2019年11月02日

チュートリアル徳井さんの社会保険未加入は、単純なようで謎が多い問題

令和元年(2019年)10月26日のサンスポを読んでいたら、チュート徳井、16年に銀行預金差し押さえ 社会保険にも未加入と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実(44)の個人会社が東京国税局に計約1億2000万円の申告漏れを指摘された問題で、徳井が所属する吉本興業は26日、徳井が当面の間、芸能活動を自粛すると発表した。本人が事務所に申し入れたという。

徳井は「世間の皆様に不信感を与えてしまい、誠に申し訳ございませんでした。あらためて納税に対する意識、仕事のこと、自分自身のこと、しっかりと見つめ直していきたいと思っております」とのコメントを出した。

また吉本興業は同日、申告漏れに関する追加報告を公表。個人会社は2009年に設立されたが、毎年の期限内に申告を行わず、税務署の指摘を受けて12年と15年にそれぞれ3年分をまとめて申告。

しかし申告後も未納が続き、16年には銀行預金を差し押さえられた。同社は社会保険にも加入していなかったという。

吉本興業によると、18年までの7年間で、個人会社の申告漏れ額は約1億1800万円で、他に経費として認められなかった額が約2000万円に上った。これらの分の追徴税額で約3700万円を納付したという』

以上のようになりますが、この記事はチュートリアル徳井さんに関する、所得の申告漏れ問題と、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の未加入問題について、取り扱ったものになります。

ここまで長期間に渡って、所得の申告漏れを続けたケースは、かなり珍しいと考えられるので、税金や社会保険について学びたいという方の、良い教材になると思いました。

実際のところ税金について解説したブログや、ユーチューブの動画などを見てみると、これらの問題を取り扱っている方は多いようです。

徳井さんにとっては不名誉な事だと思いますが、芸人さんですから「いじられておいしい」とプラスに捉え、この難局を乗り切って欲しいと思います。

ところで所得の申告漏れ問題の話を聞いて、最初に疑問を感じたのは、徳井さんの年収です。

3年間で約1億2,000万円の申告漏れがあったのだから、徳井さんの年収は「約1億2,000万円÷3」により、約4,000万円だと推測している方がおりました。

ただ冒頭の記事を読んでみると、この約1億2,000万円というのは、「年収−経費」で算出される所得と考えられます。

ですから年収は約4,000万円より、経費の分だけ多くなり、ある税理士さんのブログの記事を見ていたら、約6,000万円〜約7,000万円ではないかと推測しておりました。

もっともこの約1億2,000万円は、徳井さんの所得ではなく、この方が設立した個人会社(チューリップ)の所得です。

吉本興業などからのギャラは個人会社が受け取り、徳井さんはこの個人会社から、役員報酬を受け取っていたと思いますが、原則として役員報酬の金額は自由に設定できます。

しかも個人会社の役員は、徳井さんだけだったようなので、高額の役員報酬を設定できるのです。

ただ法人登記簿を調べてみたら、個人会社の事業内容の欄には、「飲食店の経営及びコンサルタント業」などと記載されていたそうなので、飲食店の開業資金を蓄えるために、役員報酬を低く抑えていた可能性もあるのです。

いずれにしろ正確な年収を外部の人間が推測するのは、不可能と考えた方が良さそうです。

もうひとつの社会保険の未加入問題でも、疑問を感じた事があり、それを列挙すると次のようになります。

・国税局は銀行預金を差し押さえて、滞納していた税金を強制徴収したのに、なぜ日本年金機構は社会保険料を強制徴収しなかったのか?

・徳井さんだけでなく、約9年間にも渡って未加入を放置してきた日本年金機構にも、問題があるのではないか?

・税金と保険料を一括して徴収する「歳入庁」が創設されていれば、社会保険料も一緒に徴収できたと思うのだが、この案はどうなったのか?

・正当な理由がないのに、社会保険に加入しないでいると、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる場合があるが、今回はどうなったのか?

・社会保険に加入しない場合、国民健康保険と国民年金に加入するが、これらの保険料は、きちんと納付していたのか?(電気代やガス代の支払いを忘れ、何度も止められていたという情報があるので、これらの保険料も滞納していた可能性がある)

・国民健康保険の保険料の滞納が続くと、保険証の代わりに、「短期被保険者証(有効期限が短い保険証)」や、「被保険者資格証明書(診療費の全額を支払い、後で7〜8割の還付を受ける)」が、交付される場合があるが、徳井さんは保険証を持っていたのか?

以上のようになりますが、このように社会保険の未加入問題に関して、疑問に感じる事は非常に多いのです。

しかし吉本興業が作成した報告書を読んでみると、「チューリップ社及び徳井個人の社会保険料の納付状況ですが、2009年の法人設立時に社会保険の加入手続きをしていない状況が続いておりました。速やかに加入手続きをいたします」と、とても簡単に済ませております。

もしこれで終わりだとしたら、闇営業の問題と同じように、すっきりしない幕引きになりそうです。
posted by FPきむ at 20:47 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月17日

約4割の会社員は老後資金0円なので、社会保険の適用拡大を歓迎しよう

令和元年(2019年)9月27日の時事通信を読んでいたら、社保審部会、パート適用拡大へ議論本格化=厚生年金、企業要件緩和で一致と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は27日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会を開き、年末に向けた年金制度改正の詰めの議論を始めた。

厚労省は改正の柱として、会社員らが加入する厚生年金のパート労働者への適用拡大、受給開始を個人の意思で70歳超に繰り下げられる柔軟化、一定以上の収入がある高齢者の年金を減額・停止する在職老齢年金制度の見直しを提示。部会も具体化への作業を本格化させる方針を確認した。

厚労省の有識者会議は20日、厚生年金の加入要件のうち、勤務先企業の従業員数を「501人以上」から引き下げるべきだとの報告書をまとめている。

27日の年金部会では、この要件を緩和することで一致。多くの委員が「企業規模要件は撤廃すべきだ」と要請した。

現在は70歳まで繰り下げられる受給開始時期の柔軟化については、先月公表した年金財政検証で、75歳まで働いて年金を受け取れるようにする制度改正の効果を試算。モデル世帯では、現役世代の手取り収入並みの年金額が確保できるとの結果になった』

以上のようになりますが、この記事を読むと厚生労働省は、次のような3つの法改正を実施したいとわかります。

(1)社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用拡大
平成28年(2016年)10月からは、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの非正規労働者であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入するようになりました。

(A)1週間あたりの勤務時間が20時間以上
(B)月額賃金が8万8,000円以上(年収では約106万円以上)
(C)勤務期間の見込みが1年以上
(D)学生ではない
(E)従業員数が501人以上の企業に勤務

またこの中の(E)の要件が少し改正されたため、労使(労働者と使用者)の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業も、平成29年(2017年)4月から、社会保険に加入するようになりました。

ただ改正の後に労使が合意して、新たに非正規労働者を社会保険に加入させていた企業は、労働政策研究・研修機構の調べによると、5%程度しかなかったのです。

そこで厚生労働省は501人以上という要件を、段階的に引き下げていき、最終的には廃止したい意向のようです。

なお厚生労働省の試算によると、従業員数を50人以上とした場合には、新たに60万人程度が社会保険の対象になり、また企業規模要件を廃止した場合には、新たに125万人程度が社会保険の対象になるようです。

(2)繰下げ受給の拡大
原則65歳から支給される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の支給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の仕組みにより、0.7%の割合で年金額が増えていきます。

この繰下げ受給の上限は70歳ですが、厚生労働省は75歳程度まで拡大したい意向のようです。

もっとも厚生労働省の調査によると、平成28年(2016年)度末における繰下げ受給の利用者は、1.4%しかいなかったので、上限の拡大より制度の周知の方が先だと思います。

(3)在職老齢年金制度の見直し
例えば65歳以降も、厚生年金保険に加入して働いている場合、老齢厚生年金の月額と月給の合計額が47万円を超えると、「在職老齢年金」の仕組みにより、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止になります。

厚生労働省はこの在職老齢年金を、廃止する予定だったのですが、最新の情報によると、47万円を62万円まで引き上げするようです。

そうなると在職老齢年金は廃止されなくても、ほとんどの方には関係がなくなると思います。

以上のようになりますが、この3つの中で実現の可能性がもっとも高いのは、(1)だと考えております。

ところでフィデリティ退職・投資教育研究所は、20代〜50代の会社員(役員を含む)と公務員の1万人に対して、「退職後の生活用として準備できている資金は」という質問を行いました。

つまり現役世代を対象にして、老後資金をどのくらい準備しているのかを調査したのです。

初めての平成22年(2010年)の調査では、0円と回答した方が44.3%もいるという、驚きの結果になりました。

フィデリティ退職・投資教育研究所は同じ内容の調査を、継続的に実施しているのですが、その調査結果は「退職準備が進捗しないなか、若年層の投資に変化の兆し 非課税制度拡充の効果」によると、次のようになっております。

平成25年(2013年):40.3%
平成26年(2014年):40.8%
平成27年(2015年):40.8%
平成28年(2016年):39.7%
平成30年(2018年):40.1%

これを見るとわかるように、老後資金の準備額は0円と回答した方の割合は、初めての調査からほとんど変化がありません。

おそらく老後の生活に不安を感じながらも、老後資金を準備するための行動を起こせない方が、かなり多いと推測されるのです。

またこの調査は会社員(役員を含む)と公務員を、調査対象にしているので、非正規労働者も含めて調査したら、0円の割合は更に増えると推測されます。

ですから厚生年金保険の適用を拡大して、老後の収入が増えるようにする事を、拒否するのではなく、むしろ歓迎した方が良いと思います。
posted by FPきむ at 20:52 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする