2014年07月01日

旧法時代の障害厚生年金の歴史と法改正の概要

昭和61年3月まで会社員や公務員の方などは、厚生年金保険や共済年金といった、国民年金とは全く別の年金制度に加入しておりましたが、昭和61年4月からは、それらに加入すると同時に、国民年金にも加入する事になりました。

そのため厚生年金保険や共済年金の加入者が受給する年金は、国民年金から支給される、障害基礎年金などの基礎年金をベースに、厚生年金保険や共済年金から、給与に比例した上乗せ(障害厚生年金、障害共済年金など)が支給される、2階建ての構造に変わりました。

このように昭和61年4月から、公的年金に大きな変化がありましたので、昭和61年4月から施行された年金法を「新法」、それ以前を「旧法」と区別しております。

この旧法時代における障害厚生年金の歴史と法改正の概要は、次のようになっております。

■昭和17年6月
日本の公的年金の歴史は軍人を対象にした、「海軍退隠令(明治8年)」や「陸軍恩給令(明治9年)」から始まりましたが、大正に入ると公務員にも広がりました。

民間企業の労働者を対象にした公的年金は、海上労働者を対象にした「船員保険法(昭和14年)」から始まりましたが、昭和17年6月に現業部門の男子労働者を対象にした、「労働者年金保険」が始まりました。

この労働者年金保険には障害厚生年金や、障害手当金(5月18日のブログを参照)のような制度がありましたが、障害等級は現在の障害厚生年金と違って、1級しかありませんでした。

そして保険料の要件については、障害厚生年金の支給要件(5月10日のブログを参照)と違って、障害日前の5年間に3年以上、被保険者期間がある事となっておりました。

また障害認定日については、初診日から1年以内の治ゆした日、もしくは初診日から、1年が経過した日となっておりました。

なお労働者年金保険の被保険者である間、この障害年金は支給停止される事になっておりました。

■昭和19年10月
労働者年金保険の対象が事務部門の男子労働者や、女子労働者にも広がり、その名称も「厚生年金保険」に変更されましたが、業務上の事由による障害などが、完全保障される事になりました。

■昭和22年9月
労働者災害補償保険法いわゆる労災保険法が創設され、業務上の事由による障害などは、労災保険の保障対象になりました。

ただ厚生年金保険は引き続き、業務上の事由による障害なども保障対象とし、また障害等級に2級が加わりました。

また障害厚生年金の支給要件のうち、保険料の要件については、障害認定日より前に、6ヶ月以上の被保険者期間がある事とされました。

■昭和29年5月
障害等級に3級が加わり、また1級もしくは2級の障害厚生年金に、加給年金(8月10日のブログを参照)がプラスされるようになりました。

また併合認定(6月16日のブログを参照)が創設されましたが、その他に障害の程度が増進したり、軽快したりすると、額の改定(6月16日のブログを参照)が行われるようになりました。

■昭和40年6月
3級の障害厚生年金などに、最低保障額が設定されました。

■昭和48年11月
標準報酬月額の再評価(7月8日のブログを参照)や、物価スライド制が導入されました。

ただ当時の物価スライド制は、対前年度比の全国消費者物価指数が、5%を超えて上下した場合に、その変動率に応じて、年金額を改定する仕組みでした。

その後は昭和60年の法改正で、それまでの対前年度比から、対前年比の、全国消費者物価指数に改められ、また平成元年の法改正では5%の枠を外し、対前年比の全国消費者物価指数の変動率に応じ、翌年の4月から年金額を改定する、いわゆる「完全自動物価スライド制」になりました。

また障害の程度が軽快して、障害等級の1級〜3級に該当しなってから3年以内に、厚生大臣の定める程度の障害の状態に該当しなくなった場合、障害厚生年金の受給権を失権する事になっておりましたが、3年間の支給停止に改正されました。

■昭和51年10月
障害厚生年金の支給要件のうち、保険料の要件については、障害認定日より前に、6ヶ月以上の被保険者期間がある事とされておりましたが、この6ヶ月に他の公的年金(国民年金、共済年金など)の被保険者期間を、通算できるようになりました。

また障害認定日については、「療養の開始から3年を経過した日」とされておりましたが、「初診日から1年6ヶ月を経過した日」と改正されました。

なお初診日とは障害の原因となった病気やケガで、初めて医師などの診察を受けた日になりますが、上記のように改正された事により、初診日に厚生年金保険の被保険者でなければ、障害厚生年金を受給できなくなりました。

その他として事後重症(5月27日のブログを参照)が創設され、障害認定日に障害等級の1級〜3級に該当しなくても、初診日から5年以内に障害の程度が増進し、障害等級の1級〜3級に該当すれば請求により、障害厚生年金を受給できるようになりました。

■昭和60年7月
事後重症の障害厚生年金を請求できる期間が、65歳に達する日の前日までに延長されました。

なお初診日が昭和17年10月以降ならば、初診日から5年が経過して、事後重症の請求ができなくなった場合であっても、新たに請求する権利が発生するという、経過措置が設けられました。
posted by FPきむ at 20:02 | 障害厚生年金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月29日

障害厚生年金が支給停止もしくは失権になる場合とは

障害厚生年金は次のような場合に支給停止され、またその受給権が失権する事になりますが、支給停止はその原因がなくなれば、その時点から再び受給できるのに対して、失権はその原因がなくなっても、再び受給できる事はありません。

注:年金を受給できなくなる理由として、支給停止と失権以外に「差し止め」がありますが、これはその原因がなくなれば、差し止めになった時点に遡って、再び年金を受給できるようになるので、年金を受給できない期間は生じません(支給停止の場合は、年金を受給できない期間が生じます)。

(1)障害厚生年金が支給停止になる場合
障害厚生年金の受給権者が同一の事由により、労働基準法の障害補償を受けられる場合には6年間、障害厚生年金は支給停止されます。

※参考(労働基準法の第七十七条)
『労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない』

また厚生労働大臣の審査を受けた結果、障害の程度が軽快して、障害等級の3級にも該当しなくなったと判断された場合、原則として65歳に達する日の前日までの間、障害厚生年金は支給停止されます。

注:国民年金から支給される障害基礎年金には、障害等級の1級もしくは2級しかありませんので、3級に該当した場合には、障害厚生年金のみを受給する事になりますが、年金額が低くなりすぎないようにするため、最低保障額(9月14日のブログを参照)が設けられております。

ただ障害厚生年金を受給している者に、障害等級の2級未満の「その他障害」が発生した場合で、障害厚生年金の支給事由となった障害と、その他障害を合併した障害の程度が、障害等級の2級以上に該当する時は、障害厚生年金は支給停止されません。

つまり障害厚生年金の支給事由となった障害だけでは、障害等級の1級〜3級に該当しなくなっても、その他障害を合併した障害の程度が、障害等級の1級もしくは2級に該当する場合には、障害厚生年金は支給停止されないのです。

以上のようになりますが、同一の支給事由による障害について、共済年金から支給される、障害共済年金の受給権を有する事になった場合、それを受給している間は、障害厚生年金は支給停止されます。

つまり別の障害を原因とする障害共済年金と障害厚生年金なら、併給できますが、同じ障害を原因とする障害共済年金と障害厚生年金は、併給できないという事になります。

(2)障害厚生年金が失権になる場合
障害厚生年金の受給権者が、次のいずれかに該当した場合、その受給権は失権する事になります。

【障害厚生年金の受給権者が死亡したとき】
このような場合には他の年金と同じように、未支給年金(7月28日のブログを参照)が発生する事になるので、この請求を忘れないようにします。

【障害等級の1級〜3級に該当していない方が、65歳に達したとき】
障害等級の1級〜3級に該当しなくなってから、3年を経過していない場合を除きます。

【障害等級の1級〜3級に該当しなくなってから、3年を経過したとき】
3年を経過した日に、65歳未満である場合を除きます。

【併合認定(6月16日のブログを参照)が行われ、前後の障害を併合した程度による、障害厚生年金の受給権を取得したとき】
障害厚生年金(後発)は、前後の障害を併合した程度による障害厚生年金として残りますので、失権するのは障害厚生年金(先発)の受給権になります。

以上のようになりますが、平成6年に法改正が行われるまでは、障害の程度が軽快して、障害等級の1級〜3級に該当しなくなり、3年が経過した場合には、失権する事になっておりました。

それが法改正で上記のように、65歳に達する日の前日までの間、支給停止される取り扱いに変わったのですが、その間に再び障害等級の3級以上に該当した場合には、受給権者の請求により支給停止が解除され、障害厚生年金を受給できるようになります。

なお平成6年に法改正が行われる前に、障害等級の1級〜3級に該当しなくなって3年が経過し、障害厚生年金の受給権を失権した方でも、法改正後は新たな制度が適用されます。

つまり65歳に達する日の前日までの間に、再び障害等級の3級以上に該当した場合には、請求により受給権が復活するので、障害厚生年金を受給できるようになります。
posted by FPきむ at 20:25 | 障害厚生年金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする