、加入者に対して約束した掛金の運用利回りであり、加入時に決定された予定利率は、生涯に渡って適用されます。

しかし平成7年に4.75%、平成12年に4%、平成14年に3%、平成16年に1.75%、平成26年に1.5%へ引き下げられました。

現在のように日銀が、「異次元の金融緩和」や「マイナス金利政策」を実施している中で、6.5%もの運用利回りを確保するのは、非常に難しい事です。

そのため予定利率よりも、実際の運用利回りが大幅に低くなり、巨額の赤字が生じてしまうので、その穴埋めが必要になります。

私はこの穴埋めのため、まだ年金を受給していない加入者の掛金が使われていると考えており、だからこそ国民年金基金は、新規加入者を増やし続ける必要があるのです。

国民年金基金は自分が積み立てた掛金を自分で受け取る、「積立方式」で運営されているため、自分が積み立てた掛金は、他の加入者に使われないという建前になっております。

しかし国民年金基金は公的年金から独立した制度のため、年金に対する国からの支援がなく、また企業年金とは違い、親会社からの支援がないのですから、他の加入者の掛金で穴埋めするしかないのです。

もしそんな事はしていないと否定するなら、予定利率と実際の運用利回りの差によって生じた、巨額の赤字を減らすため、高い予定利率を引き下げるしかありません。

かつて生命保険会社も同様の問題(逆ザヤ)を抱えていたので、「転換」などの保障の見直しを活用して、予定利率の高い生命保険から、予定利率の低い生命保険に切り替えさせました。

こういったやり方は、かなり批判を浴びましたが、もし切り替えを行わなかったら、多くの生命保険会社が倒産していたと思います。

国民年金基金もいずれは解散を回避するため、予定利率の引き下げを決断する日が来るかもしれません。

もしそういう事態になったら、設立当初から加入していた方は、損をした気持ちになると思います。

ただ逆に予定利率が低くなってから加入した方が、損をしたと思うケースもあり、それは上記のように低下を続けていた予定利率が、上昇に転じた場合です。

加入時に決定された予定利率は生涯に渡って適用されるので、予定利率が上昇に転じても、自分に適用される予定利率は上がりません。

やはり国民年金基金に限らず、金利が固定された商品に長期に渡って加入するのは、誰にとってもリスクがあると改めて感じました。
posted by FPきむ at 20:18 | 国民年金基金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする