2020年07月02日

国民年金の納付率は約97%と聞いたら、年金財政に対する不安は弱まる

令和2年(2020年)6月29日の日本経済新聞を読んでいたら、19年度の国民年金納付率69%、8年連続上昇と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は29日、自営業者らが入る国民年金の2019年度の保険料納付率が69.3%だったと発表した。前年度から1.1ポイント上昇し、8年連続で改善した。

低所得などで保険料を免除・猶予されている人も含めて算出した実質的な納付率は40.7%。満額の年金を受け取れないなど高齢期の貧困が課題となる』

『国民年金は自営業者やフリーターらが加入する。19年度末の加入者数は1453万人で、1年前より18万人減った。適用拡大を進める厚生年金への移行が増えていることなどから国民年金の加入者は減少傾向にある。

加入者のうち保険料を払っている納付者は746万人で全体の5割。低所得者や学生など保険料を免除・猶予している人は一部免除も含めて約4割の624万人、未納は約1割の125万人だ。

納付率は加入者が保険料を払うべき月数に対し、実際に払った月数の比率を示し、加入者に占める人数の比率とは異なる。

日本年金機構が手続きの簡素化などを進め、免除・猶予を除いて計算する納付率は上昇が続く。

保険料を全額免除された期間は将来受け取る年金額が半減される。コロナの影響が長引けば老後に十分な年金をもらえない高齢者が増えかねない』

以上のようになりますが、この記事の中に記載されているように、令和元年(2019年)度の国民年金の納付率は、69.3%に達しました。

しかも国民年金の納付率は、8年連続で上昇しているため、とても喜ばしい事だと思います。

ただこの記事を読んでいると、これらの結果に対して、納得していない印象を受けるのです。

著者が納得していない理由と、それに対する私の反論を記載してみると、次のようになります。

(1)国民年金の実質的な納付率はかなり低い
この記事の中には、「低所得などで保険料を免除・猶予されている人も含めて算出した実質的な納付率は40.7%」というデータが、最初の方に記載されております。

ここから推測すると、国民年金の納付率は69.3%まで上がったといっても、実質的な納付率は40.7%しかないため、納得していないのだと思います。

またこのようなデータを見た読者は、実質的な納付率の低さに驚くと共に、年金財政に対して不安を感じるかもしれません。

一方で国民年金の納付率は約97%と聞いたら、年金財政に対する不安は、弱まるのではないかと思います。

これは平成26年(2014年)度末のデータであり、詳細については国民年金保険料の納付状況等を見るとわかります。

なぜこのような高い数字になるのかというと、厚生年金保険の加入者は国民年金の第2号被保険者として、厚生年金保険だけでなく、国民年金にも加入しております。

そのため厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているのです。

また厚生年金保険に加入している方の、20歳以上60歳未満の被扶養配偶者(年収130万円未満)は、国民年金の第3号被保険者として、国民年金に加入しております。

この第3号被保険者であった期間は、国民年金の保険料を納付しなくても、納付したものとして取り扱われます。

こういった第2号被保険者や第3号被保険者の納付率も含めると、国民年金の納付率は約97%になるのです。

しかもこの記事の中には、「適用拡大を進める厚生年金への移行が増えていることなどから国民年金の加入者は減少傾向にある」と記載されているため、今後は更に高くなる可能性があるのです。

(2)納付率が上がっても、老後の貧困問題は解決しない
この記事の中には、「保険料を全額免除された期間は将来受け取る年金額が半減される。コロナの影響が長引けば老後に十分な年金をもらえない高齢者が増えかねない」と記載されております。

ここから推測すると、全額免除を受けた方が増えて、納付率が上がっても、老後の貧困問題は解決しないため、納得していないのだと思います。

確かに全額免除を受けると、その期間の老齢基礎年金は半額になってしまいますが、保険料を1円も納付しなくても半分はもらえるのですから、全額免除は考えようによっては、かなりお得な制度なのです。

また国民年金の保険料を、遡って納付できる期間は、原則として過去2年になります。

一方で全額免除を受けた期間は、過去10年前まで遡って、保険料を納付できるのです。

仮にコロナの影響が長引いても、さすがに10年も続かないと思うので、遡って納付できる期間を、過去2年から10年に広げておけば、挽回できるチャンスが巡ってくるのです。

このように考えると、「たかだ全額免除、されど全額免除」と言っても、過言ではないと思います。
posted by FPきむ at 20:53 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月17日

金(ゴールド)、雇用保険と年金の積立金は、どれが最初に枯渇するのか?

令和2年(2020年)5月27日の日本経済新聞を読んでいたら、雇用保険、財政強化カギ 失業増で積立金枯渇の恐れと題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『新型コロナウイルス感染症の影響で、雇用保険の財政強化が課題になりそうだ。

大企業の多くが雇用調整助成金の申請に動き出し、中小企業の休業者が直接、申請・受給できる制度も新たにできる。

休業者や失業者が増え続ければ、積立金が枯渇する懸念がでてくる。特例的に引き下げている労使折半の保険料の見直しが必要になる可能性もある』

以上のようになりますが、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、各都道府県から事業者などに対して、自粛要請が出されました。

これを受けて休業者や失業者が急激に増えたため、雇用保険の保険料や積立金を財源にしている、失業手当や助成金の支給も、急激に増えたのです。

そのため冒頭で紹介した記事の中に記載されているように、雇用保険の積立金の枯渇が、懸念されるようになってきたのです。

安倍内閣が誕生してからの景気回復により、失業率の低下が続いたため、雇用保険の積立金は平成28年(2016年)3月末に、過去最大の6兆円超に達しました。

つまりわずか数年前までは、かなり余裕があったため、労使が負担する雇用保険の保険料を、法律で定められた水準より引き下げるという、特例措置を実施してきたのです。

そのため雇用保険の保険料を、法律で定められた水準に引き上げると共に、日本経済がコロナショックから回復して、失業率の低下が続けば、雇用保険の積立金が枯渇するという懸念は、払拭されるのではないかと思います。

給与から控除される雇用保険の保険料は、例えば一般の事業で、月給が20万円の場合、令和2年(2020年)度は月600円になります。

それに対して同条件の厚生年金保険の保険料は、月18,300円になるため、両者を比較すると、雇用保険の保険料はかなり安いのです。

ですから雇用保険の保険料が、法律で定められた水準に引き上げされても、それほど負担は重くならないと思います。

一方で厚生年金保険の保険料は、すでに高水準になっているため、積立金の枯渇が問題になって、保険料を更に引き上げした場合には、かなり負担が重く感じると思います。

そういえば令和元年(2019年)に、5年に1度のペースで実施されている公的年金の財政検証の結果が、厚生労働省から示されました。

この財政検証では経済成長や労働参加のデータを変えて、6つのシナリオを示しております。

この6つのシナリオの中で、もっとも経済成長や労働参加が進まないケースでは、国民年金の積立金が、あと30年くらいで枯渇すると試算されたのです。

そうなると枯渇を回避するために、国民年金の保険料を値上げする、年金額を引き下げる、増税して税金の投入を増やすなどの対策を、実施する必要があります。

ただこれらをやってしまうと、国民からの反発を招くため、厚生労働省は国民年金と厚生年金保険の積立金を統合して、国民年金の積立金の枯渇を、先延ばしにするつもりのようです。

これだけでは根本的な解決にはなりませんが、何もやらないよりは良いと思います。

ところで新型コロナウイルスの問題が発生してから、金(ゴールド)の価格が急上昇しているようです。

米ドルと金(ゴールド)は、一方が上がるともう一方が下がるという、「逆相関」の関係になっております。

ですから金(ゴールド)の価格が上がっているのは、FRB(アメリカの中央銀行)の大規模な金融緩和により、米ドルの価値が下がっているからだと考えられます。

そうなるとFRBが大規模な金融緩和を終了すれば、金(ゴールド)の価格は下がっていきそうな気がしますが、個人的にはそれほど下がらないと予想しているのです。

その理由として採掘可能な金(ゴールド)は、あと15年程度で枯渇すると、ゴールドマンサックスが予想しております。

もしこれが事実であれば、供給が減っていきますから、需要が変わらなければ、価格が下がらないと思うのです。

このように金(ゴールド)、雇用保険と年金の積立金の中で、最初に枯渇を迎えそうなのは、金(ゴールド)だと考えられます。

ただ金(ゴールド)はリサイクルできるため、たとえ枯渇を迎えても、まったく使えない訳ではないのです。

それに対して雇用保険と年金の積立金は、リサイクルできないため、枯渇を迎えた時には、そこで終わりになります。

しかも国民年金の積立金は、あと30年くらいで枯渇が迫っているため、この3つの中でもっとも対策が必要なのは、年金の積立金ではないかと思います。
posted by FPきむ at 20:51 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする