令和6年(2024年)2月6日のNHK NEWSWEBを読んでいたら、去年の実質賃金 前年比2.5%減 給与増も物価上昇に追いつかずと題した記事が掲載されていましたが、一部を紹介すると次のようになります。
『去年1年間の働く人1人当たりの実質賃金は前の年と比べて2.5%減少しました。現金給与の総額は増えたものの物価上昇に追いつかず、実質賃金は2年連続でマイナスとなりました。
厚生労働省は従業員5人以上の事業所3万あまりを対象に「毎月勤労統計調査」を行っていて、6日、去年1年分の速報値を公表しました。
それによりますと、基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた働く人1人当たりの現金給与の総額は月の平均で32万9859円となり、前の年に比べて1.2%増え、3年連続でプラスになりました。
内訳では、フルタイムが43万6849円、パートタイムが10万4570円で、いずれも統計を取り始めた平成5年以降最も高くなりました。
しかし、物価の上昇率が3.8%と42年ぶりの高い水準となり、物価変動を反映した実質賃金は前の年に比べ2.5%減少しました。実質賃金が前の年を下回るのは2年連続です。
去年12月分の速報値も公表され、現金給与の総額は前の年の同じ月と比べて1%増え、過去最長となる24か月連続のプラスになりました。しかし、実質賃金は1.9%減少し、21か月連続のマイナスとなっています。
厚生労働省は「去年の春闘で30年ぶりの賃上げ率になったことや人手不足の影響で給与総額が引き上げられたとみられるが物価の上昇に追いついていない状態が続いている。ことしの春闘でベアの水準がどれほど引き上げられるか注目したい」としています』
以上のようになりますが、日本経済はバブル崩壊後の数十年に渡って、デフレ(物価が継続的に下降する現象)が続いてきました。
しかし直近の2〜3年は状況が大きく変わり、インフレ(物価が継続的に上昇する現象)が問題になっています。
この背景にあるのは紛争などによる資源価格の上昇と、「1米ドル=150円」にまで達した歴史的な円安だと思います。
なぜ円安が進むとインフレになるのかというと、円安だと従来よりも高い値段で商品の原材料を輸入するため、その上昇分を商品の価格に転嫁するからです。
最近は資源価格の上昇が、かなり落ち着いてきたのですが、円安は相変わらず猛威を振るっています。
この理由はいくつかあると思いますが、今年1月から始まった新NISAが、大きな影響を与えていると思います。
なぜ新NISAで円安になるのかというと、例えば新NISA口座を通じて人気のある米国株を購入する際は、円を売って米ドルを買い、その米ドルで米国株を購入する場合が多いのです。
また円を売って米ドルを買う方が増えると、円安米ドル高が進むため、新NISAは円安要因になるのです。
いずれにしろ円安などに起因したインフレは、なかなか収まる気配がないため、実質賃金の低下は今後も続いていくと思います。
ところで老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)を初めとする公的年金は、新年度が始まる4月になると、賃金や物価の変動率に合わせて、定期的に金額を改定しているのです。
厚生労働省の発表によると令和6年(2024年)度は、前年度よりも2.7%の増額になります。
ただ本来なら賃金の上昇に合わせて、3.1%増額するはずだったので、本来よりも0.4%少ないのです。
年金は賃金と違って、実質と名目の統計は発表されていませんが、もし実質年金という統計があったのなら、0.4%のマイナスになります。
このように0.4%のマイナスになったのは、毎年少しずつ年金額を減らして、年金財政を安定化させるためです。
また令和5年(2023年)度は0.6%のマイナスだったので、2年連続で実質年金は減っています。
毎年少しずつ年金額を減らして、年金財政を安定化させるマクロ経済スライドは、平成16年(2004年)の年金改正の際に導入されましたが、年金額はほとんど減らなかったのです。
その理由としてデフレの際には、マクロ経済スライドを発動しないルールになっており、かつ日本経済は長らくデフレが続いたからです。
しかし近年の日本経済はデフレから脱したため、年金財政が安定化するまでの数十年に渡って、マクロ経済スライドによって年金額が減っていく可能性があります。
そのため当面は実質賃金の統計に加えて、実質年金の統計もとった方が良いのですが、年金の実質的な価値が減っているのを国民に知られたくないので、厚生労働省はやらないと思います。
2024年03月01日
2024年02月02日
約50年逃亡していた桐島聡容疑者の生活は、日本人の老後の近未来の姿
ここ最近に印象に残っているのは、交番などで指名手配の写真をよく見かけた桐島聡容疑者だと名乗る男が、亡くなったというニュースです。
亡くなるまでの約50年の間、どのような生活を送っていたのかが気になるところですが、その一端がわかる記事が令和6年(2024年)1月29日の東京新聞に掲載されていました。
記事のタイトルは「桐島聡」名乗る男が死亡…真相明かすことなく 約40年暮らした藤沢市のバーで「うーやん」と親しまれていたになりますが、一部を紹介すると次のようになります。
『1974〜75年に起きた連続企業爆破事件で、爆発物取締罰則違反容疑で指名手配されている桐島聡容疑者(70)を名乗る男が29日、入院先の神奈川県鎌倉市の病院で死亡した。捜査関係者への取材で分かった。末期の胃がんで、重篤な状態だった。
警視庁公安部はDNA型鑑定で男の身元確認を急いでいる。男が本人と確認されれば容疑者死亡のまま書類送検する方針で、50年近い逃亡生活の全容解明は難しくなる。
捜査関係者によると、男は「内田洋(うちだひろし)」と名乗り、80年代から神奈川県藤沢市の工務店で住み込みで働いていた。
金融機関の口座を持っておらず、給料は現金で受け取っていた。事件後の海外への渡航歴は確認されていないという。
1年ほど前から胃がんを患い、今月入院。免許証や健康保険証は持っておらず、自費で診療を受けていた。
入院当初は内田を名乗っていたが、25日に突然、「私は桐島聡だ」「最期は本名で迎えたい」と病院関係者に伝えた。
公安部が25日から任意で事情を聴いたところ、桐島容疑者しか知り得ない話をしていたという』
以上のようになりますが、「事件後の海外への渡航歴は確認されていない」と記載されているため、約50年に渡って日本にいた事になります。
また冒頭で紹介した東京新聞の記事や、他の新聞の記事に記載された情報を整理してみると、桐島聡容疑者は次のような生活を送っていたようです。
・1980年代あたりから、神奈川県藤沢市にある工務店で働いていた
・自分ではアパートなどを借りられなかったので、勤務先に住み込みだった
・65歳になっても年金を受給できなかったので、死亡する直前の70歳まで働いていた
・健康保険や国民健康保険には加入していなかったので、保険証は持っていなかった
・歯科医院で診療を受けるのは金銭的に難しいので、歯がなくなってしまった
・がん治療を受けるのは更に難しいので、末期状態になるまで放置していた
歌手や役者して活躍し、現在は日本維新の会に所属する参議院議員を務めている、中条きよしさんの国民年金の未納問題が、令和5年(2023年)1月頃に話題になりました。
国民年金の保険料には納期限(納付対象月の翌月末日)から2年という時効があり、これを過ぎると本人が納付したいと思っても、納付できなくなってしまうのです。
また国民年金に加入するのは今のところ、20歳から60歳になるまでの40年間になります。
未納問題が話題になった当時の中条きよしさんは76歳であり、国民年金に加入する年齢の上限である60歳から16年が経過していたため、すべての保険料が時効を迎えていたと推測されます。
こういった事情があるため、未納問題は何も解決せずに、うやむやのまま終わってしまったのです。
ただ昔は徴収が厳しくなかったので、中条きよしさんと同じように国民年金の保険料を未納にしていた方は、けっこう存在していたと思います。
そうすると65歳になっても、国民年金から支給される老齢基礎年金を受給できない場合が多いため、桐島聡容疑者と同じように70歳になっても、働き続ける必要があるのです。
厚生年金保険に加入している方は老齢基礎年金に上乗せして、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を受給できます。
こういった方であれば、年金と貯蓄の取り崩しで生活できると思いますが、将来的にはわからないのです。
その理由としては平成16年(2004年)に、マクロ経済スライドという制度が創設されてからは、年金制度を維持するために毎年少しずつ、年金額を減らすようになったからです。
例えば令和5年(2023年)度はマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減りました。
また令和6年(2024年)度もマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減る見込みです。
これによって70歳になっても働かないと生活できない方が、将来的には増えていく可能性があります。
また年金額が減ったため、生活費に余裕がなくなり、国民健康保険の保険料の納付を長期に渡って滞納すると保険証が没収され、短期被保険者証や資格証明書が発行されます。
後者の資格証明書を病院などの窓口に提示した場合、いったんは医療費の全額を負担し、後日に還付を受けるという形になります。
そのため還付を受けるまでの間は、自費で診療を受けていた桐島聡容疑者と変わりがないのです。
こういった点から考えると桐島聡容疑者の生活は、日本人の老後の近未来の姿なのかもしれません。
亡くなるまでの約50年の間、どのような生活を送っていたのかが気になるところですが、その一端がわかる記事が令和6年(2024年)1月29日の東京新聞に掲載されていました。
記事のタイトルは「桐島聡」名乗る男が死亡…真相明かすことなく 約40年暮らした藤沢市のバーで「うーやん」と親しまれていたになりますが、一部を紹介すると次のようになります。
『1974〜75年に起きた連続企業爆破事件で、爆発物取締罰則違反容疑で指名手配されている桐島聡容疑者(70)を名乗る男が29日、入院先の神奈川県鎌倉市の病院で死亡した。捜査関係者への取材で分かった。末期の胃がんで、重篤な状態だった。
警視庁公安部はDNA型鑑定で男の身元確認を急いでいる。男が本人と確認されれば容疑者死亡のまま書類送検する方針で、50年近い逃亡生活の全容解明は難しくなる。
捜査関係者によると、男は「内田洋(うちだひろし)」と名乗り、80年代から神奈川県藤沢市の工務店で住み込みで働いていた。
金融機関の口座を持っておらず、給料は現金で受け取っていた。事件後の海外への渡航歴は確認されていないという。
1年ほど前から胃がんを患い、今月入院。免許証や健康保険証は持っておらず、自費で診療を受けていた。
入院当初は内田を名乗っていたが、25日に突然、「私は桐島聡だ」「最期は本名で迎えたい」と病院関係者に伝えた。
公安部が25日から任意で事情を聴いたところ、桐島容疑者しか知り得ない話をしていたという』
以上のようになりますが、「事件後の海外への渡航歴は確認されていない」と記載されているため、約50年に渡って日本にいた事になります。
また冒頭で紹介した東京新聞の記事や、他の新聞の記事に記載された情報を整理してみると、桐島聡容疑者は次のような生活を送っていたようです。
・1980年代あたりから、神奈川県藤沢市にある工務店で働いていた
・自分ではアパートなどを借りられなかったので、勤務先に住み込みだった
・65歳になっても年金を受給できなかったので、死亡する直前の70歳まで働いていた
・健康保険や国民健康保険には加入していなかったので、保険証は持っていなかった
・歯科医院で診療を受けるのは金銭的に難しいので、歯がなくなってしまった
・がん治療を受けるのは更に難しいので、末期状態になるまで放置していた
歌手や役者して活躍し、現在は日本維新の会に所属する参議院議員を務めている、中条きよしさんの国民年金の未納問題が、令和5年(2023年)1月頃に話題になりました。
国民年金の保険料には納期限(納付対象月の翌月末日)から2年という時効があり、これを過ぎると本人が納付したいと思っても、納付できなくなってしまうのです。
また国民年金に加入するのは今のところ、20歳から60歳になるまでの40年間になります。
未納問題が話題になった当時の中条きよしさんは76歳であり、国民年金に加入する年齢の上限である60歳から16年が経過していたため、すべての保険料が時効を迎えていたと推測されます。
こういった事情があるため、未納問題は何も解決せずに、うやむやのまま終わってしまったのです。
ただ昔は徴収が厳しくなかったので、中条きよしさんと同じように国民年金の保険料を未納にしていた方は、けっこう存在していたと思います。
そうすると65歳になっても、国民年金から支給される老齢基礎年金を受給できない場合が多いため、桐島聡容疑者と同じように70歳になっても、働き続ける必要があるのです。
厚生年金保険に加入している方は老齢基礎年金に上乗せして、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を受給できます。
こういった方であれば、年金と貯蓄の取り崩しで生活できると思いますが、将来的にはわからないのです。
その理由としては平成16年(2004年)に、マクロ経済スライドという制度が創設されてからは、年金制度を維持するために毎年少しずつ、年金額を減らすようになったからです。
例えば令和5年(2023年)度はマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減りました。
また令和6年(2024年)度もマクロ経済スライドによって、前年度より0.4%年金額が減る見込みです。
これによって70歳になっても働かないと生活できない方が、将来的には増えていく可能性があります。
また年金額が減ったため、生活費に余裕がなくなり、国民健康保険の保険料の納付を長期に渡って滞納すると保険証が没収され、短期被保険者証や資格証明書が発行されます。
後者の資格証明書を病院などの窓口に提示した場合、いったんは医療費の全額を負担し、後日に還付を受けるという形になります。
そのため還付を受けるまでの間は、自費で診療を受けていた桐島聡容疑者と変わりがないのです。
こういった点から考えると桐島聡容疑者の生活は、日本人の老後の近未来の姿なのかもしれません。