2019年09月04日

iDeCo+が普及すると、「すぐに使えない退職金問題」が増えていく

令和元年(2019年)7月3日の朝日新聞を読んでいたら、中小企業向け私的年金、対象拡大へ 老後の資産形成促すと題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は、中小企業が従業員の老後資産づくりを支援できる私的年金制度「iDeCo+(イデコプラス)」を使える対象を、今の「従業員100人以下」から「300人以下」に広げる方針を固めた。

公的年金の水準低下が見込まれるなか、小さな会社も働き手の資産形成をサポートしやすくして、より自助努力で老後に備えてもらう狙いがある。

年金には、国民年金・厚生年金といった公的年金のほか、補うものとして企業ごとの年金制度や、個人で入る「iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)」などの私的年金がある。

イデコは、加入者が自分で掛け金の額や運用方法を決める。掛け金や運用益は非課税になり、節税効果がある一方、運用次第で受取額は増減する。

60歳以降での受け取り方法は、分割して年金にするか、一度にもらう一時金かを選べる。5月時点の加入者は125万人。

昨年5月に始まったイデコプラスは、イデコに入っている従業員の掛け金の一部を、事業主が負担できる制度。自前の企業年金がない中小企業が利用できる。

掛け金は、従業員と事業主の合計で月5千〜2万3千円。仮に事業主が1千円を出せば、従業員は月4千円から始められる。

事業主にとっては、拠出分は損金扱いになり、従業員の福利厚生の強化もできる。一方、5月時点の導入企業は504にとどまる。

厚労省は、イデコプラスの対象企業を広げることで、イデコの普及拡大を目指す。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)での議論を経て、来年の通常国会への関連法改正案の提出を目指す』

以上のようになりますが、老後資金を自助努力で準備するための制度として、確定拠出年金があります。

この確定拠出年金には「個人型」と「企業型」の2種類があり、前者の個人型は公的年金の加入者が、自ら加入手続きを行って、掛金もそれぞれが拠出します。

平成29年(2017年)1月1日から、従来は加入資格がなかった専業主婦や公務員なども、新たに加入できるようになり、またこのタイミングで「iDeCo(イデコ)」という愛称が、公募によって決まりました。

一方で後者の企業型は、名称の通りに企業が、従業員の福利厚生費として実施するため、掛金は原則的に企業が拠出するのですが、マッチング拠出を実施している場合には、従業員も上乗せで掛金を拠出できます。

このように個人型と企業型では、掛金を拠出する主体が違うのですが、拠出した掛金を何で運用するのかを、自分で決める必要がある点は共通しております。

例えば定期預金を中心にした運用をすると、お金はあまり増えていきませんが、値動きは緩やかになります。

それに対して投資信託を中心にした運用をすると、値動きは激しくなりますが、お金が増える可能性は高くなるのです。

それぞれの企業が新たに企業型の確定拠出年金を始める場合、所定の手続きを行う必要があるため、手間と時間がかかります。

また制度を始めた後には運営コストがかかるため、特に中小企業は企業型の確定拠出年金を始めにくかったのです。

そこで従業員がiDeCoの掛金を拠出する際に、事業主が追加で掛金を拠出できるようにする、「中小事業主掛金納付制度(愛称は「iDeCo+(イデコプラス)」が、平成30年(2018年)5月から開始されました。

現在は従業員の人数が100人以下の中小企業が、この制度を利用できますが、上記の記事によると300人以下に拡大されるようです。

iDeCo+の創設により中小企業は、企業型の確定拠出年金を実施しなくても、従業員が自助努力で行う老後資金の準備を、支援できるようになります。

ただ従業員が企業からの支援を受けるには、自ら加入手続きを行って、iDeCoに加入する必要があるため、ある程度の手間と時間がかかります。

またiDeCoに拠出した掛金とその運用益は、一時金と年金のどちらを選択しても、原則として障害状態になったり、死亡したりしないかぎり、最低でも60歳にならないと引き出せないのです。

ですからiDeCo+を実施し、従業員の老後資金の準備を支援しているから、退職一時金制度は実施しないという企業が増え、またこういった企業を定年前に退職すると、手元に残るのはiDeCoという、「すぐに使えない退職金」だけになってしまうのです。

例えば退職した後に起業したい、または海外に留学したいなどの理由により、退職後にまとまった資金が必要になる方にとっては、かなり迷惑な話であり、大問題だと思います。

そのため勤務先の企業がiDeCo+を始めるという話になったら、退職一時金制度はどうするつもりなのかを、注意深く見守った方が良いのです。

さすがに退職一時金制度を、完全に廃止する企業は少ないと思いますが、縮小だったら十分にありえます。
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2019年09月01日

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