2019年10月17日

約4割の会社員は老後資金0円なので、社会保険の適用拡大を歓迎しよう

令和元年(2019年)9月27日の時事通信を読んでいたら、社保審部会、パート適用拡大へ議論本格化=厚生年金、企業要件緩和で一致と題した、次のような記事が掲載されておりました。

『厚生労働省は27日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会を開き、年末に向けた年金制度改正の詰めの議論を始めた。

厚労省は改正の柱として、会社員らが加入する厚生年金のパート労働者への適用拡大、受給開始を個人の意思で70歳超に繰り下げられる柔軟化、一定以上の収入がある高齢者の年金を減額・停止する在職老齢年金制度の見直しを提示。部会も具体化への作業を本格化させる方針を確認した。

厚労省の有識者会議は20日、厚生年金の加入要件のうち、勤務先企業の従業員数を「501人以上」から引き下げるべきだとの報告書をまとめている。

27日の年金部会では、この要件を緩和することで一致。多くの委員が「企業規模要件は撤廃すべきだ」と要請した。

現在は70歳まで繰り下げられる受給開始時期の柔軟化については、先月公表した年金財政検証で、75歳まで働いて年金を受け取れるようにする制度改正の効果を試算。モデル世帯では、現役世代の手取り収入並みの年金額が確保できるとの結果になった』

以上のようになりますが、この記事を読むと厚生労働省は、次のような3つの法改正を実施したいとわかります。

(1)社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用拡大
平成28年(2016年)10月からは、次のような要件をすべて満たすと、パートやアルバイトなどの非正規労働者であっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入するようになりました。

(A)1週間あたりの勤務時間が20時間以上
(B)月額賃金が8万8,000円以上(年収では約106万円以上)
(C)勤務期間の見込みが1年以上
(D)学生ではない
(E)従業員数が501人以上の企業に勤務

またこの中の(E)の要件が少し改正されたため、労使(労働者と使用者)の合意がある場合には、従業員数が500人以下の企業も、平成29年(2017年)4月から、社会保険に加入するようになりました。

ただ改正の後に労使が合意して、新たに非正規労働者を社会保険に加入させていた企業は、労働政策研究・研修機構の調べによると、5%程度しかなかったのです。

そこで厚生労働省は501人以上という要件を、段階的に引き下げていき、最終的には廃止したい意向のようです。

なお厚生労働省の試算によると、従業員数を50人以上とした場合には、新たに60万人程度が社会保険の対象になり、また企業規模要件を廃止した場合には、新たに125万人程度が社会保険の対象になるようです。

(2)繰下げ受給の拡大
原則65歳から支給される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の支給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の仕組みにより、0.7%の割合で年金額が増えていきます。

この繰下げ受給の上限は70歳ですが、厚生労働省は75歳程度まで拡大したい意向のようです。

もっとも厚生労働省の調査によると、平成28年(2016年)度末における繰下げ受給の利用者は、1.4%しかいなかったので、上限の拡大より制度の周知の方が先だと思います。

(3)在職老齢年金制度の見直し
例えば65歳以降も、厚生年金保険に加入して働いている場合、老齢厚生年金の月額と月給の合計額が47万円を超えると、「在職老齢年金」の仕組みにより、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止になります。

厚生労働省はこの在職老齢年金を、廃止する予定だったのですが、最新の情報によると、47万円を62万円まで引き上げするようです。

そうなると在職老齢年金は廃止されなくても、ほとんどの方には関係がなくなると思います。

以上のようになりますが、この3つの中で実現の可能性がもっとも高いのは、(1)だと考えております。

ところでフィデリティ退職・投資教育研究所は、20代〜50代の会社員(役員を含む)と公務員の1万人に対して、「退職後の生活用として準備できている資金は」という質問を行いました。

つまり現役世代を対象にして、老後資金をどのくらい準備しているのかを調査したのです。

初めての平成22年(2010年)の調査では、0円と回答した方が44.3%もいるという、驚きの結果になりました。

フィデリティ退職・投資教育研究所は同じ内容の調査を、継続的に実施しているのですが、その調査結果は「退職準備が進捗しないなか、若年層の投資に変化の兆し 非課税制度拡充の効果」によると、次のようになっております。

平成25年(2013年):40.3%
平成26年(2014年):40.8%
平成27年(2015年):40.8%
平成28年(2016年):39.7%
平成30年(2018年):40.1%

これを見るとわかるように、老後資金の準備額は0円と回答した方の割合は、初めての調査からほとんど変化がありません。

おそらく老後の生活に不安を感じながらも、老後資金を準備するための行動を起こせない方が、かなり多いと推測されるのです。

またこの調査は会社員(役員を含む)と公務員を、調査対象にしているので、非正規労働者も含めて調査したら、0円の割合は更に増えると推測されます。

ですから厚生年金保険の適用を拡大して、老後の収入が増えるようにする事を、拒否するのではなく、むしろ歓迎した方が良いと思います。
posted by FPきむ at 20:52 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月01日

若者は65歳で引退したいようだが、政府は68歳まで働けと言っている

令和元年(2019年)9月26日のニッポンドットコムを読んでいたら、若者の引退希望年齢は65歳 : 働く高齢者862万人の現実と題した記事が掲載されておりましたが、一部を紹介すると次のようになります。

『日本財団が17〜19歳の男女1000人を対象に実施した意識調査で、「あなたは何歳まで働きたいですか」との問いに対して、「65歳未満」「65歳」の合計が42.8%だった』

『総務省によると、2019年9月15日時点で65歳以上の推計人口は3588万人で、総人口に占める割合が28.4%と過去最高の水準となった。少子高齢化が進む中で、「労働力不足」や「支え手不足」が深刻な課題となりつつある。

実際に、65歳以上の就業者数(アルバイト、パートなどの非正規雇用も含む)は2018年時点で862万人となり過去最高を更新。就業者総数に占める高齢者の割合も12.9%と過去最高を更新した。

人口のボリュームゾーンである団塊の世代が65歳に達した2012年以降、高齢就業者数の増加のペースが上がっている。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2022年以降は医療や介護にかかる社会保障費が一段と膨張するとみられ、支え手を増やすための退職年齢の引き上げや、高齢者の医療費自己負担の引き上げも今後、検討されることになる。

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(2017年推計)によれば、2065年の高齢化率は38.4%。高齢化はさらに進み、今以上に、支え手不足が深刻になっていそうだ。

2019年の18歳は、その年に64歳になる。残念ながら、「65歳で引退!年金でのんびり過ごす」というバラ色の老後は待っていない可能性が高そう』

以上のようになりますが、あまり働いた経験がない、17歳〜19歳くらいの若者に、何歳まで働きたいかと質問するのは、少し無茶なような気がします。

また65歳で引退するのは無理と記載しておりますが、年齢を重ねるごとに視力、握力、バランス保持能力などが衰え、労働災害(業務上の病気やケガ)が増えてくるため、職種によっては65歳くらいで、引退した方が良い場合があると思います。

実際のところ厚生労働省の調査によると、平成30年(2018年)に労働災害に遭った60歳以上の方は、前年より10.7%も増え、労働災害全体の4分の1に達したそうです。

また役員を除く雇用者1,000人あたりの労働災害の件数は、20代が1.6件なのに対して、60歳以上は3.8件だったため、2倍以上の差があるのです。

これに加えて平成25年(2013年)における、日本人の健康寿命(健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間)は、男性は71.19歳、女性は74.21歳というデータもあります。

つまり男性は70歳を過ぎると、働くのが難しくなるどころか、普通に生活するのも難しくなってくるのです。

こういったデータから考えると、65歳〜70歳くらいが、引退の適齢期ではないかと思うのです。

そういえば令和元年(2019年)8月27日に、5年ごとに実施されている公的年金の財政検証の結果が、厚生労働省から発表されました。

従来の財政検証とあまり違いはなかったのですが、今までの財政検証になかった目新しい点もあったのです。

それは現在20歳の方が、60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と、同水準の年金を受給するには、経済の成長率が横ばいの場合、68歳9ヶ月まで働く必要があると示された点です。

なお現在30歳の方は68歳4ヶ月で、現在40歳の方は67歳2ヶ月になるそうです。

なぜこの年齢まで働く必要があるのかというと、60歳以降も厚生年金保険に加入して保険料を納付すれば、その分だけ年金が増額します。

また原則65歳から受給できる老齢年金の受給開始を、1ヶ月繰下げる(遅くする)と、「繰下げ受給」の制度によって、0.7%の割合で年金が増額します。

これらによる年金の増額により、現在20歳の方は68歳9ヶ月まで働くと、60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と、同水準の年金を受給できるという訳です。

このような試算結果を見ていると、政府は財政検証を通じて、「最低でも68歳まで働け」というメッセージを、若者に伝えているような気がするのです。

もちろんこのメッセージを拒否して、早期に引退する事もできますが、生活はかなり苦しくなると思います。

ですから68歳になる前に引退したいという若者は、早いうちからiDeCo(個人型の確定拠出年金)などを活用して、しっかりと老後資金を準備する必要があるのです。
posted by FPきむ at 20:59 | 年金について思うこと、考えること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする