2019年10月01日

若者は65歳で引退したいようだが、政府は68歳まで働けと言っている

令和元年(2019年)9月26日のニッポンドットコムを読んでいたら、若者の引退希望年齢は65歳 : 働く高齢者862万人の現実と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『日本財団が17〜19歳の男女1000人を対象に実施した意識調査で、「あなたは何歳まで働きたいですか」との問いに対して、「65歳未満」「65歳」の合計が42.8%だった』

『総務省によると、2019年9月15日時点で65歳以上の推計人口は3588万人で、総人口に占める割合が28.4%と過去最高の水準となった。少子高齢化が進む中で、「労働力不足」や「支え手不足」が深刻な課題となりつつある。

実際に、65歳以上の就業者数(アルバイト、パートなどの非正規雇用も含む)は2018年時点で862万人となり過去最高を更新。就業者総数に占める高齢者の割合も12.9%と過去最高を更新した。

人口のボリュームゾーンである団塊の世代が65歳に達した2012年以降、高齢就業者数の増加のペースが上がっている。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2022年以降は医療や介護にかかる社会保障費が一段と膨張するとみられ、支え手を増やすための退職年齢の引き上げや、高齢者の医療費自己負担の引き上げも今後、検討されることになる。

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(2017年推計)によれば、2065年の高齢化率は38.4%。高齢化はさらに進み、今以上に、支え手不足が深刻になっていそうだ。

2019年の18歳は、その年に64歳になる。残念ながら、「65歳で引退!年金でのんびり過ごす」というバラ色の老後は待っていない可能性が高そう』

以上のようになりますが、あまり働いた経験がない、17歳〜19歳くらいの若者に、何歳まで働きたいかと質問するのは、少し無茶なような気がします。

また65歳で引退するのは無理と記載しておりますが、年齢を重ねるごとに視力、握力、バランス保持能力などが衰え、労働災害(業務上の病気やケガ)が増えてくるため、職種によっては65歳くらいで、引退した方が良い場合があると思います。

実際のところ厚生労働省の調査によると、平成30年(2018年)に労働災害に遭った60歳以上の方は、前年より10.7%も増え、労働災害全体の4分の1に達したそうです。

また役員を除く雇用者1,000人あたりの労働災害の件数は、20代が1.6件なのに対して、60歳以上は3.8件だったため、2倍以上の差があるのです。

これに加えて平成25年(2013年)における、日本人の健康寿命(健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間)は、男性は71.19歳、女性は74.21歳というデータもあります。

つまり男性は70歳を過ぎると、働くのが難しくなるどころか、普通に生活するのも難しくなってくるのです。

こういったデータから考えると、65歳〜70歳くらいが、引退の適齢期ではないかと思うのです。

そういえば令和元年(2019年)8月27日に、5年ごとに実施されている公的年金の財政検証の結果が、厚生労働省から発表されました。

従来の財政検証とあまり違いはなかったのですが、今までの財政検証になかった目新しい点もあったのです。

それは現在20歳の方が、60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と、同水準の年金を受給するには、経済の成長率が横ばいの場合、68歳9ヶ月まで働く必要があると示された点です。

なお現在30歳の方は68歳4ヶ月で、現在40歳の方は67歳2ヶ月になるそうです。

なぜこの年齢まで働く必要があるのかというと、60歳以降も厚生年金保険に加入して保険料を納付すれば、その分だけ年金が増額します。

また原則65歳から受給できる老齢年金の受給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の制度によって、0.7%の割合で年金が増額します。

これらによる年金の増額により、現在20歳の方は68歳9ヶ月まで働くと、60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と、同水準の年金を受給できるという訳です。

このような試算結果を見ていると、政府は財政検証を通じて、「最低でも68歳まで働け」というメッセージを、若者に伝えているような気がするのです。

もちろんこのメッセージを拒否して、早期に引退する事もできますが、生活はかなり苦しくなると思います。

ですから68歳になる前に引退したいという若者は、早いうちからiDeCo(個人型の確定拠出年金)などを活用して、しっかりと老後資金を準備する必要があるのです。
posted by FPきむ at 20:59 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月13日

年金財政検証の中に隠された、専業主婦の優遇をこっそりと止める案

令和元年(2019年)8月27日の日本経済新聞を読んでいたら、年金、現状水準には68歳就労 財政検証 制度改革が急務と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『厚生労働省は27日、公的年金制度の財政検証結果を公表した。経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下する。

60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示した。年金制度の改革が急務であることが改めて浮き彫りになった。

財政検証は5年に1度実施する公的年金の「定期健診」にあたる。経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を試算する。今回は6つの経済前提を想定して2115年までを見通した。

試算では夫が会社員で60歳まで厚生年金に加入し、妻が専業主婦の世帯をモデルに、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合である「所得代替率」が将来どう推移するかをはじいた。

政府は長期にわたって所得代替率50%以上を確保することを目標にしている。2019年度は現役の手取り平均額35.7万円に対して年金額は約22万円で、所得代替率は61.7%だった。

6つのシナリオのうち経済成長と労働参加が進む3つのケースでは将来の所得代替率が50%超を維持できる』

『ただ29年度以降の実質賃金上昇率が1.6%、実質経済成長率が0.9%という最も良いシナリオでも所得代替率は今と比べて16%下がる。

成長率が横ばい圏で推移する2つのシナリオでは50年までに所得代替率が50%を割り込む。最も厳しいマイナス成長の場合には国民年金の積立金が枯渇し、代替率が4割超も低下する』

以上のようになりますが、この記事は5年ごとに実施されている、公的年金制度の財政検証について、紹介したものになります。

この財政検証の中でもっとも重要な点は、モデル世帯の公的年金の給付水準が、年金の受給を始める65歳の時点で、現役世代の平均的な手取り賃金の50%を、長期的に維持できるかです。

つまり厚生労働省にとっては、年金の受給を始める65歳の時点で、50%を維持できていれば合格です。

そのため65歳以降に公的年金の給付水準が下がって、現役世代の平均的な手取り賃金の50%を下回ったとしても、不合格ではないのです。

何だかおかしいような気がしますが、「平均的な賃金で40年間働いた会社員の夫と、その間ずっと専業主婦だった妻の、2名で構成された世帯」という、モデル世帯の設定についても、かなりおかしいと思います。

夫婦共に20歳で結婚し、妻の方は60歳までの40年間に渡って、ずっと専業主婦という設定は、誰が考えても無理があります。

現代の日本において、このような設定の通りに生きられるのは、サザエさんくらいしか思い浮かびません。

もし実際にモデル世帯の妻と、まったく同じ方が存在した場合、原則65歳になった時に、満額の老齢基礎年金(2019年度は780,100円)を受給できるのです。

その理由として厚生年金保険に加入する会社員の、年収130円未満の配偶者(20歳〜60歳未満)は、国民年金の第3号被保険者になる事ができます。

また第3号被保険者であった期間は、国民年金の保険料を納付しなくても、納付したものとして取り扱われるため、20歳から60歳までの40年間に渡って、第3号被保険者であった場合には、保険料の未納期間がないからです。

国民年金の保険料を1円も納付しなくても、満額の老齢基礎年金を受給できるのですから、専業主婦はかなり優遇されていると思います。

ところで平成28年(2016年)10月からは、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入するようになりました。

(1)1週間あたりの勤務時間が20時間以上
(2)月額賃金が8万8,000円以上(年収では約106万円以上)
(3)勤務期間の見込みが1年以上
(4)学生ではない
(5)従業員数が501人以上の企業に勤務

また年金財政検証の中にある、「オプション試算」の部分を見たら、この(1)〜(5)の要件を、変更または廃止したと仮定した場合の、次のような3つの試算が行われておりました。

■(5)を廃止した場合の試算
これにより中小企業の従業員でも、社会保険に加入するようになります。

■(2)と(5)を廃止した場合の試算
雇用保険の加入要件とほぼ同じになるため、雇用保険に加入している方のほとんどは、社会保険にも加入するようになります。

■(2)を「5万8,000円以上」にした場合の試算
(2)以外の要件は廃止されるので、月額賃金が5万8,000円以上であれば、学生であっても社会保険に加入します。

以上のようになりますが、厚生労働省は年金財政検証の中で、このような試算を行っているのですから、段階的に実施される可能性が高いのです。

そうなると社会保険の適用が拡大されるたびに、第3号被保険者は徐々に減っていき、最終的には働いていない方、または収入がかなり低い方だけになります。

あくまで推測になりますが、第3号被保険者をいきなり廃止すると、国民の反発を招き、選挙で負けてしまうため、政府は社会保険の適用を拡大して、第3号被保険者を徐々に減らしていく方向に、切り替えた可能性があるのです。

ですから年金財政検証の中には、「専業主婦の優遇をこっそりと止める案」が、隠されていると考えるのです。
posted by FPきむ at 20:07 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする