2013年01月18日

海外居住者が国民年金に任意加入する場合の手続き

外国にある企業などに派遣される日本人は増えておりますが、年金制度の保険料を外国と日本の両国から徴収されないようにするため、もしくは外国と日本の年金制度の加入期間を通算できるようにするため、次のような国と社会保障協定が発効されております。

・ドイツ(平成12年2月1日発効)
・英国(平成13年2月1日発効)
・韓国(平成17年4月1日発効)
・アメリカ(平成17年10月1日発効)
・ベルギー(平成19年1月1日発効)
・フランス(平成19年6月1日発効)
・カナダ(平成20年3月1日発効)
・オーストラリア(平成21年1月1日発効)
・オランダ(平成21年3月1日発効)
・チェコ(平成21年6月1日発効)
・スペイン(平成22年12月1日発効)
・アイルランド(平成22年12月1日発効)
・ブラジル(平成24年3月1日発効)
・スイス(平成24年3月1日発効)
・ハンガリー(平成26年1月1日発効)
・インド(平成28年10月1日発行)

ただこれらの社会保障協定の欠点として、国民年金の第2号被保険者と第1号被保険者の取り扱いについては定められておりますが、夫と共に海外に移住した被扶養配偶者(第3号被保険者)の取り扱いについては、特に定められておりません。

注:第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者といった被保険者の種別の違いについては、9月20日のブログを参照して下さい。

特に定めがないという事は国民年金法に記載されている通り、次のような取り扱いになります。

■夫が厚生年金保険や共済年金の資格を継続した場合
第3号被保険者になるのは、第2号被保険者の配偶者(事実婚を含む)で、主として第2号被保険者の収入により生計を維持する者のうち、20歳以上60歳未満の者になります。

つまり日本国内に住所がなければならないという要件はないので、被扶養配偶者が夫と共に海外へ移住したとしても、夫が厚生年金保険や共済年金の資格を継続すれば、被扶養配偶者も引き続き第3号被保険者になります。

■夫が厚生年金保険や共済年金の資格を喪失した場合
例えば夫が次のような状態になった場合には、被扶養配偶者は第3号被保険者の資格を喪失します。

・夫が外国の年金制度に加入する事になり、厚生年金保険や共済年金の資格を喪失した場合

・夫が就業規則(10月14日のブログを参照)などに定められた定年退職の年齢に達して、厚生年金保険や共済年金の資格を喪失した場合

このような状態になった時に、被扶養配偶者が20歳以上60歳未満であれば、第1号被保険者になりますので、市区町村役場の窓口で種別変更の手続きをしなければなりません。

ただ第1号被保険者に強制的になるのは、「日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者」になりますので、夫が厚生年金保険や共済年金の資格を喪失しても、海外に居住を続けている場合には、種別変更の手続きをする必要はありません。

このように強制的に第1号被保険者にならない場合でも、国民年金から支払われる次のような年金を減らさないため、国民年金に任意加入できますが、

・原則65歳になった時に支払われる老齢基礎年金

・障害状態になった時に支払われる障害基礎年金

・死亡した時に支払われる遺族基礎年金

外国に居住している方、もしくは外国に居住する予定の方が、国民年金に任意加入する場合には、次のような方法があります。

注:任意加入しなかった場合には外国に居住していた期間は、合算対象期間(カラ期間)とされますが、合算対象期間とは原則25年(10年に短縮予定)の、受給資格期間(老齢基礎年金を受給するために必要な加入期間)に反映されても、年金額には反映されない期間になります。

(1)これから外国に居住する予定の場合
現在の居住地の市区町村で任意加入の手続きを行いますが、保険料については子供、父母、兄弟姉妹などの親族が日本に住んでおり、その親族が協力者となってくれる場合には、親族を通じて保険料を納付します。

つまり保険料の納付書は協力者に送付されますので、その協力者は自分の保険料を納付する場合と同じように、金融機関の窓口やコンビニなどで納付します。

また協力者がいない場合には、日本国内に開設している預貯金口座からの、口座振替により納付します。

(2)すでに外国に居住している場合
日本国内の最終居住地の市区町村で任意加入の手続きを行いますが、自分で手続きを行うだけでなく、子供、父母、兄弟姉妹などの親族が日本に住んでおり、その親族が協力者となってくれる場合には、協力者が任意加入の手続きを代行できます。

保険料については(1)と同じように協力者がいる場合には、その協力者を通じて、また協力者がいない場合には、日本国内に開設している預貯金口座からの、口座振替により納付します。

(3)日本国内に住所を有したことがない場合
千代田年金事務所で任意加入の手続きを行いますが、自分で手続きを行うだけでなく、子供、父母、兄弟姉妹などの親族が日本に住んでおり、その親族が協力者となってくれる場合には、協力者が任意加入の手続きを代行できます。

保険料については(1)と同じように協力者がいる場合には、その協力者を通じて、また協力者がいない場合には、日本国内に開設している預貯金口座からの、口座振替により納付します。

以上のようになりますが、市区町村によって任意加入の手続きをする時に添付する書類が変わってきますので、事前に市区町村のホームページなどで調べておきます。

また以前は日本国民年金協会が、任意加入の手続きや保険料の納付を代行してくれましたが、平成19年6月末で終了となりました。

この日本国民年金協会を通じて、任意加入の手続きや保険料の納付を行っていた方の窓口は、(1)から(3)にかかわらず、千代田年金事務所になります。
posted by FPきむ at 21:02 | 海外勤務者の社会保険の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月29日

チェコと日本の社会保障協定

年金制度の保険料をチェコと日本の両国から徴収されないようにするため、もしくはチェコと日本の年金制度の加入期間を通算できるようにするため、平成21年(2009年)の6月にチェコと日本の社会保障協定が発効されました。

日本の企業の従業員が次のような勤務形態でチェコに派遣された場合、日本企業に在籍したまま職場が変わる事になりますが、

■転勤
海外にある支店や工場などに勤務地が変わる事を示しますが、出張とは違い長期期間に渡り、海外の職場で働く事になります。

■出向
現在の雇用先の企業などに在籍したまま、海外の他の企業などで相当の長期間に渡って、その企業などの業務に従事する事を示します。

原則として厚生年金保険の資格は喪失して、チェコの年金制度に加入する事になります。

チェコの年金制度への加入が免除されるためには、日本年金機構に申請して、日本からの派遣期間が5年以内である事の確認を受けますが、その確認が取れると「適用証明書」が発行されます。

その証明書をチェコの雇用主に提出すると、就労開始の日から5年以内の範囲で、チェコの年金制度への加入が免除されますが、5年を超えてチェコの年金制度への加入を免除されるためには、日本年金機構に上記の申請を再度行います。

そしてこの申請を元に日本年金機構とチェコの年金制度の実施機関が協議を行い、免除が妥当と両者の合意があった場合、再度「適用証明書」が発行されますが、延長期間は原則として3年になります。

注:チェコの年金制度の実施機関とは、「労働社会省」および「社会保険庁」になります。

また日本の企業の従業員が上記のような勤務形態でチェコに派遣された場合、その被扶養配偶者は次のような取り扱いを受けます。

【配偶者がチェコの年金制度への加入を免除され、厚生年金保険に引き続き加入した場合】
チェコに移住した場合でも日本に残った場合でも、引き続き第3号被保険者になりますので、国民年金の保険料を自分で納付する必要はありません。

【配偶者が厚生年金保険の資格を喪失して、チェコの年金制度に加入した場合】
日本に残った場合には、第3号被保険者から第1号被保険者に変わりますので、市区町村の窓口に種別変更の届出を行いますが、その後は自分で国民年金の保険料を納付する必要があります。

またチェコに移住した場合には、チェコと日本の年金制度の両者に加入しなくなりますが、原則65歳から受給できる老齢基礎年金を減らさないため、国民年金に任意加入する事ができます。

もし任意加入しなかった場合には、合算対象期間(カラ期間)とされますが、合算対象期間とは原則25年(10年に短縮予定)の受給資格期間(老齢年金を受給するために必要な加入期間)に反映されても、年金額には反映されない期間になります。

なお健康保険については日本に残った場合、住所地の市区町村の国民健康保険に加入しますが、チェコに移住した場合で配偶者がチェコの健康保険に加入すると、子供と共にチェコの健康保険に加入する事になります。

ところで日本の企業の従業員や、その遺族が受給できる年金は原則として、

・原則65歳になった時に支払われる、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)

・障害状態になった時に支払われる、障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金)

・日本の企業の従業員が死亡した時に支払われる、遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)

になりますが、チェコの年金制度と厚生年金保険に加入した方の場合は次のようになります。

(1)老齢年金
チェコの年金制度と日本の年金制度(国民年金、厚生年金保険など)に加入した期間を通算して、原則25年(10年に短縮予定)となっている日本の年金制度の受給資格期間を満たせば、原則65歳になった時に日本年金機構から、老齢年金が支払われます。

注:加給年金(8月10日のブログを参照)の受給資格があるかを判断する場合も、チェコの年金制度に加入した期間を通算できます。

もしチェコと社会保障協定を締結している他国(日本との協定が締結されていなくても可)の、年金制度の加入期間がある場合には、その期間も原則25年の受給資格期間に通算できますが、チェコの年金制度の加入期間が1年以上なければ通算はできません。

またチェコの年金制度と日本の年金制度に加入した期間を通算して、原則25年(最低でも15年)となっているチェコの年金制度の受給資格期間を満たせば、次の年齢になった時にチェコの年金制度の実施機関から、老齢年金が支払われます。

<チェコの老齢年金の支給開始年齢>
旧制度では男性60歳、女性53歳(子供が5人以上)〜57歳(子供なし)でしたが段階的に繰り下がっていき、昭和40年(1965年)以降に生まれた男性は65歳、昭和43年(1968年)以降に生まれた女性は62歳(子供が5人以上)〜65歳(子供なし)になります。

なおチェコの年金制度と日本の年金制度に加入した期間を通算して、15年以上25年未満の場合、65歳になってからチェコの年金制度の実施機関から、老齢年金が支払われます。

注:チェコの年金制度と日本の年金制度の加入期間を通算する場合、日本の年金制度の12ヶ月の加入期間を、チェコの365日と同等として、また日本の年金制度の1ヶ月の加入期間を、チェコの30日と換算しますが、1暦年における加入期間の合計は、365日を超えないものとします。

(2)障害年金
チェコの年金制度に加入していた期間中に初診日(初めて医師などの診療を受けた日)があり、その後に帰国して厚生年金保険に加入した場合で、厚生年金保険の加入期間中に障害認定日があれば、初診日に厚生年金保険の被保険者であったものとみなされ、日本年金機構から障害年金が支払われます。

なお障害年金を受給するには初診日の前日において、8月11日のブログで紹介した、保険料の納付要件を満たさなければなりませんが、チェコの年金制度に保険料を納付した期間を、日本の年金制度に保険料を納付した期間とみなす事ができます。

(3)遺族年金
厚生年金保険に加入した期間を有する者が、チェコの年金制度の加入期間中に死亡した場合には、厚生年金保険の被保険者が死亡したとみなされ、その遺族に対して日本年金機構から遺族年金が支払われます。

また厚生年金保険の加入期間を有している者で、チェコの年金制度の加入期間中に初診日のある者が、初診日から5年以内に死亡した場合には、その遺族に日本年金機構から遺族年金が支払われます。

なお遺族年金を受給するためには死亡日の前日において、(2)と同じような保険料の納付要件を満たさなければなりませんが、チェコの年金制度に保険料を納付した期間を、日本の年金制度に保険料を納付した期間とみなす事ができます。
posted by FPきむ at 19:54 | 海外勤務者の社会保険の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする