平成28年(2016年)1月6日の産経新聞を読んでいたら、私的年金で公的制度補完 生保協提言へ 国が一定額補助と題した記事が掲載されておりましたが、一部だけを紹介すると次のようになります。
『日本生命保険、明治安田生命保険など、保険会社の業界団体である生命保険協会は5日、公的年金を補完する私的な個人年金「長寿安心年金」(仮称)の創設を2月にも政府に提言する方針を固めた。
公的年金制度は中長期的な改善を目指しつつも少子高齢化を背景に大幅な改善は困難で、支給水準の低下は避けられない見通し。
個人年金に国が補助するドイツの「リースター年金」を参考に、加入者に一定額を国が補助する仕組みを働きかける。
長寿安心年金は全国民を任意の加入対象者として、年金支給期間に期限を定めず、加入者が支払った保険料分の元本を保証する仕組み。
現在、民間の保険会社が販売する年金保険のうち、終身年金の加入者は利回りの低さもあって少ない。長寿安心年金の創設は終身年金の加入率を高める契機にもなりそうだ』
以上のようになりますが、厚生労働省が作成・公表している「簡易生命表(平成24年)」によると、男性が60歳になるまでに死亡する確率は8.1%になり、女性は4.3%になります。
このように死亡率が低く、かつ公的年金の支給水準が下がっている現在の日本では、「死亡するリスク」に備える事より、「長生きするリスク」に備える事の方が重要になっているのに、現実はまるで逆です。
■死亡するリスクとは?
家計を支える方、例えば夫が急に亡くなってしまった場合、遺された妻や子供は、生活費や教育費などを支払えなくなるという、経済的な問題に直面する可能性がありますが、これが「死亡するリスク」になります。
■長生きするリスクとは?
年金だけで生活するのは難しいので、多くの方は現役時代に蓄えた預貯金などを取り崩して生活しておりますが、想定より長生きすると死亡する前に、その預貯金などが尽きてしまう可能性があり、これが「長生きするリスク」になります。
例えば生命保険文化センターが発表している、「平成25年度生活保障に関する調査」を見ると、約8割の人が何らかの生命保険に加入して、死亡するリスクに備えている事がわかります。
しかしこの調査の中にある、「個人年金保険加入率(全生保)」を見ると約2割となり、個人年金保険を活用して、長生きするリスクに備えている方は、かなり少ないのです。
そのため生命保険協会が、長寿安心年金の創設を政府に提言するのは、当然の事だと思います。
つまり生命保険協会は、生命保険の加入率は約8割に達し、これ以上伸びる余地は少ないと考えているのに対して、個人年金保険の加入率は政府が補助金を出すなどの、何らかのきっかけがあれば、まだまだ伸びる余地があると考えているのだと思います。
しかし私は安倍内閣が続く限り、長寿安心年金の創設を実現するのは難しいと考えております。
その理由として安倍内閣は、次のような政策を行なう事により、「貯蓄から投資へ」の流れを加速しようとしているからです。
・NISAの創設とその後の非課税枠の拡大
・確定拠出年金(個人型)の対象者の拡充(10月24日のブログを参照)
・簡易型の確定拠出年金(企業型)の創設(9月16日のブログを参照)
この背景には株価を更に上げたい、安倍総理の意向があるからだと考えておりますが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産配分を見直し、株式投資比率を高めたのも、同様の理由からだと思います。
長寿安心年金の創設は、「貯蓄から投資へ」の流れと相容れないものですから、やはり安倍内閣が続くうちは、実現の可能性は低いのではないでしょうか?
なお安倍内閣によって誕生した日銀の黒田総裁は、2%のインフレ・ターゲット(物価の上昇率の目標)を設定して、平成25年(2013年)4月から大規模な金融緩和策を実施しております。
インフレが続くという事は、物の値段が上がり、お金の価値が目減りしますから、年金額が確定している個人年金保険の場合、その年金の価値は目減りしていくのです。
そのため長寿安心年金の創設は、現在の日銀の金融政策とも相容れないものですから、こういった意味でも実現は難しいと考えております。
ただ個人年金保険には既に、個人年金保険料控除(3月22日のブログを参照)という税制上の優遇措置があり、これを上手く活用すれば、補助金と同じような効果を期待できると思うのです。
2016年01月07日
2015年01月15日
国民年金より個人年金保険に加入した方が安全なのか?
先日インターネットで検索していたら、ある保険代理店のサイトに辿り付きましたが、そこには「国民年金はいずれ破綻するので、それよりも個人年金保険に加入した方が安全です」などといった、キャッチコピーが記載されておりました。
個人年金保険より国民年金の方が優れている点については、7月15日のブログに記載しました。
ここに記載されている内容だけでも十分に、このキャッチコピーに対する反論になりますが、更に反論を加えると次のようになります。
(1)保険料を納付しないのは違法である
日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者は原則として、2月22日のブログに記載しましたように、本人の意思の有無に関係なく、国民年金の被保険者になります。
また国民年金の被保険者になれば、保険料を納付しなければなりませんが、国民年金法には次のように記載されております。
■第八十八条(保険料の納付義務)
『被保険者は、保険料を納付しなければならない。2.世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。3.配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う』
また保険料の納付を滞納している者には、次のように督促状を送り、それでも納付しない場合には国税滞納処分の例による処分、つまり財産の差し押さえなどを行いますが、保険料の納付を督促した時は、延滞金が課せられます。
■九十六条 (督促及び滞納処分)
『保険料その他この法律の規定による徴収金を滞納する者があるときは、厚生労働大臣は、期限を指定して、これを督促することができる。2.前項の規定によつて督促をしようとするときは、厚生労働大臣は、納付義務者に対して、督促状を発する。』
『4.厚生労働大臣は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によつてこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる』
■第九十七条(延滞金)
『前条第一項の規定によつて督促をしたときは、厚生労働大臣は、徴収金額に、納期限の翌日から徴収金完納又は財産差押の日の前日までの期間の日数に応じ、年十四・六パーセント(当該督促が保険料に係るものであるときは、当該納期限の翌日から三月を経過する日までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する』
このように保険料を納付しないと厳しい処分のある国民年金と、任意加入である個人年金保険の、どちらの優先度が高いかは一目瞭然になります。
(2)納めた税金が自分の元に返ってこなくなる
国民年金から支給される基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金)は、11月30日のブログに記載しましたように、その2分の1は税金を財源にしております。
また平成29年(2017年)4月から、つまり消費税率の10%への引き上げと同時に、基礎年金を受給できる、一定の低所得者を対象にして、年金生活者支援給付金(12月4日のブログを参照)が支給される予定ですが、これは消費税を財源にしております。
ですから国民年金の保険料の滞納を続けて、基礎年金を受給できなくなくなると、買い物をするたびに納めている消費税や、給与から控除されている所得税などが、自分の元に返ってこなくなるのです。
なお個人年金保険は原則として、加入者から徴収した保険料と、その運用益を財源にしておりますので、たとえ個人年金保険に加入しなかったとして、上記のような損をするという事はありません。
(3)国民年金と個人年金保険は一蓮托生である
日銀が大規模金融緩和を実施した後、日本国債の最大の買い手は日銀になり、日本国内の生命保険会社は銀行に次ぐ3番目になりましたが、それでも日本国内の生命保険会社は、日本国債を大量に保有しております。
ですから日本経済が財政破綻に陥り、日本国債が紙切れになってしまう、または元本が減額されるような事態になれば、日本国内の生命保険会社も連動して、危険な状態になってしまうと思うのです。
過去に倒産した生命保険会社の事例を見てみると、9月1日のブログに記載しましたように、その契約は他の生命保険会社に引き継がれましたが、その時に個人年金保険などの削減が行なわれました。
つまり日本経済が上記のような状態になり、国民年金が削減されるような事態になれば、個人年金保険も削減される可能性があり、個人年金保険の方が安全という事はないのです。
以上のようになりますが、このような理由があるため、国民年金より個人年金保険をおすすめするのは、かなり無責任だと思うのです。
つまり個人年金保険は国民年金の保険料を、毎月欠かさずに納付している方が、国民年金の上乗せとして加入すべきものであり、その代わりに加入するものではないのです。
なお日本経済が財政破綻に陥る可能性があると信じる方は、(3)に記載したような理由で、日本国内の生命保険会社が運営する個人年金保険に、加入しない方が良いと思います。
その代わりに日本国債の保有が少ない、外資系の生命保険会社などが運営する個人年金保険に加入する、もしくは投資信託などを活用して、外国の国債や株式に投資しますが、外貨MMFなら初心者でも始めやすいと思います。
個人年金保険より国民年金の方が優れている点については、7月15日のブログに記載しました。
ここに記載されている内容だけでも十分に、このキャッチコピーに対する反論になりますが、更に反論を加えると次のようになります。
(1)保険料を納付しないのは違法である
日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者は原則として、2月22日のブログに記載しましたように、本人の意思の有無に関係なく、国民年金の被保険者になります。
また国民年金の被保険者になれば、保険料を納付しなければなりませんが、国民年金法には次のように記載されております。
■第八十八条(保険料の納付義務)
『被保険者は、保険料を納付しなければならない。2.世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。3.配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う』
また保険料の納付を滞納している者には、次のように督促状を送り、それでも納付しない場合には国税滞納処分の例による処分、つまり財産の差し押さえなどを行いますが、保険料の納付を督促した時は、延滞金が課せられます。
■九十六条 (督促及び滞納処分)
『保険料その他この法律の規定による徴収金を滞納する者があるときは、厚生労働大臣は、期限を指定して、これを督促することができる。2.前項の規定によつて督促をしようとするときは、厚生労働大臣は、納付義務者に対して、督促状を発する。』
『4.厚生労働大臣は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によつてこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる』
■第九十七条(延滞金)
『前条第一項の規定によつて督促をしたときは、厚生労働大臣は、徴収金額に、納期限の翌日から徴収金完納又は財産差押の日の前日までの期間の日数に応じ、年十四・六パーセント(当該督促が保険料に係るものであるときは、当該納期限の翌日から三月を経過する日までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する』
このように保険料を納付しないと厳しい処分のある国民年金と、任意加入である個人年金保険の、どちらの優先度が高いかは一目瞭然になります。
(2)納めた税金が自分の元に返ってこなくなる
国民年金から支給される基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金)は、11月30日のブログに記載しましたように、その2分の1は税金を財源にしております。
また平成29年(2017年)4月から、つまり消費税率の10%への引き上げと同時に、基礎年金を受給できる、一定の低所得者を対象にして、年金生活者支援給付金(12月4日のブログを参照)が支給される予定ですが、これは消費税を財源にしております。
ですから国民年金の保険料の滞納を続けて、基礎年金を受給できなくなくなると、買い物をするたびに納めている消費税や、給与から控除されている所得税などが、自分の元に返ってこなくなるのです。
なお個人年金保険は原則として、加入者から徴収した保険料と、その運用益を財源にしておりますので、たとえ個人年金保険に加入しなかったとして、上記のような損をするという事はありません。
(3)国民年金と個人年金保険は一蓮托生である
日銀が大規模金融緩和を実施した後、日本国債の最大の買い手は日銀になり、日本国内の生命保険会社は銀行に次ぐ3番目になりましたが、それでも日本国内の生命保険会社は、日本国債を大量に保有しております。
ですから日本経済が財政破綻に陥り、日本国債が紙切れになってしまう、または元本が減額されるような事態になれば、日本国内の生命保険会社も連動して、危険な状態になってしまうと思うのです。
過去に倒産した生命保険会社の事例を見てみると、9月1日のブログに記載しましたように、その契約は他の生命保険会社に引き継がれましたが、その時に個人年金保険などの削減が行なわれました。
つまり日本経済が上記のような状態になり、国民年金が削減されるような事態になれば、個人年金保険も削減される可能性があり、個人年金保険の方が安全という事はないのです。
以上のようになりますが、このような理由があるため、国民年金より個人年金保険をおすすめするのは、かなり無責任だと思うのです。
つまり個人年金保険は国民年金の保険料を、毎月欠かさずに納付している方が、国民年金の上乗せとして加入すべきものであり、その代わりに加入するものではないのです。
なお日本経済が財政破綻に陥る可能性があると信じる方は、(3)に記載したような理由で、日本国内の生命保険会社が運営する個人年金保険に、加入しない方が良いと思います。
その代わりに日本国債の保有が少ない、外資系の生命保険会社などが運営する個人年金保険に加入する、もしくは投資信託などを活用して、外国の国債や株式に投資しますが、外貨MMFなら初心者でも始めやすいと思います。