2020年05月04日

iDeCoの加入年齢の引き上げは△、受給開始年齢の引き上げは今は〇

個人型の確定拠出年金(以下では「iDeCo」で記述)と、企業型の確定拠出年金(以下では「企業型DC」で記述)の改正案が、令和2年(2020年)3月3日に、国会へ提出されました。

現在は国会で審議している最中であり、まだ可決されていないのですが、主なものを紹介すると次のようになります。

(1)iDeCoと企業型DCの加入年齢の引き上げ
iDeCoに加入できる年齢の上限は、現在は60歳になっておりますが、これが65歳まで引き上げされます。

また企業型DCに加入できる年齢の上限は、現在は65歳になっておりますが、これが70歳まで引き上げされます。

ただ前者のiDeCoに加入できるのは、60歳から65歳になるまでの間に、厚生年金保険に加入している方、または国民年金に任意加入している方に限られるようです。

この任意加入が重要なポイントになってくると思うのですが、60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入できるのは、次のような要件を満たした方になります。

■受給資格期間を満たしていない方
原則65歳から老齢基礎年金を受給するには、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などを合算した期間が、原則10年以上必要になります。

この原則10年は、老齢基礎年金の受給資格を得るために必要な期間のため、「受給資格期間」と呼ばれているのです。

また60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入すれば、受給資格期間を満たすために必要な保険料を、追加で納付できます。

■満額の老齢基礎年金を受給できない方
公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を、20歳から60歳までの40年間に渡って、一度も欠かさずに納付した場合、原則65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。

逆に言えば1ヶ月でも未納期間がある方については、満額の老齢基礎年金を受給できません。

こういった方が60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入して、未納になっていた期間分の保険料を納付すると、満額の老齢基礎年金を受給できるのです。

以上のようになりますが、要するに国民年金の任意加入制度は、受給資格期間を満たすため、または満額の老齢基礎年金を受給するために、存在しているのです。

ですから受給資格期間を満たしており、かつ満額の老齢基礎年金を受給できる方は、60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入する事はできません。

そうなると厚生年金保険に加入していなければ、iDeCoに加入できるのは従来と同じように、60歳までになってしまうのです。

また例えば保険料の未納期間が2年だった場合、国民年金に任意加入できるのは2年のため、60歳から65歳になるまでの間に、iDeCoに加入できるのは、2年だけになってしまうのです。

このように60歳以降にiDeCoに加入できる方は、一定の要件を満たした方だけであり、誰でも無条件に加入できる訳ではないので、iDeCoの加入年齢の引き上げに対する評価は、△といったところでしょうか?

(2)iDeCoと企業型DCの受給開始年齢の引き上げ
iDeCoや企業型DCから支給される給付金としては、60歳以降に請求できる「老齢給付金」があります。

この老齢給付金の受給方法は「一時金」、「年金」、「一時金と年金の併用」の、いずれかを選択できます。

ただ70歳までに請求しなかった場合には、全額が一時金で支給されるため、遅くても70歳までには、受給を始める必要があるのです。

この70歳という受給を始めなければならない年齢が、75歳まで引き上げされます。

これに関しては評価が難しいのですが、新型コロナウイルスの影響で株価が低迷している今のような状況だと、〇ではないかと思うのです。

その理由としてiDeCoや企業型DCの掛金を、株式が組み入れられた投資信託で運用してきた場合、ここ最近の株価の低下により、個人別管理資産が減っていると推測されます。

そのためすぐに老齢給付金を受給すると、この金額が少なくなってしまうのですが、75歳まで待てば株価が回復し、受給できる老齢給付金が増える可能性があるからです。

もっとも老齢給付金を受給する年齢が近づいてきたら、株式が組み入れられた投資信託の割合を減らし、債券が組み入れられた投資信託や、定期預金の割合を増やすのが、定石ではないかと思います。

(3)iDeCoと企業型DCの同時加入
企業型DCに加入している方が、iDeCoに加入できるのは、企業型DCの規約において、iDeCoへの同時加入を認めている場合に限られます。

しかし法改正でこれが撤廃されるため、規約に定めがなくても、企業型DCとiDeCoに、同時加入できるようになるのです。

ただ各人がiDeCoの掛金を拠出する場合には、企業型DCの拠出額とiDeCoの拠出額の合計を、企業の拠出限度額の範囲内に抑える必要があります。

勤務先が企業型DCを実施している場合には、メリットのある改正なので、評価は〇になりますが、それ以外の場合には、△といったところでしょうか?
posted by FPきむ at 20:18 | 確定拠出年金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月30日

確定拠出年金の加入資格の範囲を、65歳まで拡大する案が議論開始へ

平成30年(2018年)10月28日の毎日新聞を読んでいたら、<厚労省>確定拠出年金、65歳まで加入期間延長へと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は、公的年金に上乗せする確定拠出年金について、原則60歳までとなっている加入期間を65歳まで延長する検討に入る。

60歳を超えても働き続ける人が増えている実情を踏まえ、掛け金を払い込める期間を延長し、老後の備えを手厚くするのが狙いだ。

年明けに厚労省の社会保障審議会企業年金部会で議論を始め、2020年の通常国会に確定拠出年金法の改正案を提出する方針だ。

確定拠出年金は、公的年金に上乗せする私的年金の一つ。個人が任意で加入する個人型(イデコ)と、勤め先の企業が運営する企業型があり、いずれも加入者自身が掛け金を運用し、運用成績次第で受け取る年金額が変わる。

掛け金は全額が所得控除の対象で税負担が軽減され、受け取る際も税制優遇が受けられる。

加入資格者は現在、個人型が60歳未満。企業型も原則60歳までだが、同じ事業所で勤め続ける場合に限って規約で定めれば65歳まで延長できる。

厚労省は、個人型、企業型とも65歳まで加入できるようにしたい考えだ。加入期間が延びれば、運用できる原資も増え、将来への備えが手厚くできるようになる』

以上のようになりますが、60歳以降も働く方が増えているため、この記事の中に記載されているように、確定拠出年金の加入資格の範囲が65歳まで拡大されるのは、時間の問題ではないかと思います。

もし法改正が実施された場合には最長で、厚生年金保険に加入している方は、中学を卒業してから65歳になるまで、国民年金に加入している方は、20歳から65歳になるまで、確定拠出年金に加入できるようになります。

ただ何らかの公的年金に加入している事が前提になるため、例えば60歳で定年退職を迎え、それ以降は厚生年金保険にしない、短時間労働者として働いている場合には、法改正が実施された後も、確定拠出年金には加入できないはずです。

こういった方が60歳以降に、確定拠出年金に加入したい場合は、国民年金に任意加入すれば良いと思います。

この任意加入とは例えば大学生の時、または失業している時に、国民年金の保険料を納付していない期間がある場合、それを穴埋めするため、60歳以降も国民年金に加入して、保険料を納付できる制度です。

原則65歳から支給される老齢基礎年金の、受給資格期間を満たしている場合は65歳まで、満たしていない場合には70歳まで任意加入できます。

公的年金の上乗せを準備する制度として、確定拠出年金よりも歴史の長い国民年金基金は、すでに法改正が実施されたため、国民年金に任意加入している場合には、65歳まで加入できます。

おそらく後輩の確定拠出年金は、先輩の国民年金基金をお手本にすると思うので、国民年金に任意加入する事を条件に、65歳まで確定拠出年金に加入できるようにするはずです。

確定拠出年金というニンジンをぶら下げる事により、国民年金に任意加入する方や、60歳以降も厚生年金保険に加入する方が増えれば、保険料収入が増えるため、年金財政が以前より安定化すると思います。

加入資格の範囲を65歳まで拡大する背景には、このような厚生労働省の思惑も、存在しているのではないでしょうか?

ただ確定拠出年金は税制面での優遇が大きいため、年金財政は以前より安定化しても、税収は以前より減ってしまうかもしれません。

ですから65歳までは拡大できても、70歳まで拡大するのは、難しいような気がします。

いずれにしろ公的年金の支給開始年齢の近くになって、年金額が少ないと気が付いた時に、そこから新たに始められる制度が充実するのは、良い事ではないかと思います。

確定拠出年金の加入資格の範囲が拡大された場合、60歳から65歳になるまでの間に、公的年金の上乗せを準備できる制度の選択肢は、次のようになると考えられます。

■厚生年金保険に加入している方
・企業型の確定拠出年金(勤務先が実施しており、加入資格を満たす場合)
・個人型の確定拠出年金(iDeCo)

■国民年金に任意加入している方
・国民年金基金
・個人型の確定拠出年金(iDeCo)
・付加年金

この中で国民年金基金と付加年金は同時に加入できませんが、個人型の確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は、同時に加入できるのです。

ですからまずは月々の保険料が400円の、お手頃な付加年金に加入し、それでもまだ金銭的に余裕がある場合には、個人型の確定拠出年金(iDeCo)に加入するのが良いと思います。
posted by FPきむ at 20:43 | 確定拠出年金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする