2020年07月18日

アフターコロナはiDeCoとNISAの、バランスが大切になってくる

令和2年(2020年)7月8日の朝日新聞を読んでいたら、イデコの掛け金、月最大2万円に引き上げへ 厚労省検討と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は、「確定給付企業年金(DB)」に入っている会社員が「個人型確定拠出年金(イデコ)」に拠出できる金額をいまの月最大1万2千円から、月最大2万円へと引き上げる検討に入った。

9日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で案を示したうえで、与党や財務省と税制などの見直しについて協議入りする。

DBは企業年金の一つで、企業が運用の責任を負い、一定の給付額を約束する。

一方、イデコは公的年金を補う確定拠出年金(DC)の一つで、加入者が毎月一定の金額を積み立て、投資信託など自分で決めた方法で運用する。掛け金や運用益は非課税だが、運用成績によって将来の給付額が変わる。

2022年からすべての会社員がイデコに加入できるようになるが、いまの制度では、企業年金加入者のうちDBを導入する企業の社員のイデコの掛け金は最大月1万2千円で、DBを導入していない企業の社員は同最大月2万円と差がある。

厚労省はこの区別をなくすことを検討する。DBの掛け金に相当する額を個別に評価し、DBとDCの掛け金は合計で月5万5千円まで、イデコは最大月2万円までに統一する。

DBの掛け金に上限は設けないが、月2万7500円を上回る場合はDCの掛け金の上限が減り、月5万5千円を上回る場合はDCは使えなくなる。

DBの掛け金は9割の企業で月2万7500円未満のため、多くの人は運用できる金額が増える見込みだ』

以上のようになりますが、iDeCo(個人型の確定拠出年金)の掛金の下限は、月額で5,000円になるため、最低でもこの金額を準備する必要があります。

一方で上限については、国民年金の被保険者の種別によって、次のような違いがあるのです。

■第一号被保険者(自営業者、フリーランスなど)
月額68,000円(年額816,000円)

■第二号被保険者(厚生年金保険に加入している会社員や公務員)
【勤務先に企業型の確定拠出年金がない会社員】
月額23,000円(年額276,000円)

【勤務先にある企業型の確定拠出年金に加入している会社員】
月額20,000円(年額240,000円)

【勤務先にある確定給付企業年金に加入している会社員】
月額12,000円(年額144,000円)

【公務員】
月額12,000円(年額144,000円)

■第三号被保険者(専業主婦、専業主夫)
月額23,000円(年額276,000円)

冒頭で紹介した記事には、「勤務先にある確定給付企業年金に加入している会社員」の上限である、月額12,000円(年額144,000円)を、月額20,000円(年額240,000円)に引き上げすると記載されております。

掛金の選択肢が広がって良いと思うのですが、iDeCoと確定給付企業年金の合計で、月額55,000円という上限があるため、人によってはiDeCoの掛金を、月額20,000円まで拠出できない場合があるのです。

ただこういった方は少数派のようなので、多くの方は拠出する掛金を増やせるのですが、更に増やして良いのか?という疑問を、最近は感じているのです。

その理由として拠出された掛金とその運用益は、原則として障害状態になったり、死亡したりしないかぎり、最低でも60歳にならないと引き出せません。

また収入の減少によって、生活費などを賄えなくなった場合には、60歳まで引き出せないという点が、問題になってくると思うからです。

例えば先日ニュース番組を見ていたら、新型コロナウイルスによる収入減で、住宅ローンの支払いが難しくなり、マイホームを失いかけている方が登場しておりました。

iDeCoと同じように、金融商品から得られる利益(売却益、配当金など)に対して課税されない、NISA(一般NISA、つみたてNISA)という制度があります。

この制度はiDeCoよりも、税制上の優遇が少ないのですが、60歳になる前でもお金を引き出せるのです。

新型コロナウイルスの問題は、いずれ収束に向かうと思いますが、別のウイルスが発生したり、リーマンショックのような経済危機が発生したりして、収入が減少する可能性があります。

ですからアフターコロナは、60歳まで引き出せないiDeCoと、60歳になる前に引き出せるNISAの、バランスが大切になってくると思うのです。

もちろんすぐに引き出せる預貯金などで、いざという時の資金を確保しているという方は、iDeCoの掛金の引き上げを、積極的に利用したいところです。
posted by FPきむ at 20:26 | 確定拠出年金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月04日

iDeCoの加入年齢の引き上げは△、受給開始年齢の引き上げは今は〇

個人型の確定拠出年金(以下では「iDeCo」で記述)と、企業型の確定拠出年金(以下では「企業型DC」で記述)の改正案が、令和2年(2020年)3月3日に、国会へ提出されました。

現在は国会で審議している最中であり、まだ可決されていないのですが、主なものを紹介すると次のようになります。

(1)iDeCoと企業型DCの加入年齢の引き上げ
iDeCoに加入できる年齢の上限は、現在は60歳になっておりますが、これが65歳まで引き上げされます。

また企業型DCに加入できる年齢の上限は、現在は65歳になっておりますが、これが70歳まで引き上げされます。

ただ前者のiDeCoに加入できるのは、60歳から65歳になるまでの間に、厚生年金保険に加入している方、または国民年金に任意加入している方に限られるようです。

この任意加入が重要なポイントになってくると思うのですが、60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入できるのは、次のような要件を満たした方になります。

■受給資格期間を満たしていない方
原則65歳から老齢基礎年金を受給するには、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などを合算した期間が、原則10年以上必要になります。

この原則10年は、老齢基礎年金の受給資格を得るために必要な期間のため、「受給資格期間」と呼ばれているのです。

また60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入すれば、受給資格期間を満たすために必要な保険料を、追加で納付できます。

■満額の老齢基礎年金を受給できない方
公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を、20歳から60歳までの40年間に渡って、一度も欠かさずに納付した場合、原則65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。

逆に言えば1ヶ月でも未納期間がある方については、満額の老齢基礎年金を受給できません。

こういった方が60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入して、未納になっていた期間分の保険料を納付すると、満額の老齢基礎年金を受給できるのです。

以上のようになりますが、要するに国民年金の任意加入制度は、受給資格期間を満たすため、または満額の老齢基礎年金を受給するために、存在しているのです。

ですから受給資格期間を満たしており、かつ満額の老齢基礎年金を受給できる方は、60歳から65歳になるまでの間に、国民年金に任意加入する事はできません。

そうなると厚生年金保険に加入していなければ、iDeCoに加入できるのは従来と同じように、60歳までになってしまうのです。

また例えば保険料の未納期間が2年だった場合、国民年金に任意加入できるのは2年のため、60歳から65歳になるまでの間に、iDeCoに加入できるのは、2年だけになってしまうのです。

このように60歳以降にiDeCoに加入できる方は、一定の要件を満たした方だけであり、誰でも無条件に加入できる訳ではないので、iDeCoの加入年齢の引き上げに対する評価は、△といったところでしょうか?

(2)iDeCoと企業型DCの受給開始年齢の引き上げ
iDeCoや企業型DCから支給される給付金としては、60歳以降に請求できる「老齢給付金」があります。

この老齢給付金の受給方法は「一時金」、「年金」、「一時金と年金の併用」の、いずれかを選択できます。

ただ70歳までに請求しなかった場合には、全額が一時金で支給されるため、遅くても70歳までには、受給を始める必要があるのです。

この70歳という受給を始めなければならない年齢が、75歳まで引き上げされます。

これに関しては評価が難しいのですが、新型コロナウイルスの影響で株価が低迷している今のような状況だと、〇ではないかと思うのです。

その理由としてiDeCoや企業型DCの掛金を、株式が組み入れられた投資信託で運用してきた場合、ここ最近の株価の低下により、個人別管理資産が減っていると推測されます。

そのためすぐに老齢給付金を受給すると、この金額が少なくなってしまうのですが、75歳まで待てば株価が回復し、受給できる老齢給付金が増える可能性があるからです。

もっとも老齢給付金を受給する年齢が近づいてきたら、株式が組み入れられた投資信託の割合を減らし、債券が組み入れられた投資信託や、定期預金の割合を増やすのが、定石ではないかと思います。

(3)iDeCoと企業型DCの同時加入
企業型DCに加入している方が、iDeCoに加入できるのは、企業型DCの規約において、iDeCoへの同時加入を認めている場合に限られます。

しかし法改正でこれが撤廃されるため、規約に定めがなくても、企業型DCとiDeCoに、同時加入できるようになるのです。

ただ各人がiDeCoの掛金を拠出する場合には、企業型DCの拠出額とiDeCoの拠出額の合計を、企業の拠出限度額の範囲内に抑える必要があります。

勤務先が企業型DCを実施している場合には、メリットのある改正なので、評価は〇になりますが、それ以外の場合には、△といったところでしょうか?
posted by FPきむ at 20:18 | 確定拠出年金で自分年金を作る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする