2014年03月26日

厚生年金保険の脱退一時金とは

厚生年金保険の適用事業所(10月12日のブログを参照)に勤務する70歳未満の者は原則として、国籍や本人の意思にかかわらず、厚生年金保険の被保険者(1月20日のブログを参照)になります。

注:パートやアルバイトについては、1週間の勤務時間および1ヶ月の勤務日数が、その適用事業所で働く正社員の、4分の3以上ない場合、厚生年金保険に加入させる必要はありません。

逆に言えば外国人であっても厚生年金保険の保険料を納付して、原則25年の国民年金の受給資格期間(6月27日のブログを参照)を満たせば、原則65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できます。

注:受給資格期間を満たした後に帰国した場合、老齢基礎年金や老齢厚生年金の請求は郵送か代理人によって行い、年金は海外送金になります。

ただ日本に短期間だけ在留する外国人は、受給資格期間を満たせない場合が多いので、納付した保険料が掛け捨てになってしまいました。

これを防止するため平成7年4月1日に「脱退一時金」が創設され、納付した保険料の一部を、帰国後に還付してもらえるようになりましたが、この脱退一時金のうち厚生年金保険の脱退一時金とは、次のような制度になります。

(1)脱退一時金の受給要件
脱退一時金を受給するためには、請求日の属する月の前月までの厚生年金保険の被保険者期間が、最低でも6ヶ月以上は必要になりますが、その他にも次のような要件を満たす必要があります。

・日本国籍を有していないこと

・帰国後、2年以内に請求すること

・老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)や、退職年金(退職共済年金など)の、受給資格期間を満たしていないこと

(2)脱退一時金を受給できない場合
厚生年金保険の保険料を、最低でも6ヶ月以上納付した外国人であっても、次のような者は脱退一時金を請求できません。

【国民年金の被保険者になっているとき】
日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は、たとえ外国人であっても、国民年金に強制加入しなければなりません。

【日本国内に住所を有すること】
脱退一時金を請求できるのは帰国後になりますので、日本国内に住所を有しているうちは請求できません。

【障害厚生年金などの受給権を有したことがある】
障害厚生年金などを受給した事があれば、納付した保険料は掛け捨てにならならず、脱退一時金が創設された主旨から外れるので、脱退一時金を請求できなくなります。

【最後に厚生年金保険の資格を喪失した日から起算して、2年以上経過していること】
脱退一時金を請求できるのは、帰国してから2年以内になるからです。

(3)脱退一時金の目安額
厚生年金保険の脱退一時の目安額は、次のような平均標準報酬額に、支給率を掛けて算出します。

脱退一時金の目安額=平均標準報酬額×支給率

■平均標準報酬額
{(平成15年3月までの各月の標準報酬月額×1.3の合計)+(平成15年4月以降の各月の標準報酬月額+標準賞与額の合計)}÷全被保険者期間の月数

なお標準報酬月額については10月3日のブログを、標準賞与額については、2月10日のブログを参照していただきたいと思いますが、各人の具体的な金額は、ねんきん定期便などに記載されております。

■支給率
最終月(厚生年金保険の被保険者の資格を、最後に喪失した日が属する月の前月)の属する年の、前年の10月の保険料率(最終月が1月から8月なら、前々年の10月の保険料率)に、2分の1を掛けて得た率に、次のような数字を掛けて算出します。

注:算出された支給率に、小数点以下1位未満の端数がある場合には、四捨五入されます。

【厚生年金保険の被保険者であった月数→数字】
6ヶ月以上12ヶ月未満→6
12ヶ月以上18ヶ月未満→12
18ヶ月以上24ヶ月未満→18
24ヶ月以上30ヶ月未満→24
30ヶ月以上36ヶ月未満→30
36ヶ月以上→36

以上のようになりますが、このような計算をすると支給率は、だいたい次のような数字になります。

そのため簡単に計算を済ませたい方は、この支給率を使って脱退一時金を算出しますが、上記の計算ほど正確ではありませんので、その点には注意する必要があります。

【厚生年金保険の被保険者であった月数→支給率】
6ヶ月以上12ヶ月未満→0.4
12ヶ月以上18ヶ月未満→0.8
18ヶ月以上24ヶ月未満→1.2
24ヶ月以上30ヶ月未満→1.6
30ヶ月以上36ヶ月未満→2.0
36ヶ月以上→2.4

(5)脱退一時金の請求方法
脱退一時金の請求書は日本年金機構のサイトから入手でき、またお近くの年金事務所や、市区町村の役場などでも入手できますが、この請求書を提出する際には、次のような書類を添付します。

・年金手帳
・パスポートの写し(出国年月日、氏名、生年月日が確認できるページの写し)
・銀行名、口座番号などが確認できる書類

以上のようになりますが、日本政府は諸外国と少しずつ、社会保障に関する協定を締結して、お互いの国の年金制度の加入期間を、通算できるようにしております。

また11月8日のブログに記載しましたように、原則25年もあった国民年金の受給資格期間は、平成27年(2015)10月1日から、10年に短縮される予定です。

ですから脱退一時金を請求する前に、このような制度を利用して年金を受給できないかを、調べてみた方が良いのです。

なお脱退一時金の計算の基礎となった、厚生年金保険の被保険者期間については、厚生年金保険の被保険者でなかったとみなされるので、脱退一時金を返却して、年金に戻す事はできません。
posted by FPきむ at 20:43 | 老齢厚生年金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月14日

長期加入者、障害者、第3種の老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げ

男子の厚生年金保険の被保険者である「第1種被保険者」、女子の厚生年金保険の被保険者である「第2種被保険者」の、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げについては、次のようなページで紹介しました。

・第1種被保険者(8月8日のブログを参照)
・第2種被保険者(8月12日のブログを参照)

注:第1種〜第3種といった、厚生年金保険の被保険者の種別の違いについては、1月20日のブログを参照して下さい。

これらの者が特別支給の老齢厚生年金(1月27日のブログを参照)、つまり定額部分と報酬比例部分を受給できる年齢は、世代によって違いがありますが、定額部分の方が先に65歳へ引き上げられていくので、定額部分は受給できても、報酬比例部分は受給できないという方は存在しません。

しかし次のような者は第1種や第2種と違い、定額部分と報酬比例部分が同じタイミングで、65歳へ引き上げられていきます。

・長期加入者(2月7日のブログを参照)
・障害者(3月13日のブログを参照)
・第3種被保険者(2月3日のブログを参照)

ですから老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げについても、第1種や第2種と若干の違いがありますが、例えば定額部分と報酬比例部分を、61歳〜64歳で受給できる上記の3種類の者が、60歳で繰上げ請求を行った場合、受給できる年金と、その支給率(減額率)は次のようになります。

注:上記の3種類の者のうち、定額部分と報酬比例部分を60歳から受給できる方が、65歳から受給できる老齢基礎年金を繰上げると、長期加入者や障害者の特例が受けられないなどの、デメリットが発生するので、繰上げを検討するのは支給開始年齢が、61歳〜64歳の方が良いのです。

■定額部分と報酬比例部分の支給開始年齢が61歳の方
【定額部分】
61歳で受給できる年金額の80%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると定額部分は、老齢基礎年金に切り替わり消滅します。

注:定額部分の計算方法や繰上げの仕組みについては、8月22日のブログを参照して下さい。

【報酬比例部分】
61歳で受給できる年金額の94%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると報酬比例部分は、老齢厚生年金に名称を変えて存続する、つまり6%程度の減額は、生涯に渡って続くという事になります。

【老齢基礎年金・経過的加算額】
上記のように定額部分を繰上げると、65歳から受給できる老齢基礎年金の一部と、経過的加算額(1月27日のブログを参照)を、同時に繰上げしなければなりません。

60歳〜65歳になるまでに受給できる年金額は両者とも、65歳から受給できる金額の14%程度になりますが、老齢基礎年金の一部を繰上げただけなので、65歳から死亡するまでの減額率は、両者とも6%程度で済みます。

■定額部分と報酬比例部分の支給開始年齢が62歳の方
【定額部分】
62歳で受給できる年金額の60%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると定額部分は、老齢基礎年金に切り替わり消滅します。

【報酬比例部分】
62歳で受給できる年金額の88%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると報酬比例部分は、老齢厚生年金に名称を変えて存続する、つまり12%程度の減額は、生涯に渡って続くという事になります。

【老齢基礎年金・経過的加算額】
上記のように定額部分を繰上げると、65歳から受給できる老齢基礎年金の一部と経過的加算額を、同時に繰上げしなければなりません。

60歳〜65歳になるまでに受給できる年金額は両者とも、65歳から受給できる金額の28%程度になりますが、老齢基礎年金の一部を繰上げただけなので、65歳から死亡するまでの減額率は、両者とも12%程度で済みます。

■定額部分と報酬比例部分の支給開始年齢が63歳の方
【定額部分】
63歳で受給できる年金額の40%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると定額部分は、老齢基礎年金に切り替わり消滅します。

【報酬比例部分】
63歳で受給できる年金額の82%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると報酬比例部分は、老齢厚生年金に名称を変えて存続する、つまり18%程度の減額は、生涯に渡って続くという事になります。

【老齢基礎年金・経過的加算額】
上記のように定額部分を繰上げると、65歳から受給できる老齢基礎年金の一部と経過的加算額を、同時に繰上げしなければなりません。

60歳〜65歳になるまでに受給できる年金額は両者とも、65歳から受給できる金額の42%程度になりますが、老齢基礎年金の一部を繰上げただけなので、65歳から死亡するまでの減額率は、両者とも18%程度で済みます。

■定額部分と報酬比例部分の支給開始年齢が64歳の方
【定額部分】
64歳で受給できる年金額の20%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると定額部分は、老齢基礎年金に切り替わり消滅します。

【報酬比例部分】
64歳で受給できる年金額の76%程度を、60歳〜65歳になるまで受給できますが、65歳になると報酬比例部分は、老齢厚生年金に名称を変えて存続する、つまり24%程度の減額は、生涯に渡って続くという事になります。

【老齢基礎年金・経過的加算額】
上記のように定額部分を繰上げると、65歳から受給できる老齢基礎年金の一部と経過的加算額を、同時に繰上げしなければなりません。

60歳〜65歳になるまでに受給できる年金額は両者とも、65歳から受給できる金額の56%程度になりますが、老齢基礎年金の一部を繰上げただけなので、65歳から死亡するまでの減額率は、両者とも24%程度で済みます。

以上のようになりますが、障害者の方は請求により、定額部分と報酬比例部分を同時に受給する特例が受けられますので、この請求を済ませた後に繰上げをしなければなりません。

つまり障害等級の3級以上に該当しているからといって、自動的に特例が適用される訳ではないのです。

また長期加入者と障害者は、退職している事が要件になりますので、再就職して厚生年金保険の被保険者になると、定額部分を受給できなくなります。

なお第3種被保険者は退職していなくても、定額部分と報酬比例部分を同時に受給できますが、在職老齢年金の仕組み(8月30日のブログを参照)により、年金の全部または一部が支給停止される場合があります。
posted by FPきむ at 20:24 | 老齢厚生年金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする